16.ダンスパーティー
間に合ったぁ!!(現在24日午前6時)
広いホール。豪華なシャンデリア。美しく盛り付けられたお料理。
目を覚ますと私はパーティーの会場に着いていました。
道中、私は緊張のあまり寝ていたらしく気づいたら着いていたのです。
うっかり寝てしまっていた自分を叱りながら言い聞かせます。
この国は「身分よりも実力」主義だから、私の態度に問題がなければ何も起きません。
もし何かがあったら私自身だけでなく、テレスにも、トリアート家にも迷惑をかけてしまいます。
だからしっかりやりきるんだ私!
自分で自分を鼓舞し、必死で緊張を抑え、習ったことを実行します。
背筋は伸ばし、大きくなく小さくもない歩幅を維持し、テレスの腕を優しく掴んで...。
と、こんな感じで表面上を取り繕っているとパーティー会場に着いていたのです。
そして今、普通なら一生訪れることがないはずだった豪華なホールを前にして圧倒されていました。
内装は言うまでもありませんがそこにいる人もまた、ホールに負けないくらいキラキラと輝いていました。
そんなこんなでアワアワしているとテレスが声を掛けてくれました。
「緊張してしまうのはわかるがせっかくのパーティーだ。無理にとは言わないが是非楽しんでいってくれ。まぁ僕が呼んでおいてなんなんだが...。ま、まぁ貴族との会話は僕が主にするから気楽に行こうぜ!セニカ」
周りの人に聞こえないように静かに声を掛けてくれましたが、いつものテレスのキャラと違いすぎて、そっちに意識が行ってしまいました。
でもそのおかげでいくらか緊張はほぐれたので心の中でテレスに感謝しておきます。
と、ここで1人の女性がこちらに向かってきました。
テレス曰く、今日は同年代のみのパーティーなので、あっても3歳差程度なのですが、『女の子』よりも『女性』と呼ぶ方が似合うような見た目でした。
「ようこそお越しくださいました、テレスアート様。本日はどうぞごゆっくりとなさってくださいね」
「どうもご丁寧にありがとうございます、ソフィア様。だけどお一つよろしいでしょうか」
「よろしくてよ。どうしたの?」
「以前にもお伝えしましたが、私とソフィア様では地位が貴女の方が上です。なのでできれば敬語はやめて頂きたく...」
「あら、それじゃあ貴方こそ。同年代なんだから敬語はやめて欲しいわ」
「善処致します」
「全く相変わらず堅苦しいこと。それで?そのお嬢様は?」
「あ、はい。こちらは...」
「初めましてソフィア・テリーヌ・ヒリアットこうじょ———」
とソフィア皇女様に挨拶しようとするとテレスが抑えてきました。
「@#$€@¥&×○☆#!」
口を塞がれていることに対して必死に講義します。
「ちょっと!このお方は皇族だけどまだ皇女ではないから」
「...ぷふぁ。...え、そうなの?」
「ええ、そうね。肩書きは第7皇女ではあるんだけど継承権があるわけでもないから基本は皇女として名乗ってないのよ」
「え、あ、そうなん———じゃなくてそうなのですね」
「うふふ。貴女もそんなに気を使わなくてもいいのよ?流石に公の場でタメ口ってのは困るけどこうやって話してる時くらいは敬語じゃなくていいのよ?」
「でもお嬢様...」
「そうですよソフィア様。いくら皇女だと名乗ってなくてもそこまでしたら...」
「ちょっとテレスアート様まで酷いわ!私はただ普通にお話しするお相手が欲しいだけなのよ!」
「それなら男である私ではなくて伯爵令嬢とか他にも私より相応しい人がいますよ」
「これでも一応皇族なのよ?下心たっぷりで近づいてくる人ばっかりなのよ」
「それでは私やセニカは違うと?」
「ええ。私に取り入ろうとする人はもっと攻めてきますの。貴方がたにはそんな雰囲気かがんじられなかったので...」
「お嬢様。この方たちと仲良くされるのはよろしいのですが公の場で『お友達宣言』をされますと...」
「あら、本当ね。ありがとうニーファ」
「それと同じ方とずっと話されますと他の方々が...」
「それもそうね。じゃあトリスアート様と...」
「あ、えっとセニカです」
「セニカ様。また後ほどお話しましょう」
「「かしこまりました」」
「うふふ。声がお揃いで。それでは」
こうしてソフィア様と仲良く(?)なりました。
最初に話す方がとても気さくな方でとても安心しているのですが...
「そういえば私自己紹介してない」
「確かにそうだね...。いやアリスのせいなんだけど...」
「あー。私が皇女様って言っちゃったからか。ってかテレス!今は『アリス』じゃなくて『セニカ』よ」
「それじゃあセニカ嬢、私も『テレスアート』ですよ」
「〜〜〜〜〜〜〜〜」
なんかうまくパーティーを乗り切れる自身がついたのは気のせいでしょうか。
なんか気づいたら会話ばっかになってた...
気づいている人もいるかも知れませんがアリスは今『セニカ』という偽名でパーティーに参加しています。
実はアリスからの提案なんだとか...