98.夏休み
4月に始まったばかりの学園生活も気づけば4ヶ月経っていました。
冬は寒い代わりに夏はかなり暑くなる帝国では、8月の1ヶ月間だけ長期休暇が設けられています。
これは学園生だけでなく宮廷に勤めている人たちも同じです。
ただ、行政を全く動かさないわけにもいかないので交代で休むという形になっているそうですが。
7月の最終日、各教科の先生からたっぷりと宿題をもらいました。
ある教科では描かれた魔法を使えるようになること。
別の教科では魔法についての論文を課せられたり。
この大量の宿題は他の科でも同じらしく、ディルたちも驚き嘆いていました。
そんな夏休み初日、私たちは久しぶりにトリアート領に帰ってきていました。
私たちのように長期休暇を利用して帰省する人も少なくないそうです。
宿題や訓練もあるので4日から5日ほど滞在して、オースティン領に戻ろうと、話し合って決めました。
ニムレット村の入り口まで馬車で送ってもらい、そこでテレスとは別れます。
「テレスはいつ来るんだ?」
「え、5日後じゃないの?」
「俺のかぁちゃんがお礼したいってんだよ。ロクなものできないがって言ってんだけど」
「あ、僕のお母さんも」
「私のママも!」
「多分私のお母さんもかな」
「えー、そんないらないのに....」
「ただいまー!」と玄関を大きな声で言いますが返事はありません。
なんか昔に同じ状況に遭ったような....!
あれはたしか5歳の誕生日の時だ!
しかし今回は家に誰もいないわけではなく、ただ畑に居ただけでした。
もう一度畑に向かって「ただいま」を言います。
「あらアリス。おかえりー」
「お姉ちゃんおかえりー」
「アリス、よく帰ってきたな」
家族の温かいお出迎えをもらい、みんなで家の中に戻りました。
「今年は畑はどうなの?」
「今年は雨が少なくてダメだな。水分が足りてない」
「でも日の当たり具合はちょうどいいんじゃない?」
「そうだな。だからこの水分量でうまく実ができるかどうかだな」
「でも甘かったよ?」
「そうだな、ニア。アリスも今年のトマトは期待していいぞー!」
「ほんと!甘いの?」
「あぁ。夏野菜にとっちゃこの雨の量はちょうどよかったらしくてな」
「雨は少なかったけどちゃんとみずみずしいのよ」
「へぇー!楽しみだなぁ」
そしてお昼ご飯を食べながら学園での話をしました。
「そんな周りがお貴族様だらけなんて。大丈夫なの?」
「うん。横暴な人も裏でコソコソするような人もいないしね」
「そうか。いい学校なんだな」
「そうだよ!なんか秋には武闘大会ってのもあるらしくてね」
「武闘?アリスは魔法科だろ?」
「魔法科も参加するの。騎士科の人と組んで戦うんだって」
「危険そうねぇ。怪我とかしないようにね」
「うん。それでね、その大会はお母さんたちも観に来れるらしいの」
「そうか。じゃあ余裕があったら行くか」
「そうね。数日家を空けるわけだから。今決めれはしないわ」
「わかったー。じゃあまた近くなったら手紙を送るよ」
気づけば日は傾き、外はもう暗くなっていました。
私たちは何時間話していたのやら....。




