25.お屋敷へ
8月も終わりになる頃、急にお父さんとお母さんがとんでもないことを言いました。
9月にテレスの家に行き、そこでパーティーが開かれることを。ただし参加するのはうちだけ。名目は私のお礼だそうです。
「うちはアリスのドレスも買ってもらったし必要ないって言ったんだけどね」
「領主様がどうしてもって言って聞かなくてな」
「「だから9月にあっちに行くわよ(ぞ)」」
ということです。
そして9月。
今日はテレスの家に行く日です。泊りがけは絶対に無理だと断ったので昼から開かれることになり、私たちは朝から出かけることになりました。
おめかしした姿で村の中を歩くのはとても恥ずかしかったのですが、かといって村の外に着替える場所もないのでドレス姿でトリアート家の馬車が待つ村の入口まで歩きます。
「誰にも会いませんように」と願いますがそれも虚しく見慣れた男の子を見つけてしまします。
クロです。
彼の家は小麦農家兼雑貨屋さんです。今は小麦の収穫時期なので恐らく忙しい両親に代わってクロが店番をしているのでしょう。
最初は見つかりたくないの一心で歩いていましたが、唐突に私のいたずら心に火が着いてしまいました。
お父さんとお母さんにちょっと抜けることを伝えクロのお店に向かいます。
「お兄さん、ちょっとよろしくて?」
「あっ、はい。いらっしゃい…ま………。アリス?」
なんと一瞬でバレてしまいました
「んふふ、バレちゃった。そうだよ」
「よかったー。アリスだとは思ったけど違ったらどうしようと思ったよ。で、どうしたの?」
「今からテレスの家に行くんだけどクロを見つけたらちょっといたずらがしたくなっちゃって」
「あーー。この前言ってたパーティー?」
「んーそんな大げさなものじゃないと思うんだけど……そんなものなのかなぁ?」
「テレスもパーティーって言ってたからパーティーじゃないの?でもいいねー。そのドレス、似合ってるよ」
「ほんと!ありがとう!」
そして少し話してから私たちは別れました。
何度も通って見慣れてしまったテレスの家への道を進みます。
最初はあんなに緊張したのに、普通だったらこんな何回も行く場所じゃないのに、慣れって怖いな、なんてことを思っているとテレスの家に着きました。
門をくぐるとそこにはトリアート家の家族とそこで働いている方々がいました。
「「「「ラーナ様、そしてラーナ様のご家族の皆様。ようこそお越しくださいました。トリアート家一同御礼申し上げます」」」」
そう、全員で唱和しました。
私は驚きながらお父さんとお母さんを見てみると、お父さんは苦笑い、お母さんは呆れていました。
こんな対応されたらそうなっちゃうよねー、なんて思いながらお屋敷の中に入っていきます。
泊まらない予定でしたがむこうが気を使ってくれたのか、私たち4人を広めの部屋に案内してくれました。そこで休憩するなり着替えるなり話すなりして良いそうです。
お食事会までまだ時間があるとのことだったのでおしゃべりすることにしました。
「すごいなーここ。ってか最初の出迎え、なんだ!?」
「さぁねー。ただあの子のことだから張り切ってるんだろうねー。もう私は知らなーい」
「私も初めてあんな迎えられ方したよ」
「まぁそうだろうな…。どうだ、ニア。きれいな所だろう?」
「うん!すっごいきれい。ほんのなかのおしろみたい」
「はははは。たしかにそうだな」
そんなふうに話していると部屋のドアがノックされました。
お母さんがどうぞー、と言うとテレスが入ってきました。
「ラーナ様、テロナード様、トリニア様、そしてアリスティア様。本日はようこそお越しくださいました。お食事の準備ができましたので、1階の食堂までお越しください」
いつもと違うテレス!
ただでさえお父さんとお母さんがいることで緊張してるのにテレスがぁぁぁ……。
パーティー?お食事会?が間もなく始まろうとしていました。
最近PVの伸びがすごいです!
読んでくださる読者の皆様に感謝をしつつ……もうしばらく不定期更新を続けさせていただきます