13.冬のお仕事
ヒュウゥゥゥーーーーウ
ニムレット村に冬がやってきました。
ニムレット村の冬は風は強く、雪は積もり、気温も低いです。
こんな環境で育つ作物も限られているので冬の間は家の中で工芸品や道具を作ったりしています。
うちではカゴ作りを…パパとママに任せて私はトリニアの子守りです。
トリニアはもう3歳なので子守りっていう歳ではないですが、歩き出すとすぐにどこかに行ってしまうのでお姉さんである私がいてあげないとダメなのです。
というわけで今日は一緒に言葉を覚えていました。
私もあと5年したら学校に行かないといけないので文字の練習をするのです。
「これはねアオヤムって言うんだよ。...ア...オ...ヤ...ム...」
「あおあうー!あおあむ!」
「あらアリス、それじゃアオアムに見えるわよ?」
いつのまに来ていたのか、ママが後ろから覗いていました。
「ちょっとママ!びっくりさせないでよ」
「ごめんねー。でも間違ってたでしょ?」
「あおあむ!」
トリニアがアオヤムの絵を指差しながら言います。
「むー。そうだけどさ...。『ヤ』って描きにくいのよね」
「それならいっぱい練習しなくちゃ!」
「あおやむ!」
「「!!!」」
なんと!トリニアが『アオヤム』と!
2人の驚きに気づいて面白くなったのかトリニアが連呼します。
「あおやむーあおあむ!あおあむ!あおーやむ!」
まだ難しいようですがかなりの上達です。
「ほらほらーアリスも負けてられないよー」
というママの鼓舞付きで必死に練習しました。
ザクッザッザッザクッ
今日はパパと森にいます。薪とお肉を手に入れるためにです。
薪は暖房に必要なのです。何回も外には出たくないので2本の木を伐採することにしました。
伐採した木を一旦放置しておいて動物を探します。
雪の降る冬になると商人さんもあまり来てくれなくなるので生肉が手に入りづらくなります。
干し肉にはない栄養が生肉にはあるらしく、生肉(ちゃんと火は通すよ)も食べないといけないのです。
っと。パパが急に止まったのでぶつかりそうになりながらパパを見ます。
するとパパは口に人差し指を当てていました。「静かに」っていう合図です。
私はこくりと頷くことで返事をします。
「あそこに鹿がいるんだ。俺が矢を撃つから静かに見ててな」
もう一度こくりと頷きます。
キリキリと弓の弦を引っ張ってパシュッと矢を放ちました。
その矢は見事に鹿に当たりましたが、当たりどころが良かったのか悪かったのか、まだ動いていました。
パパは手で私を止めると鹿の方に向かいました。
しばらくしてパパが鹿を片手に帰ってきました。
「見てみろ!綺麗な鹿だろ?」
「すごーい!真っ白だね!」
「...?あ、あぁそうだな」
パパが持ってきた鹿は真っ白でした。一瞬不思議そうにしたパパに?を浮かべながら家に戻ります。
帰り道に伐採した木を持ち帰らなければなりませんでしたが、私の魔法で創ったソリに乗せて帰ったので楽々でした。
後日知ったことですが、真っ白だった鹿はわざとらしいです。
血抜きをしてグロテスクな姿になった鹿をを私が見ないように雪をくっつけたらしいのですが、戻ることにはそれを忘れていて、平然と鹿の死体を見る私に驚いていたらしいです。
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