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22.睡眠回復

「コレット? どうかしたのか?」

『な、なんでもないわよ!』

「そう? でも様子が――」

『なんでもないったら!』

『くははははは、それは乙女心という――』


 がぶっ!!


『余計な事言わない!』


 コレットはクリスに噛みつき、睨みつけた。


『くははは、我が心友よ、今の分かるか?』

「え? なにが?」

『変な事じゃなくて、余計な事らしい――痛たた!』


 コレットの牙がクリスの肌に深く食い込んだ。

 それでクリスが音を上げてギブアップして、コレットは渋々離れた。


 歯形がついたが、フェニックス種のクリスはその歯形から炎が立ちこめて、一瞬で治癒した。


 フェニックス種すごいなあ、とぼんやり思っていた。


 そうこうしているうちに、あふれた水が竜舎の外に排水されていった。

 コレットもさっきに比べて元気になってきたから、ひとまず話を変えることにした。


 俺はルイーズの方をむいた。


「ルイーズ、契約をさせてくれるか?」

『もちろんだよゴシュジンサマ』


 ルイーズは寝そべっていた状態から起き上がって、一歩前に進み出て、俺の前に立った。


「クリス」

『うむ』


 クリスは相変わらず寝そべったままで、無造作に魔法陣を開いた。

 魔法陣は俺とルイーズの間にあり、丁度俺達二人を包み込むような形になった。


 俺はあらかじめ用意してきたナイフで自分の指の腹を裂いた。

 ぽたり、と一雫の鮮血が魔法陣の真ん中に垂れるが、地面に着くことなく空中で留まった。


 ルイーズもがぶり、と自分の前足の指をかんだ。

 同じように、鮮血が一雫落ちた。


 二滴の血が、魔法陣の上、空中で混ざり合う。


 それと同時に、魔法陣からまばゆい光が放たれる。


『んぅ……』


 ルイーズが、声を上げた。


「どうした、どこか具合でも悪いのか?」

『ううん、なんかちょっと変な気分なだけ』

「変な気分?」

『喉の下を十人くらいにくすぐられてるみたいな』

「それは変になる(、、、、)な!」


 予想以上にヤバそうな状態だった。


「それ以外はなんともないか?」

『うん、だいじょうぶ。……あれ』

「どうした」

『ゴシュジンサマが普段よりも格好良く見える』

「へえ」

『神様? くらい格好いい……』


 ルイーズはそう言いながら、ぼうっと、熱に浮かされた様な目で俺を見つめる。

 状況的に、間違いなく魔法の効果だから、気にしないでスルーすることにした。


 そうこうしているうちに光が俺の体に吸い込まれた。


「あっ」

『あっ……』


 ルイーズとほぼ同じタイミングで声を上げた。

 頭の中にイメージが流れ込んできた。


 クリスの時とすごく似てるヤツだ。


 たぶん、ルイーズの頭の中にも同じ感じなのが浮かんでいるんだろうなというのが分かる。


『これが……契約なんだ』

「そういうことだな」

『そっか……』

「さて、契約の能力は……なるほど」

『どういう物だ心友よ』

「わからないのか?」

『うむ。契約ごとに違うからな。「種」に由来する能力が与えられる事もあれば、「個」でつく能力もある』

「なるほど」

『まあ、我は唯一なる存在だから、「種」であり「個」なのだがな』

「それはさすがだ」

『くははははは』


 クリスは天井を仰いで豪快に笑った。


『して、どのような能力だ?』

「ああ、説明するよりもやって見せた方が早いな」


 俺はそう言って、周りを見回した。


 水が大分引いて、クリスが再生の炎をだしたせいもあって、その周りが乾いている。

 俺はそこに地べたに座って、あぐらと腕を組んで、目をそっと閉じた。


 かつてない程の寝付きの良さ――3秒で眠りについた。


 ……。

 …………。

 ………………。


「……はっ」


 目を覚ました。

 がくっと「落ちそう」な感覚とともに目を覚ました。

 周りを見ると、クリスを始めとするドラゴンの四人が一斉に俺の事を見つめていた。


『どうだったゴシュジンサマ』

「ああ、これをみろ」


 俺はそう言って、指を突き出した。


『これは……?』


 ルイーズは首をかしげた。


『なるほど、傷が跡形もなくきえているな』


 クリスが理解して、半分説明するような感じで言った。


『あっ……本当だ。ゴシュジンサマが契約に切ったところがもう治ってる』

「そういうことだ」


 俺ははっきりと頷き、説明した。


「睡眠回復……とでも言うのかな。寝てる時に肉体が普通よりも遙かに速いスピードで治っていくみたいだ」

『くはははは、そういうレベルではないぞ。見た感じ回復魔法レベルだ』

「回復魔法か」


 それはすごいな、と思った。

 寝てるだけで回復するのなら、便利だ。

 即効性はないが、もともと傷を癒やすには寝るのが一番だったし、そう考えればプラスにしかならない、ありがたい能力だ。


 俺はルイーズをまっすぐ向いて。


「ありがとうルイーズ。これすごいぞ」

『あはっ、よかった』


 ルイーズは嬉しそうに笑った。


『それじゃ、次は私ですね』


 そう言って一歩前に進み出たのはエマ。


「エマか。戦闘系の能力が身につきそうだ」

『そうでしょうか』

「楽しみだ……頼むぞ」

『はい!』


 俺とエマは向き合って、クリスに出してもらった魔法陣の上で、それぞれ血を垂らした。


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