ごぉ、
小さな楽しみができた。いつもちょうどお昼時にやってくる青年とのお茶会。縁側で素晴らしい日本庭園を眺めながら過ごすこの楽しい時間は、既に日課になりつつある。
「本日の菓子は城下で評判の焼き団子にございますが、どうでありましょうか?」
にこにこと笑う彼につられて、私の顔も綻ぶ。
「美味しいです、ありがとうございます」
柔らかな甘味に心がほぐれる。もちもちと食べる私に、彼も心なしか満足そうだ。天気の話や花の話、部下の男の話というような他愛もない話をいつも私達はする。そしてそのたびに、時代は違えども私と彼の間に違いなど何もないのだと私は思う。以前、その事を彼に話してみたことがある。彼は一瞬呆けたように私の顔をじぃっと見つめた後、静かに笑った。
“いいえ、それは違いまする”
あの時の彼の顔と言葉を、私は未だに忘れられない。
“この身はもう既に、数多の血で赤く染まって。もはや人とは呼ばれておりませぬ”
もはや諦めたように静かに微笑んだ青年と私の決定的な違いはそこなのだと、どうしてか納得してしまった自分がそこにいた。
鬼と人。
(だけど、甘味を並んで食べてくれるのはあなただけ)