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12.真心を君に

 竜具屋を出た後、その足で役所にやってきた。


 ロビーでローズさんを捕まえて、説明をした上でギルドカードを見せた。


「本当だ、2になってる」

「ギルドレベルってこんなにすぐに上がるものなんですか」

「いや、それは普通あり得ないね。シリルのところは一人とニ頭で登録したから、普通に考えたら最初のレベル2までに一ヶ月はかかるもんだ」

「ですよね」


 ローズさんの言うことは、ルイの言うことと同じだった。

 ルイは俺を馬鹿にしに来たが、いってること自体は真っ当だったわけだ。


「なにかの間違いでしょうか」

「ちょっと待ちな」


 ローズさんはそう言って、俺のギルドカードを持って一旦奥に引っ込んだ。

 俺はしばらくの間、その場で待った。


 十分くらいして、ローズさんが戻ってきた。


「待たせて悪かったね」

「いえ、それで……?」

「確認してきたけど、何かの間違いとかは無かった。不正も無かったよ」

「不正とかあるんですか」

「あるよ。例えばギルドを立ち上げて、あっちこっちから竜をかりて一瞬だけギルドに所属させて、ギルドレベルをあげたら抜けさせる、とか」

「そんなやり方があるんですね」

「抜け道を探して得をしようとする、って人間はどこにでもいるものさ」

「はあ」


 そういうものなのか。


「ってことで、『ドラゴン・ファースト』はちゃんとレベル2になったよ。おめでとう」

「あっ。ありがとうございます」


 俺は慌てて頭を下げた。

 ローズさんからギルドカードを返してもらってレベルが2になったギルドカードを見つめた。


「えっと、レベル2になって、何かが変わるんですか?」

「あるよ、一番大きいのはこれ」


 ローズさんはそう言って、一枚の紙を俺に差しだしてきた。

 俺はそれを受け取って、まじまじと見つめた。


「紙……ですか?」

「ただの紙じゃないよ。それをギルドカードに重ねてみな」

「はい……ええっ!?」


 言われた通り紙の上にギルドカードを重ねて見た。

 すると、それまで真っ白だった紙が、一瞬にしてびっしりと図が描き込まれたものになった。


 それもただの図じゃない。


「これは……ボワルセルの地図?」

「そう」

「この光ってる点は?」

「登録してる竜の居場所さ」

「あっ、そっか。ルイーズは表で待ってるんだ」


 ローズさんの説明に俺は納得した。

 地図はこのボワルセルの中心街からちょっと外れた場所の役所を中央にしている。

 その役所のすぐ横に光点があって、それはルイーズがいる場所だった。


 俺が役所に入ってきた時から動いていない。

 多分、外でちょっと居眠りでもしてるんだろう。


「もう一人の子はいないねえ」

「コレットはミルリーフの山に仕事に言ってますから」 

「一頭で?」

「ええ」

「竜に単独行動させてるの?」

「はい」

「驚いたねえ……そんなことまで出来るんだ」

「ええ、まあ」


 これも言葉の力だけど、ローズさんは踏み込んで来ないから、俺も説明はしないでおいた。


「だったら地図を広げてみな」

「広げる、ですか?」

「そうさ、二本指でこうやって、摘まむようにしてみな」

「はい」


 俺は言われた通り、二本指を広げて、地図を摘まむように指を紙の上に滑らせてからくっつけた。

 すると、図が変わった。


 細かくなった。

 縮尺が変わったのだ。


 それまでは役所周辺しかうつしだされていないのが、ボワルセルの全体像が見えるようになった。

 って、事は。と思って、更に摘まんで縮尺を変えた。


 するとボワルセルの街全体が小さくなって、遠くにミルリーフの山が見えて来た。

 その山の中に、もう一つの光点がみ見えた。


「本当だ、コレットがいる」

「本当だはこっちの台詞さね。本当に単独で仕事させてるのかい」

「ええ、まあ」

「どう躾けたんだい」

「ちゃんと話して分かってもらったんですよ」

「はは、まあそういうことにしておこうかね」


 ローズさんは冗談だと思ったのか、笑い飛ばした。

 これくらいの反応はいつものことだから、俺は気にしなかった。


「ということさ。ギルドレベルが上がれば上がるほど、いろいろ便利になって行くのさ」

「そうなんですか……」


 俺は少し興奮した。


 だったらレベル3になったら何が覚えられる?


 それを思って、わくわくするのだった。


     ☆


 夜、完全に日が暮れてから、コレットが戻ってきた。


 コレットが戻ってきてるのは、「ギルドマップ」で把握してて、俺は彼女が戻って来るのに合わせて、家の外で出迎えた。


「お帰りコレット」

『え?』


 表で俺の姿を見たコレットは驚いた。


「どうした」

『待ってた、の?』

「ああ、リボンが手に入ったから、早く渡したくてな」


 俺はそう言って、手に持っていた袋を差し出した。

 袋の中にあるのは、竜具屋で買ってきたコレットにプレゼントするリボンの数々だ。


『リボン』

「これなんかどうだ、ピンクで可愛らしいぞ。こっちはフリルつきだ」

『あっ』

「どっちがいい?」

『どっちも』

「そうか。じゃあまずピンクのから付けてみよう」


 俺はそう言って、コレットにリボンを付けてやった。

 竜がリボンなんて――ってつける前は不安に思ったけど、つけてみたら意外と違和感がない、どころか結構合っていた。


「いい感じだ」

『そ、そう』

「ああ、可愛いぞ」

『ーーっ、ふ、ふん。そんなのやる前からわかり切ってたことだし』

「そうだな」


 俺はふっと笑った。

 まんざらでもなさそうなコレットを見てちょっとクスッとした。


『ね、ねえ』

「ん?」

『……ありがとう』


 コレットは顔を背け、明後日の方角を向きながら、そう言ってきた。

 いつも通り、素直になりきれない感じのコレットがちょっとおかしくて――愛おしかった。


 その時の事だ。


 俺の懐がまたもや光り出した。

 光ったのはやっぱりギルドカード。

 ギルドカードを取り出すと、レベルは2のままだけど、レベル2、という文字が光り輝き、点滅していた。


「……もしかして」


 俺は一つの仮説をたてた。

 カードが光った時は二回とも、竜達が嬉しくなってた時。

 竜が嬉しくなると、ギルド経験値が貯まる?

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