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泡沫の。  作者: 惠元美羽
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いち、

はじめに。


短編、というよりも掌編という程の短い話が続きます。背景描写が極端に少ないです。心理描写ばかり、そして暗めなお話です。

話どうしで繋がりが分かりにくいものもあるかと思いますが、ご了承下さい。

それはきっと必然だった。たとえその結末が哀しいものだとわかっていたとしても、私達はここで出逢う宿命だったのだろう。

そこまで考えて、くすりと笑えば腹にまわされた腕にぎゅっと力が入った。


「なに一人で笑ってんの?」


一人で楽しそうにするなんてずるい、と拗ねたような声が頭の上からして、また笑う。


「初めて会った時のことを思い出してた」

「……あの時のこと、ね」


月日の経つ早さには驚くばかりだ。あの日から既に半年ほどが経ち、季節は既に秋へと移ろい始めている。


「思えばもの凄い場所で出逢ったもんだよね、俺達」

「ほんとに。……何をどう間違えたら戦場に辿りつくのよ」


だって、私はあの日いつもと同じように玄関を出ただけだ。桜の花咲く春の日に、真新しい制服を着て、新しい生活への第一歩を踏み出したはずの私は、何故か玄関と一緒に別の扉も開けてしまったらしい。気が付けば血飛沫舞う戦場の片隅にただ一人で立っていたのだった。


「あの時、ほんとに怖かった」

「何が?何が怖かったの?」

「戦場っていうのも怖かったけど、一番怖かったのはあなたよ、あなた」


とてもじゃないが忘れられない。周囲で行われている命のやりとりに呆然としていると、突然足を襲った激痛。思わず倒れ込んで痛みのもとを探せば、足に刺さった黒光りする刃物。混乱の中、声をかけられて顔を上げたその先で合った目。

それが二人の出逢いとなった。



「足の激痛も吹き飛んじゃったのよ、あの一瞬だけ」

「……俺も一瞬で何もかもわかんなくなっちまったよ」


目と目が合った瞬間、周りから何もかもの音が消えた。お互いの姿しか目に入らなくて。

魂の底から湧き出てきたかのようなあの感情は、今でも言葉にならない。


「あの時は何がなんだかさっぱりわからなかったけど、今ならわかる」








その瞬間、恋に堕ちた。

(それはきっと生まれ落ちた瞬間から決められていた、私達の宿命)




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