巡るカセットテープ
『幸運のカセットテープ』。
それは、ある小さな町にある伝説だ。
曰く、そのテープに収録された曲を聞けば、大きな幸運がもたらされるという。
◇
田淵和彦は、あるカセットテープを探していた。
何でも、そのテープに収録された曲を聞けば幸せになれるらしい。オカルト好きな記者である彼は、そのカセットテープに興味を持った。
田淵は噂の町に辿り着く。本当に小さな町だ。まずは歩く奥様方に尋ねる。
「あぁ、それなら榊のばあちゃんが八百屋の兄ちゃんにあげたって言ってたわね」
いきなりの情報。これは幸先がいい。
田淵は八百屋に向かう。
「カセットテープ? それなら床屋の嬢ちゃんに渡したで。別嬪さんに頼まれたもんでねぇ~」
八百屋の兄ちゃんは頬を赤らめる。店は盛況そうだった。次に床屋に向かう。
「カセットテープですか? それなら精肉店のおば様に渡したけど。……私にはもう必要ないし」
そう言って彼女は同じ店の男性スタッフに視線を送る。
ふと見た左手の薬指には輝る指輪がはめられていた。どうやら噂は本当らしい。
それから田淵は小さな町を駆け回る。
噂のカセットテープは留まるところを知らず、町中を巡る。そして、町全体を幸せにしていく。
「あのカセットテープね! 榊のばあちゃんに返したよ」
田淵は有力な情報を得る。どうやら、そのカセットテープは持ち主の所へ返ったらしい。
「榊」という表札のある家に辿り着いた田淵はインターホンを押す。すると、中から若い女性の声が聞こえる。扉が開かれると茶髪の女性が出てきた。
「私は田淵と言います。噂のカセットテープがこちらにあると聞いてやって来たのですが」
「あー、そうでしたか……」
そこで彼女は少し気まずそう表情を浮かべる。
「――なるほど、去年」
「はい。カセットテープは棺に入れてもらいました。あまり良くない事らしいですけど」
そう言って、舌を出して苦笑いする。
「ちなみにどのような音楽が?」
「――実は中身は入ってないんです。おばあちゃんの初恋の人がくれたものだそうですよ」
なるほど。確かに誰も曲については話していなかった。おそらく、お守りのような物だったのだろう。
榊家を出て、田淵は車に戻ると煙草に火をつけて一服する。そして、今日の出来事を振り返った。
題名は、そうだな……。
「――『巡るカセットテープ』かな?」
そう言って笑う。本当の意味で、そのカセットテープは伝説になっていたのだ。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
1000文字以下って難しい!!
最初に書いた物から、削って、削って、削って……何とか内容が分かるように調節できたと思います!
やっぱり、2000字は欲しいな~(切実)




