じゅうよん、
神様はいると思いますか。
ぼたぼたと落ちる大粒の涙を拭うこともせずに、少女はまっすぐに私を見上げて言った。
「さあ、わからないよ」
「なんで!?だって天女様は何でも知ってるって、母ちゃん言ってたよ!」
「私は天女なんかじゃないの」
「うそだ!だってあたし聞いたもん、ここに天女様がいるって聞いたもん」
そういう噂が流れていたのは知っていた。誰が言い出したのかは知らないが、なんてことをしてくれたのだと思う。私は何も出来ないのに、こんな小さな子供までが私にすがる。その小さな足を傷だらけにして、必死に駆けてきたこの幼子を私は泣かせることしか出来ない。
なんて無力感。
「たすけてよぉ……っ!みんな、死んじゃうっ……たすけて」
カミサマ。声にならない声で、確かに幼子はそう言った。ああ、ごめんね、ごめん。私はこの子の村に用意された運命を知っている。流行り病に冒された村の、その末路を。
「天女様……?」
泣いてるの?と言われてはじめて自分が涙を流している事に気付いた。
「ごめんなさい……泣かないで?」
のばされた小さな手。たまらなくなって、その小さな体ごと抱き締めた。
「神様はね、誰も助けてくれないの。神様は、いつも見守っているだけ」
たぶんこの子もわかってる。わかっててもすがってしまうほど、この子は追い詰められていたんだろう。
「覚えてて。人を助けられるのは人だけで、神様なんかじゃないってこと」
だからお願い。
「あなたは、生きていて」
例え、その目に絶望しかうつらなくても。
(生きてさえいれば、その手で未来を掴めるから)