表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/39

3

 翌日の午前中、レンタカー屋へ行き白のコンパクトカーを借りた。ハイブリッド車なので燃費がいいと店員から説明された。

私は一度自宅マンションに戻ると、当面の衣類や生活用品類を詰めたトランクケースや、バス釣りの道具などを車に載せる。

リアシートを前に倒すと、けっこうなスペースが生まれるので積載に困ることはなかった。

家事をしていた妻が下まで見送りに下りてきた。

「久しぶりの運転だから気をつけてね。じいちゃんばあちゃんによろしく言ってね」

 と、言いながら、一万円札を渡してきた。

「ありがとう、なにか美味しいものでも買って帰るよ」

 私は車に乗り込むと妻に手を振って出発した。


数年前まで自分の車を所有していたが、通勤や子供たちの通学はもっぱら電車やバスや自転車で、乗る機会がほとんどないし、駐車場料金や税金もばかにならないので処分した。

 長野にいた頃には考えられないことだ。


都内の混み合った道路をしばらく走り、調布ICから高速に乗る。平日の昼間だからか、交通量はさほど多くなかった。

走行車線を80キロで巡航する。追い越し車線を長距離トラックが連なるように通り過ぎていく。関西や九州、四国のナンバーが多いような気がした。

レンタカーは快適そのものだった。以前所有していた車はこれよりも排気量が大きく、これよりはいくらか上級の部類だったが、まるで比べ物にならない。

乗り心地も良く静かで、アクセルを軽く踏むだけでかなり加速する。

そして運転する際に便利な機能もたくさん付いており、20年前だったら最高級車の装備かもしれない。

前方に遅い軽トラックが見えたので、ミラーを確認したあと追い越した。

「20年経てば車も道路も社会も変わる…人間もそうかな」

 私は独り言を呟いていた。


山梨県に入ると登坂車線とカーブが多くなり、景色もそれまでと違い、深い緑色の山々が四方に見えた。

右前方に八ヶ岳が見える頃、山梨と長野の県境に差し掛かる。この辺りになると標高は1000メートル近くになる。窓を少し下ろすと、東京の冬並みの風が入ってきた。

途中、小さなパーキングエリアに寄り、長野への土産の菓子類を買い、販売機のドリップコーヒーをベンチで飲んだ。

スマホで長野の天気予報を見る、この先一週間は好天が続くようだ。しかし、最低記憶を見ると3℃や5℃の数字が並んでいる。東京より10℃は低い。

私は厚手の靴下を持ってくれば良かったと思った。

そこからは諏訪に向かって下り坂が続き、まだシーズンオフのゲレンデなどが遠くに見える。

諏訪の先の岡谷JCTで高速は中央道と長野道に分岐する。私は長野道の方へとハンドルを切った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ