97.剣聖vs賢者
総当たりでやってきた訓練。
その最終戦が今、幕を開けようとしています。
戦うのはガンビアとアリス———そう、私です。
ガンビアは幼い頃から剣の才能に恵まれており、オースティン家の遠縁、かつ三男という立場でもその力をもってオースティル学園の貴族科に入学するに至りました。
その剣捌き、太刀筋、一撃の重さは帝宮騎士団の面々に劣らず、むしろガンビアの方が上回っていました。
次第にその名は広がり、いつからか“剣聖”と呼ばれるようになりました。
対する私は言わずもがな。
5歳の時の魔法鑑定で年齢不相応の魔力量、魔法熟練度、極めつけには全属性。
昔に存在していたと言われている“賢者”セニカと同じ特徴を持っていました。
おかげで誘拐されて海を漂ったのですが....。
そんな“剣聖”と“賢者”の戦い、ガンビアの叫び声によって戦いの火蓋が切り落とされました。
「ぅおらぁぁぁぁぁっぁぁぁ!!!!!」
お腹の底から出る、空気を震わせるような大声と共に、先手必勝と言わんばかりの大剣による突進が繰り出されます。
「【氷の大剣を創り出す魔法】っ!!」
急いで創り出した氷の大剣で攻撃を受け止めますが、ガンビアの勢いを受け止めきれた!と思ったら剣が粉々に砕けでしまいました。
「えっ!?砕けた!?」
「かったいなぁー!さすがは賢者といったところか」
「いやいや、それを砕いちゃってるんだけど....」
「さぁさぁ!まだまだいくぞー!」
次にガンビアが繰り出したのは頭上からの振り下ろし。
当たれば私の頭はひとたまりもないでしょう。
「【気流を操る魔法】!からの【雷の槍を撃つ魔法】っ!!」
狙うは心臓のあたり。
どんなに頑丈で強い敵でも心臓に電撃が当たれば相当なダメージになるはずっ!
「おっとー。当たっちゃいけない感じがビンビンするねぇー」
ガンビアは空中で体を捻って避けてしまいました。
「あれを避けちゃうの....!」
「はっはっは!攻撃をやめて避けることに全集中したからな。あれは1回でも当たったらよくない気がしてね」
守ってもダメ、避けるのは難しい、狙い撃ちしてもダメ。
そうなると残る手段は2つになります。
飽和攻撃か、相打ち覚悟の特攻か。
「【雷を降らせる魔法】!」
「ほっ!はっ!今度はっ、範囲攻撃でっ!きたかっ」
「【世界を凍らせる魔法】!」
「うぉぉぉぉっと!滑らせて雷に当てようってか!」
しかしガンビアは凍った地面に滑るどころか私に向かって突っ込んできました。
「僕の足腰の強さ!舐めんじゃないよっ!」
「【気流を操る魔法】」
2度目の【気流を操る魔法】。
今度は避けるためではなく、ガンビアを捕まえるために使います。
未だに訓練場内には雷が降っており、地面は凍ったまま。
さっきは自分の意思で空中にいたから避けられたんだとしても今度は避けられないはずっ!
「【雷の槍を撃つ魔法】っ!」
狙ったかのように頭上から降ってくる雷と私が撃った槍が同時に向かえばどちらかは当たるはず!
「んだよ、相打ちって。締まんねー終わり方すんなよ!」
「じゃあディルだったらどうしてたんだい?」
「俺だったら地面が凍った時点で避けに回るね」
「でも君だってアリス君の魔力の多さは知ってるだろ?いつまで避けてればいいんだって話になるんだよ」
「ま、ディルはアリスに手も足も出なかったんだけどねーっ」
「っるせぇ!そう言うサーラだって何もできてねぇじゃねぇかよ!」
「でもあそこで剣を投げてくるとは思わなかったなー」
「すまないね、アリス君よ。それしか思いつかなくて....」
「その可能性を考えなかった私も私だけどねー。ところでさっきから君付けで呼んでるけど何なの?」
「僕なりに敬意を表して呼んでるんだ。ゾクゾクするいい戦いだったよ!」
ガンビアとの試合の結果は引き分け。
ガンビアは雷に当たり、私はガンビアが投げた大剣に当たったため、相打ちということになったのです。
尤も私は【物体を護る魔法】によって護られたため、痛くも痒くもなかったのは私だけの秘密です。
「そうだ、ガンビア。剣を投げたの、バレないようにね」
「そうだな。俺らの担任が知ったらどうなることやら」
「おい!テレスにセルビア!僕を怖がらせるんじゃないよ!」
誠に勝手ながら火曜日の投稿はお休みさせていただきます。
すみませんm(._.)m




