大丈夫、怖くない
大丈夫、怖くないよ。何も怖くない。あなたを傷つける存在なんて、どこにもいない。私がずっとそばにいてあなたを支えるから、心配しなくていいんだよ。
怖がりなあなたのために、体を這う虫が二度と見えないよう、恨みをつぶやく囁き声が二度と聴こえないよう、目も耳もちゃんと塞いであげたから、何も怖くないでしょう。
それとも、また誰かを傷つけてしまうのが怖いの? でも、大丈夫だよ。私を力いっぱい殴り倒した両腕も、思いっきり蹴り飛ばした両足も、全部さよならしたんだから。私を激しく罵った口も、間違って開かないようにしっかり幾重にも縫いつけてある。あなたは悪くない。ただ怖かっただけなんだよね。だから、安心していいんだよ。
「んーんーんーんー!」
うん、私も大好きだよ。怖くて憎くて辛くて、たまらない時もあったけど、あなたが今の姿になってからは全てが愛しくてしかたがないの。痛み止めのモルヒネで薬物中毒になっても、二人の愛で乗り越えられた。これからも食事だって、下の世話だって、恥ずかしがらずに何もかも私に任せてね。
耳が聞こえなくてもこうやって指でなぞれば私の言葉は伝わるし、喋れなくたってあなたの考えていることは、ちゃんと分かるよ。だって心の底から愛しているから。
「……ん……ん…………ん……ん……」
うん、お休み。今夜もいい夢が見られるといいね。