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じゅうなな、
泣き出しそうだった。必死に唇を噛んで涙をこらえる。教えてもらった薬をガーゼ代わりの布切れに塗って、そっと傷口に貼る。
ほんの一瞬、彼の肩が震えた。痛むのか、と聞こうとして上手く声が出せるか自信が無かったので口を閉ざす。無言で包帯を手にとって、つたないながらも一生懸命に巻いた。なんとか巻き終わった、とほっと息を吐いたその時に名前を呼ばれて、不覚にも涙がこぼれた。ああ、泣かないって決めてたのに。
「いつも泣かせてばかりだね、俺は」
困ったように笑って、私の頭をがしがしと撫でるその手はやっぱり優しい。目の縁に溜まった涙を拭って、私も笑った。
「おかえりなさい」
「ただいま」
あと何回、こうやって私達は笑い合えるのだろう。
その優しさに救われる。
(それはきっとお互いに)