よんじゅうに。
あれから、もう何年が経ったのだろう?
彼と別れてからの月日は長いようであっという間だったように思う。彼や友人達と過ごした高校時代、それぞれの道を選んで、私も大学へと進んで、小さいけれどもしっかりとした会社に就職することができた。今は縁あって、異国の地で仕事をしている。彼もあの友人の経営する会社で、今生でもその有能っぷりを発揮しているらしい。時折、友人達との画像付きメールが届くようになった。メールの内容は決まって近況報告と、そして確認のような“幸せですか?”の問いかけ。
不意に彼の顔を思い出して、くすりと笑う。カラン、とカフェのドアベルが鳴った。
『ごめん、待った?』
『まあ、少しね』
今日は大事な話があるんだ、と店の外へと連れられて二人で歩く。石畳の続く異国の街並みにも、もう慣れてから久しい。異国で見上げる空もあの日と変わらず、青かった。
「Per favore si sposi」
この国で、私は再び恋をした。彼ではない他の男の人を愛するようになるなんて、あの時は想像も出来なかったけど。
「Ti amo」
「lo l'amo,anche」
私は幸せです、と。メールで彼に返信しようと思う。
泡沫の。
(それはまるで、儚い夢のような恋だった)
悲恋を書こう。
そう考えて、書き始めた物語でした。主人公は一人の平凡な少女。彼女の運命の相手は、過去の時代に生きる一人の男。登場人物の名前や容姿は、読む際に作者の作り出したイメージを固めてしまいたくなかったので、あえて書かないようにしました。なのでどうか自由に想像を膨らませて、この物語を読んで下さい。
時間を超えて発生してしまった恋愛は、果たしてどこに行くのか。そう考えた時、二人の恋の結末が見えなくなりました。悲恋は悲恋なんですが、ただ破れるだけの恋では無いような気がして。
結果として、『帰着する、恋』に落ち着きました。悲恋というものは必ずしも人を不幸にするとは限りません。お互いを大切に想うからこそ、終わる恋もあります。
現も夢も、泡沫のように儚いものです。恋をした、泡沫のような時間の最後、その消えゆく間際に残るものこそを愛と呼べるのかもしれません。
そんなひとつの愛の形をこの物語で伝える事が出来たなら、幸いです。
長くなりましたが、最後にこの物語を読んで下さった沢山の方々に感謝を。是非、感想を書いて頂けると嬉しいです。この物語を読んで下さって、本当にありがとうございました。