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にじゅうはち、
珍しい人物と二人きりになった。今生でも隻眼の彼は、いまとても穏やかな表情で隣りに立っている。教室の窓から二人見上げた空は、あの頃と変わらずに今も青い。
「まるで嘘みたいだよな」
「嘘?」
「天下を求めてあんなにも人は死んでいったっていうのに、今じゃあんなのが嘘みたいに平和だ」
お前は覚えてないかもしれないけど、と彼は前置きしてから
「俺は人殺しだったんだぜ?」
と笑った。
沢山の人を斬った。全ては天下の為に。今でも時々夢に見る。積み重なった死体の上に立つ、血塗れの自分を。
そう呟いて、彼は俯く。
「こんな……幸せに生きてていいのかってよく思うんだよ」
どこか苦々しく吐き出した言葉。俯いたままのその頭をぱこんっと丸めた教科書で叩いた。
「あ、良い音」
「……てめぇ」
凄む彼に笑いかけた。
「それでも、私はここであなたと逢えて良かったよ」
友達になって、ちゃんと同じ景色を見られるようになった。それがとても嬉しいんだと笑えば、きょとんとした後にようやく彼も笑った。
「顔、赤いよ」
「……うるせえ、ばぁか」
ありがとう、を君に。
(照れたように呟かれた言葉に、ただ頷いた)




