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100.鉱融合エネルギー

 俺は少し考えて、エマに言った。


「エマが鉱石集めをしてくれるか? これを使えば竜人変身しなくてもトタンを作れる。俺はここから動かない方が効率よさそうだ」

『わかりました! 任せてください!!』


 エマは喜び勇んで、パタパタと走って行った。


 俺はその間、コースのスタート位置についてる、本来鉱石を打ち出すためにある装置をいろいろチェックした。

 この装置が使えればさらに楽にトタンが作れるのは間違いない。

 そう思ってあれこれ調べてみたが。


「だめだ、わからん」


 お手上げだった。

 こういうからくりの知識は無いから、なにがどうなっているのか、そもそも壊れているのかどうかさえも判別がつかなかった。


 そうこうしている内にエマが鉱石をくわえて持ってきて、俺の足元に置いた。

 置いた後すぐにまた採鉱に戻っていくエマの後ろ姿を見送りつつ、ツタンとナガを一粒ずつ拾って、自力で投げてぶつけてトタンにする。


「こだわらず自分でやった方が早いな」


 苦笑いしつつ、そう独りごちた。

 そうと決まれば――って感じで、俺は次々とツタンとナガを拾って、コースを使ってトタンを融合した。


 自力でだと竜人変身しないといけないのが、このコースを使えば変身しなくても簡単に作れる。


 どれくらいのトタンが必要なのか分からないけど、とりあえず作れるだけつくって持ち帰ろうと思った。


 エマが採鉱してきて、俺が加工融合する。


 慣れてくると、一種の流れ作業で楽しかった。

 投げて融合投げて融合投げて――。


『あれ、シリルさん、今の融合してなかったですよね』


 ふと、鉱石を運んできたエマが、ちょうどそれ(、、)を見かけて、俺に聞いてきた。


「ああ、今のはクズ鉱を投げてみたんだ」

『クズ鉱ですか?』

「ほら、そこそこ混じってるだろ?」


 俺はそういい、エマが運んできた、俺の足元にある鉱石の山を指さした。


『ああっ! ごめんなさい! まじっちゃいました。気をつけます!』

「いや、いいよ。それの選別をしようとして時間掛かっちゃうのももったいない。それに――こう」


 俺はクズ鉱を二つひろって、トタン作りと同じ感覚でコースに乗せるように投げた。


 コースの先で加速したクズ鉱がぶつかるが、融合はしないで、ぶつかって砕けるだけでおわった。


「これはこれで気分転換にいいし」

『そうなんですか?』

「ああ、物を食べるのと一緒だ。美味しくてもずっと同じものだと飽きるけど、間にちょっと別のものを挟むとおいしさが復活する。そういうもんだ」

『人間さんはふしぎなんですね』


 エマはしみじみとそう言った。

 ドラゴンはどちらかと言うと飽きとかなくて延々と同じことを続けられる種だから、今の話は不思議に聞こえたんだろうな。


「だから、クズ鉱とか気にしなくて、取れたものをどんどん持ってきていいよ」

『わかりました! シリルさん優しくて好きです』


 エマはにこりとそう言って、また採鉱に戻っていった。

 ドラゴンに好かれるとやっぱり嬉しいな、そう思いつつ、俺もトタン融合の作業に戻った。


 エマが採鉱して、俺が融合。


 その作業分担が意外と楽しくなってきて、延々とやってられた。


『シリルさん、もう取れるだけ取りました』

「わかった、じゃあ今ある分を融合し終えたら一旦表まで出来た分を運ぼう」

『はい!』


 大きく頷くエマ。

 そんなエマが見守る元で、俺は残った分を融合させていった。

 もともと苦もなくやれていたうえ、終わりが見えていればますますテンションがあがる。

 ツタンとナガを投げるのに心なしか力がこもる。


 最後のツタンとナガを投げてトタンにし終えたあと、ついでにのこったクズ鉱も手にした。


「これでおわり、っと」


 何故かと聞かれれば、作業の最後にその開放感から力が入った、としか言い様がない。

 なにかを感じたとかそういうのじゃなく、「終わりの花火」をぶち上げる気分と似ていたのかもしれない。


 俺は、最後のクズ鉱をちょっと強めに投げた。

 クズ鉱は今までで一番速い速度で飛んでいき、ぶつかった。


『お疲れ様ですシリルさん』

「……」

『シリルさん? どうかしたんですか?』

「今のって……見えてた?」

『え? 何をですか? ごめんなさい見てなかったです』


 エマは申し訳なさそうな顔で謝ってきた。

 謝ることじゃない、という意味でエマの頭を撫でてやった。


 そうしつつ、今見えたものを頭の中で反芻した。

 錯覚か? いやそうじゃない。

 確かにみえた。


 ……なら。


 俺はまわりを見回した。

 エマが運んできたときに飛び散ったクズ鉱がある。

 使わないものだから、ツタンとナガとちがって、あえてかき集めないで放置してたクズ鉱がある。


 それを二つ拾って、コースにむき直る。


『シリルさん?』


 そして、エマが不思議そうにしている中。


「変身」


 そうつぶやき、一瞬の間にクズ鉱をコースに乗せるように投げた。

 クズ鉱はコースに沿って加速していった。

 今までにない、ものすごい速い速度になった。

 そして――激突。


『ええええ!?』


 驚くエマ。


 コースの先で、クズ鉱がなんと融合していた!


 今までにない、一番強い力、速いスピードでぶつかったクズ鉱は本来しないはずの融合をしていた。


 そしてその融合は――。


「すごいエネルギーだ……」


 しばらくのあいだ、宙に浮かび輝きを放ち続けたのだった。

皆様の応援のおかげで100話まで来れました、本当にありがとうございます!


ここまで如何でしたか。


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