見て見ぬふり
私はゆっくりと扉を閉める。
(趣味や恋愛などは人それぞれだ...。多様性と謳われた時代でそれを邪魔するのは、世界への冒涜とも言えよう。ここ地球でも日本でもないけど)
私は隣で唖然としている26番さんに大きな声で喋り掛けた
「もう少しここら辺散歩しませんか!?」
「あ、あぁ!それは良い!色々と紹介したい所があるんだったー!」
26番さんも察したのか、大きな声で返事をした。
私と26番さんは急いでその場から逃げようとしたが、時既に遅かった。
扉がバアァァァン!と大きな音を立てて開いた。
「に・じゅ・う・ろ・く・ば・ん?」
部屋の中から25番と一緒に、少し離れていてもわかる程の酒の匂いが漂ってきた。
(なんでこの人酒飲んでんだ...なんでここの施設は酒を置いてるんだ!?曲がりなりにも組織なんだろ!)
心の中でツッコミを入れながら26番さんの後ろに二歩、三歩と下がる。
(ここは彼に囮になって貰うしかない)
後ろを振り向いて、いざ走り出そうとしたその時だった。
26番さんが肩を掴み、ニコニコしつつも青ざめた顔で一言。
「一緒に地獄へ行こう。仲間じゃないか」
(ふざけるのも大概にSayよ!)
どこかで聞いた事のあるフレーズを心の中で叫びながら、諦めまいと私は足を動かす。
一歩、また一歩と近付いてくる25番、覚悟を決めて道連れを選んだ26番、逃げても逃げても動かない私の足、完璧な「詰み」の布陣を作られた私は覚悟を決めて前を振り返る。
それと同時に25番の頭突きが26番の腹に決まった。
「た、たすけ...」
何か言い掛けていたが、気にせず私は部屋に戻り速攻で扉を閉めた。
顔を手で隠しながら座る少女を横目に、私はベッドにダイブを決め込む。
一回バウンドをし、ベッドがポフッと音を立てる
(弾力はE~Aで言う所のB...体へのフィット感、フカフカの度合い、素晴らしい)
こちらに転生してきてから初めてのふかふかベッドに、私の身体はそのまま吸い込まれて行った。
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私はゆっくりと目を開ける
(あのまま寝てしまったのか...)
所々痛んでいる身体をゆっくりと上げ、机の上に置かれたケーブルが存在しない謎のスタンドライトを付けて時計を確認する。
時刻は意外にもまだ五時さえ超えていなかった。
地下だから当然と言えば当然だが、外から光や景色が見えない分、ライトが無いと本当に何も見えない。
(中央にもライトはあるものの...スイッチが仕切りの向こうにあるんだよなぁ...)
仕切るなら二人が利用出来る位置にスイッチを置いて欲しいものだ。
私は原動力が分からないスタンドライトを頼りに、机の中をおもむろに開けてみた。
中からは「ニンファエアの事がなんでも分かる!万能ノート」、「ニンファエア流制圧術ノート!これを見れば今日から君も組織の戦力!」という、外部に漏れたら確実に一発アウトのノートが二つも出てきた。
私は椅子に座り、万能ノートの適当なページを開いた。
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【六.作戦行動】
基本的に二人でする任務行動とは異なり、大勢での任務を行う[作戦行動]
一班に二名ずつ、第一班~第五班までの計十名が作戦行動での要員となる。
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パラパラと他もめくり、流しながら読む。
酒が置いてあったり銭湯のような設備があったり、普通に他部隊の部屋に入れたりする異常な組織ではあるものの...意外とマナーやルール等があって私は驚いた。
本には組織構成の図や組織の人数、第一等~第五等という私達を束ねる人間についても書かれていた。例えば・・・
【第一等:イリス様_誠実的で様々な面において優れた能力を持つ。契約の儀式後、目の色は白に変化する】だったり...
【第二等:アグノス様_純粋でとても可愛く、組織全員に分け隔てなく接する。契約の儀式後、目の色は白に変化する】と、これを書いた者の私情が少なからず見え隠れしている本となっている。
第一等~第五等まで存在しているらしく、それぞれが個性的な面を有しているようだ。
まだまだ分からないことが沢山ありそうだが...本を久しぶりに読んだ私はまたもや眠気に襲われてしまった。
私はそのままベッドに眠り、二度目の睡眠へと入った。




