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泡沫の。  作者: 惠元美羽
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さんじゅうに、


夕暮れの中を二人で歩く。短い時間だけど、一日のうちでこの時間が一番好きだった。線路沿いの道に長く伸びた影。追いかけながら歩く姿がまるで子供みたいで笑った。


「まるで夢みたいだよね」


ずっと前にも、二人で夕日を見ていた事があった。あの頃は確かな未来なんて何も見えなくて、来るはずの明日でさえ信じられなかった。いつ誰が死んでもおかしくはなくて。あの子もいつ未来へと帰ってしまうのかわからなくて。そうやって怯える自分の心に、いつも気付かないふりをしていた。そしてそれは今も同じ。また失ってしまいやしないかって、本当はいつも怯えてる。

ねえ、とあの子が言った。


「いまの私はあの頃から変わった?」



一瞬、どくりと跳ねた心臓。今の顔を見られたくなくて、さあねと笑って少しだけ前を行く。

変わったといえば変わった。当たり前だ。だって今とあの頃じゃ生きる時代が違う。生きてる重みが違う。

……それは俺も同じ。

くるりと振り向けば、どこか不安げなあの子の笑顔。そんな不安そうな顔しなくたって大丈夫だよ。俺は俺だし、君はやっぱり君なんだ。

なあ、そうだろう?


「今も昔も、愛してる」


そう言った俺の声は通り過ぎる電車の音が掻き消してしまって、 君に届かなかったけど。

今はまだそれでもいいと思うんだ。










いつか届ける声。

(だからどうか、変わらず傍にいて)



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