よんじゅう、
目を覚ますと、見知らぬ天井が目に映った。消毒液の匂いが鼻につく。病院であるとわかって力が抜けた。どうやら死ななかったらしい。それにしても、まさかあそこまであの子が追い掛けてくるとは思ってなかった。そこまで行動力がある子だっただろうか?必死に、それこそ周りが見えなくなるくらいにまっすぐ俺に何かを伝えようとしていた。
一瞬、合った目。体中の血が一気に下がったような気がした。怖い。聞きたくない。聞いたら全部終わってしまう、そんな気がして。俺はあの子から逃げた。
走り出したその時、名を呼ばれ、思わず振り返る。その時俺が見たのは硬直したあの子と、あの子に迫り来る一台の車。その後は無我夢中でよく覚えていない。呆然とした顔であの子がへたり込んでいるのを見て、ああ良かった今度こそ護れた、と夢現に笑った。
「……目、覚めた?」
はた、と気付けばあの子がベッドサイドにいた。
「うん。……怪我は?」
「右足の骨折に、裂傷と打撲」
「いや、俺じゃなくて」
「無い、よ。……ごめん、ありがとう」
「良かった……」
ばか、とあの子は顔を歪める。涙こそ流さなかったけど、その瞳は真っ赤に染まっていた。きっとたくさん泣かせてしまったに違いない。
「あのね、話……があるの。聞いてくれる?」
静かにそう切り出したあの子に、もう逃げられないなと苦笑した。
それぞれの覚悟。
(本当は、ちゃんとわかってた)