燃える季節
燃える季節
秋が来た。紅葉の季節だ。なじみの山が一面に色づく。
赤に黄色に、少し早すぎて枯れてしまったのもいる。
針葉樹の緑が際立つ冬を前に、木々はいっせいに内側へ栄養を溜め込もうとする。
変わり果てた葉は、生きるために彼らが切り捨てたものたちでもあった。
風が冷たい今日みたいな日は、紅葉たちがさらさらとよく落ちた。
触ると乾いた音がする。かつてのみずみずしさはどこにいったのだろうか。
その答えも出ないうちに、かさかさと葉は我も我もと落ちていく。
明るい色の葉がひらひらと木々の間を縫っていく。
繰り返し繰り返し、それを見ていると落ちる葉が火の粉のように見えてきた。
そこではっとした。
今、山は燃えている。火のよって燃えるのではない。しかし、燃えている。
山に根付く木々たちが、冬を越すために捨てた命の破片。
それが何枚も何枚も重なって、木の枝に、地面に、空間に静かな火を灯している。
紅葉を迎えた森は、そうして寒々しい冬を乗り越えてきた。
秋の静けさに包まれて、山に落ちる木の葉の鮮やかさ。
それは、木々が春から今まで、無言の中に灯した命そのものだった。
彼らは冬を前にして、燃える季節を迎えていた。
私はそれを美しいと称えていたのだ。