にぃ、
未来から来ました、なんて。私なら絶対に信じない。
「何をぬかすか、この娘は」
「どこぞの間者か、気でも触れたか……」
「しかし見たこともない格好をしておる。もしや魔物の類ではなかろうな……?」
だから、仕方がないと思う。話す全てが真実であっても信じてくれる人なんていないだろう。そう思ってはいたけれど、それでも誰にも信じてもらえないのはとても哀しかった。
どこかへ逃げ出そうにも、足につけられた大きな傷が私に立ち上がる事さえ許してくれない。連れてこられた“陣”といわれる布での区切りの中で、沢山の人が私を眉をひそめるようにして見ている。その視線の中には、今にも殺されるんじゃないかってくらいに恐ろしいものもあって、もしかしたらこのまま殺されるのかもしれないと思った。
だったらせめてもの悪足掻きに、と。その日、私に起きた出来事の一部始終を一番上座に座っている男の人に、尋ねられるまま話していった。そうしてようやく全てを語り終えた時、どしりとした声が「あいわかった」と言って私の話の終わりを告げる。
そうしてゆっくりと私の前まで歩み寄ってきて、唐突にくしゃりと私の頭を撫でて言った。
「そなたの話、信じよう」
「……なんで、本、当に?」
驚きのままに声を出せば、彼はにかっと笑って。
「そなたの目に嘘はない」
それが限界だった。
溢れた、涙。
(泣きじゃくる私の頭を撫でるその手は温かかった)