14.お手紙
パソコンで読むかスマホで読むかで『手紙』の部分に変な空白が生まれるかもしれませんが、あえて空白を作ったことによる弊害なので、ご了承ください。
日を少し遡ること10日ほど、1通のお手紙が届きました。
雪も落ち着き、陽も暖かくなってきた4月のことでした。
ママが「アリスに手紙よ」と言って1通のお手紙を渡してきました。
私にお手紙を出す人って誰だろうと思いながら受け取るとそこには確かに私の名前が書いてありました。
手紙の内容はこうです。
『拝啓 アリスティア・ロナード様
チェーリの花が咲き始めるこの季節、いかがお過ごしでしょうか。
さて、本日は急ではございますが、一つお願いをするためにお手紙を書かせていただきました。
昨年、私は5歳になり社交界のデビューを果たしました。
そして年の変わった今、いくつかのパーティーの招待を受けております。
そこで、アリスティア様にパーティーに着いて来ていただきたく思っております。
そのパーティーでは、礼儀作法はもちろんダンスの技術なども必要になってきます。
なので大変なことだとは思いますが引き受けていただけると幸いです。
急なことではございますが、どうかご検討いただけますようよろしくお願いします。
テレスアート・ウォン・トリアート』
テレスアート―――テレスからのお手紙でした。
とても畏まった文章で普段の姿とのギャップで風邪を引きそうになりながら手紙を読み終えると私はとんでもないことに気が付きました。
そう!私が!ダンスパーティーに!誘われて!いるのです。
お貴族様が広くてキラキラしたホールできゃっきゃ踊るダンスパーティーです。
「急にこんなものを」っていう困惑よりも「ダンスパーティーに...」というある種の恐ろしさを感じていました。
そして今。テレスに了承の意を伝える手紙を出した後、その返事が返ってきたのです。
その手紙を要約すると「明日迎えに行くから、村の広場に集合ね」というものでした。
「急にも程があるでしょ!」と思っていながらも、私はテレスが急ぐ理由を知っているのです。
今は4月。そう、(新年のパーティーは除きますが)今年の社交シーズンが始まるのです。
4月は基本的に大人だけのパーティーが開かれますが、5月になると子ども同士のお見合いの意味も含めた社交パーティーが開かれるようになるのです。
パーティーに出ることを了解した今、準備できる時間は後1ヶ月しかないのです。
その1ヶ月の間に私はダンスの技術はもちろん喋り方やテーブルマナー、振る舞い方など覚えないいといけないものがたくさんあるのです。
手紙を受け取ってパパとママと話してパーティーに行くことを決めた後、少しだけマナーを知っているというママに教えてもらっていましたがお貴族様のマナーはまだまだあるらしく...。
忙しい1ヶ月になりそうです。
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「ラーナ。あの手紙どう思うか?」
「アリスの手紙でしょ?んー...流石にお父様とお母様の罠ではないと思うんだけど...」
「いつも遊ぶ仲間から選んだとしたのなら、もう1人女の子がいたはずなんだ。だから、あえてアリスを選んだのか、たまたまなのか...」
「アリスに聞いたんだけど、この前そんな話をした気がするって言ってたのよ。だからそれでえらばれたんじゃないかな」
「なるほどな...。今家がどうこう言っても仕方がないと思うから、もしアリスが取り込まれそうになったら全力で守ろう!」
「そうね...。あの人の息子だから悪い人ではないはずよ。だからアリスの意思でそっちに行くことを決めたのなら一度本当のことを話してみてもいいのかもしれないわね」
「そうだな...。まぁいい機会になると思って前向きに捉えてみますかな」
「そうね。あの人達に下心があるのなら私にも接触してきそうだものね」
「あぁ。そういうことだ」
アリスがテレスから手紙を受け取った日の夜、村の家のうちの1軒だけ夜遅くまで明かりがついていたという...。
のほほんばっかじゃ面白くないかなと思ってイベント追加!