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空を見下し、空に向かう

「我々は皆、海に生かされています」


静かな教会に響く凛とした声。席に座る教徒は皆一様に口を閉じ、耳を傾け祈っている。


「我々の肉体には水も塩も欠かせないものです」


教徒の前に立つ少女は青を基調とし、所々に黒の混じった服を着ている


目を閉じ、胸の前で手を組み、その口に迷いは無いその声は静寂を紡ぐ。


その髪は白く、しかし少し透明感もある不思議な髪色。


「私たちを生かしてくれる海に感謝し、今日も一日健やかに生きましょう」


少女は目を開き、礼をしてからその場を退いた。


祈っていた人達も教会から去っていく。


いつも通りの日々、予定調和から狂わず過ぎ去っていく今。


海を見上げ、無意に考える。


「俺が見てるこの海を、遠くの誰かも見ているのか」


大きな衝動もなく、潮風に揺られそう考える。


「ソラくん、何黄昏てるの?」


後ろから先程教会で聞いていた声がした。彼女は塩の神子、この島で唯一空の海から塩を賜ることの出来る神子だ。


「なに、柄にもなくこの海を見ているのは自分だけじゃないんだ。って思ってただけさ」


なんでもないようにそう言った。


「柄にもなく......っていっつも変なことばかり考えてるから、柄にないことも無いでしょ?」


「まぁそうっていえばそうなんだがな」



「お前以外、誰も関わってこない俺なのにお前以外の誰かを意識するなんて、なんか変だろ?」



「そうかなぁ?」


「まぁいいだろ、それじゃあいつも通り空を見下しに行こうぜ」



「うん」










空、それはそこが見えない谷より深く、海と対なるもの。

見下ろしても底は見えない・・・いや底なんて無いのかもしれない。


「今日も空に行く人がいるんだね」


塩の神子は少し悲しそうに呟いた


「いつもそうだろ?」


そう、毎日1人だけこの地上から空に落ちる人がいる。

いつも何があっても絶えない、訳を聞くと


「地上の生活は疲れた」


「海を見上げるより、今まで見下していた空に夢見るのもいいだろ?」


と一人一人違う理由を言った。


「空ってそこまで惹き付けられるものなのかな?」


「さぁな、人には人の理由があるんだろ」


「案外何も分からないからいくのかもね」


その日は空を見下したあと、塩の神子とは別れ帰路につき眠りについた。












コンコン


夜も更けて、周りには海と塩の光以外何も見当たらない。


「一体誰だよ」


少し眠気が取れないままドアを開けた、そこには海に照らされ、どこか妖しい雰囲気を着込む塩の神子がいる。


「こんな夜更けにごめんね、なんだか眠れなくて・・・少し一緒に外を出歩かない?」


「今日だけだぞ」


「ありがとう」


朝とは違う様子の塩の神子は嬉しそうに、けれど少し不安げに空に向かう。


「夜に出歩くのなんて初めてだから、凄くドキドキするね」


「ここはいつも同じように日々がすぎるからな」


「夜の空とっても綺麗だね」


「あぁ......朝とはまた違った良さがある」


海と塩の明かりが、2人を照らしながらそこにある。










「一緒に空に落ちてくれる?」


塩の神子はこちらを見てそう言った。そこにあるのは寂しそうな顔とそれを照らす海の光。


「どうして空に落ちたいんだ?」


「地上に希望が持て無くなったから」


なんでもないかのようにそう言った。


「理由が適当すぎないか?」


「まだ言いたくないの」


少し気恥かしげに言う。


「死ぬだろうけど?」


「それでもいいよ」


「いつも通り俺も退屈していた、一緒に落ちようか」


今の日々に悲観も絶望もしていない、死ぬ覚悟もない、だからといって死ぬことに躊躇うことも無い。









手を繋ぎ、地上の端に立った。眼前には空。


「行ってみようか」


「うん行こう」


地上から飛び降りる。

風が、体を待っていたかのように迎える。不思議と恐怖は無く落ち続ける。


「まだまだ終わりが見えないね」


「終わりがないのかもしれないな」


「何も食べられないから、私達餓死するかもね」


「それでもいいだろ」


落ちる、堕ちる、落ち続ける。いつまでも、何処までも、落ち続ける。


終わりはいつまでも見えず、景色も変わらず、ただ落ちる。







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