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ご長寿エルフと若者エルフの復讐旅  作者: Re伊藤ミカン
5/8

ようこそ

ギムレットの家は私の住んでいる家と同じようなワンルーム。けど、家具があるだけでも見違える。


「素敵な部屋・・・・・」


私がそう言うと、彼は嬉しそうだ。


「そう言ってもらえて嬉しいよ。安いなりにもこだわっているからね」


そう言いながら彼は電気を付け、私をベッドの上に降ろす。そしてレコードをプレーヤーにセットする。ジャズだ。


「ジャズは好き?俺は好きでね、ここ数年はレコードばかり買っているよ。おかげで万年金欠」


「ジャズかぁ・・・・・、今まで聞いたことはなかったかなー」


彼はそうかぁ・・・と言ってグラスにウイスキーを注ぐ。まだ飲むの!?もしかして私って弱い方?


彼は飲む?と私にウイスキーを進めてくるが、それを断る。


「私、お酒は苦手。飲んでる私が好きだから飲んでるだけ」


「へぇ・・・・・、それ分かるなぁ。俺も昔は飲んでる自分が好きだったもんなぁ」


気が合うじゃん。


もっと話していたいけど、瞼が重い。お酒を飲んだせいかな。


私はベッドの上で眠りに落ちる。初めてのベッドだ。心地いい。





私はベッドから起き上がる。朝だ。起き上がるとソファ前のテーブルには二つのベーコンとレタスのサンドイッチがある。


朝食が作ってあるなんて・・・・・完璧すぎる。


「おはよう。朝食食べて行かない?」


私は彼のとなりに座ってサンドイッチをほおばる。レタスのシャキっとした食感がうまい。


朝食をとり終わると彼は上着を着る。これは・・・・・学生服かな?


「もしかして学生?」


「あぁ、そうだ。この町の大学に通っている。今日はサークルの集会が朝からあってね」


サークル!これは面白そうだ。私もついて行こう!


私は彼についていくことにした。






あぁ、シリンはどうしているだろう。厄介な輩に絡まれてないといいが・・・・・。


俺は制服を着て、幹部食堂に行く。幹部食堂は中級以上の魔法使いと少佐以上のためのものだ。人は少ない。それに食事は一流の料理人が作っている。その味には昨日驚かされた。


食堂を出ると十三班と書かれた部屋に行く。この十三班が俺が配属される班らしい。


ドアを開けると一人のエルフ男の男と三人の女性達がいた。


「君が私の班に配属された新人君だね。私と同じエルフだとはねぇ」


そう言って俺を席に案内する。


俺が席に着くと、エルフが口を開く。


「それじゃぁ、今日の予定だよ。午前中は剣術、午後は飛行射撃訓練。あぁ、あと新人君。自己紹介いいかな?」


俺は皆の前に立つ。


「ナガレ・レイです。年は四百以上です。魔法使いとしては未熟ですので、よろしくお願いします」


それを聞いて皆がどよめく。


「あれれ・・・・・、驚いた。まさか私よりもだいぶ年上だとはねぇ。それじゃぁ私たちも自己紹介しないとね」


そう言ってエルフの男は自己紹介をする。彼の名はリード・ベラ・ユリジア。ユリジア・・・・・この国の王家だ。どうやら、生まれたばかりの時、王族に拾われ養子になったそうだ。年は二百五十以上ではあると言った。


続いてほかのメンバーも自己紹介をする。


自己紹介が終わると、一人の女性が俺に話しかける。酒臭い。


「レイさんでよかったっけ?男紹介してくんない?」


「はぁ・・・・・」


あまりにも唐突すぎて抜けた声が出る。確か彼女はニーナ・テイラーと言ったか。


「私さぁもうすぐで三十なんだ。ずっと一人でいるのかって思ったら不安になって・・・・・」


「それで出会いを求めてると。なるほど」


生憎、知り合いはシリン以外いない。期待には応えることはできない。


その旨を伝えると彼女はため息を漏らして去っていった。出会いに飢えているのだろう。軍ではないのだろうか?


去っていく彼女に他の二人が寄っていく。そして、彼女を励ます。しかし、彼女は深く落ち込んでいるようだ。


さぁ、これから訓練だ。気を引き締めて行こう。


俺はリードにどこに行けばいいかを聞く。


「外に出よう。魔剣は作れる?作れるならさっそく実戦だ」


実戦か。何百年ぶりだろうか。勘が鈍っていないといいが・・・・・。






午前の剣術では班員全員と手合わせをしたが、コテンパンにやられてしまった。勝てると見込んでいた52歳のロココにすら剣を一回も当てることができなかった。


「さぁ、お昼だ。皆で行こう」


三人はリードに続く。俺も四人の後に続く。


俺は席について班員と談笑をしながら昼食をとる。特にリードと過去について話すのは楽しい。多くのエルフは二百を迎える前に自害する。おかげで二百を超えるの知り合いは一人しかいなかった。


二人で食べ終わった後も話していると、褐色の肌に長い銀髪を持つ少女、ファルハ・アフマドが恐る恐るリードに話しかける。


「あっ・・・・・あのっ・・・・・リード・・・・・時間・・・・・」


そう言って食堂に掛けてあった時計を指さす。もう昼の一時半を過ぎている。


あらら、そんなに話していたか。年を取ると時間間隔が狂うと言うが本当かもしれない。


リードは、おっと、と驚いて席を立つ。俺たちも彼に続く。


さぁ、午後の訓練だ。気を引き締めて行こう。






「えぇ・・・・・本当についてくるのかい?俺達って昨日会ったばかりの仲だろ?」


「いいじゃん!一つ屋根の下で一夜を明かした仲でしょ?」


ギムレットは困っている。


そんなこと知ったことか!私は暇で暇で仕方ないんだからついて行く。


「ほんとに来るのか・・・・・。まぁ、空気が合わないと思ったらすぐに出て行ってくれてもいい。その時は逃げ出せるよう俺が手助けするよ」


おぉ!さすが完璧人間。気が利く!


私たちは雑談をしながら大学を目指す。大学に近づけば近づくほど、飲食店が多くなる。どれも庶民向けの安い店だ。


どの店が良いだろう・・・・・。これもいいな、けど、がつんと行きたいならあの店かなぁ。


そんなことを考えていると大学が見えてきた。大きな建物だ。中では多く学生が歩いている。


彼は私を連れて大学の一室に入る。その部屋はそこまで広くなく、三人の男女が待っていた。


「あんたで最後よ。ん?隣のエルフはだれ?」


その中の女性が私のことについて訊ねる


「あー、昨日知り合った。それでついて来たいっていうから連れてきたよ」


彼がそう言うと彼女はふ~んと言って私を見る。そして、一冊の本を取り出して私に見せる。



「自由の国」



本にはそう書いてあった。そういえばレイが買ってたな。


「知ってる?」


私は名前だけならと答える。そしたら、彼女は貸すから読んでみて。と言って私に本を貸した。


そして、彼らは話し合いを始めた。


あらら、私は蚊帳の外。まぁ、本でも読んでるかぁ・・・・・






話し合いが終わるころには本を読み終わっていた。そこまでページが多い本じゃないからよかった。


国のあるべき姿を事細かに書いたものだった。人民の手によって現政権を打倒し、エリートによって構成される機関の下、全国民が平等に暮らす社会を目指しているようだ。


確かに・・・・・そうすればみんな幸せだし・・・・・。


「あぁ、読み終わってたか。僕たちだけで盛り上がってごめんね」


ギムレットが私に声をかける。


「いや、そんなことないよ。この本いいね!レイさんが好きそう」


「レイ?誰だい?」


私は彼にレイについて教える。彼の表情が一瞬曇る。


あれれ・・・・・、なにかまずいことでも言っちゃったかな?それとも気のせいかな?まぁいっか。


私は彼と一緒に彼の家に戻る。帰り道では沢山本について話し合った。今の政府はあそこがダメだ、こうするべきだ。あの本のあの表記はこういうことだ。たくさんのことを話した。


家に着いてからも私たちは話をつづけた。いつの間にか議論は白熱した。


「どうして君はこの本を見て平等を否定する!すべては平等であるべきだ!」


「それじゃダメ!それじゃ努力が報われなっちゃう!」


彼はついには私に手を出した。幸い飛んできたのは平手だった。


「努力?あんなの才能だ!周りが恵まれてたからに過ぎない!」


彼は大きな声で言う。私の目からは涙が零れ落ちる。


私は泣きながら飛び出した。


私たちはもっと仲良くなれるって信じていたのに。いい人だって思っていたのに・・・・・。


私は近くのバーに行って酒を飲む。忘れるために、気を紛らわせるために。あの、苦くてまずい飲み物を無理やりのどに流し込む。






「なんで仲良くなれるって思ってたんだろう・・・・・。たった一日の付き合いじゃん・・・・・」


私はバーのカウンターに突っ伏して弱弱しく愚痴をこぼす。


外では雨が降っている。いつの間に降り出したんだろう。気づかなかった。


外を見ていると、バーのドアが勢いよく開く。そして、びしょ濡れの男が入ってくる。彼には見覚えがある。


「ギムレット・・・・・」


彼は私に近づいてびしょびしょのまま私に抱き着く。冷たい・・・・・、けど温かい。


「たった一日の付き合いだけど、僕には君しかいないって・・・・・いなくなってから気づいたんだ。だから・・・・・戻ってきてくれ。俺が悪かった」


そんな事されたら・・・・・。


「そんな・・・・・私も悪かった。ごめんね」


私たちは雨に濡れながら家に戻った。この町では彼だけ。彼だけが頼れる人・・・・・。

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