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じゅうはち、
いつかは、と覚悟していた事ではあった。だけどやっぱり心が付いていかない。彼は行ってしまうのだ、主である青年と共に。数多の命が消える戦場へと彼は行く。
「行かないで。ねぇ、お願いだから」
服にすがりついた手は震えていた。
「選択肢なんて、最初からないよ」
一度はふりほどかれた手。それでも彼はぎゅっと私の手を握ってくれた。
負け戦だと、皆が言っていた。そしてそれは真実そうであるらしい。でなければ彼はこんな顔で私を見たりなどしない。
「嫌、嫌だよ。ねぇどうして?どうして戦わなきゃいけないの!?」
ぼたぼたと涙を落として泣きじゃくる私を抱き締めて彼は言った。
「ごめん、この命はあの旦那の為にある。ただあの人の為だけに、俺はこの命を使うと決めたから」
俺は行くよ。耳元で囁かれた言葉にこもる強い決意。もう止められないのだと悟った。
「じゃあせめて心は……私に、下さい」
言ってしまってから少しの後悔。こんな事言うなんて、本当にどうかしてる。だけど彼は嬉しそうな、泣き出しそうな顔で笑った。
それはもう、君の手の中に。
(たとえ傍にいられなくても、君を想う)