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51. 弓術大会(4)

「随分ご機嫌だな。二回戦は俺の本気を見せてやるからな。」


「あら、エド兄様には負けませんわ。」


選抜者の競技が終了し、後半グループがスタートした。流石は実力者とあって、1回目で感覚を掴んだようで、皆スコアを上げてきている。順調に競技が進み、次はデイヴの番になった。暫定1~3位はエレン、ルーク、エドの順をキープしている。

デイヴは相変わらず顔色が悪いが、引き締まった表情をしている。旗が上がるとともによいスタートを切った。


「見事なスタートを切りました。デイヴィッド・リアム・ゴードン、春から軍へ入隊した期待のルーキーです!ついこの間まで、学生だったなど信じられませんね。末恐ろしい才能の持ち主です。」


一回目をかなり上回るペースで馬を走らせ、全て一発で的を仕留めている。残り的が1つになると更にスピードをあげる。


「これは早い!今大会で最速のタイムを叩き出しそうですね。残る的はあと1つ確実に狙えばトップに躍り出るでしょう。」


あと1つ・・・集中しろ、集中するんだ。


弓を引き狙いを定める。そのとき馬がガクンと揺れ、矢が指から離れてしまう。デイヴは慌てて新たな矢を取り出そうとするが、焦っているのか矢筒から上手く矢が出てこない。なんとか的中させたが、かなり減速していたためタイムが大幅に延びてしまった。


「あぁ!なんと言うことでしょう。途中までよかっただけに非常に残念・・・あと少しと言うところでアクシデントに見舞われてしまいました。」


2回目は1回目よりもスコアが低かったため、1回目のスコアが有効となったが、順位を6位まで落としてしまった。デイヴは悔しがるというより呆然としているようであった。


エドは1回目よりもタイムを縮め、暫定1位となったが、すぐにルークによって1位の座を奪われてしまった。


「さて皆様、今大会最後の出走となります。1回目のトップスコアを叩き出しましたが、2回目は更に上回るスコアを期待しています。1位に返り咲けるか!?エレノア・グレース・アストレイ!!」


観客の声援が轟くが、エレンの耳には届いていないかのように淡々とスタートラインに向かう。


合図とともに馬を風のように走らせる。一つ一つ確実に的に的中させ、的に当てる音が心地よく響く。

怒号のような歓声もエレンが的に当てる度に少しずつ静まり、皆固唾を飲んで見守るが、最後の的に命中させると再び歓声が沸き上がる。タイムも最速を記録している。このままゴール地点へ到着すれば一位は確実である。エレンは手綱を取る手にぐっと力を入れ

ゴールを目指して障害物を華麗に突破していく。最後の障害物をクリアし、残り100m程でゴールというところで一瞬左側から光を感じた。


「きゃっ!」


エレンは突如バランスを崩し、落馬しそうになる。

愛馬はエレンの状況に気がつき減速したがが、エレンは馬にしがみつきながらも馬の背中を軽く叩くと、馬はまたスピードをあげゴールまで走り続けた。

会場は騒然とするが、えれんのがゴールすると鳴りやまんばかりの拍手が会場を包み込む。


「エレン!大丈夫か!?」


「ルーク!怪我はありませんわ。なにか一瞬光ったように感じて、そちらに気を取られて(あぶみ)から足が外れてしまって・・・」


「心臓が止まるかと思ったよ・・・表彰式まで少し時間があるから控え室に戻ろう。」


「えぇ。最後で油断してしまうなんて・・・」


バランスさえ崩さなければ1位確実であったと思われるが、3位の結果となり悔しさをにじませる。


「!?おい、エレン!!」


「エド兄様どうかされまし・・・」


「これ見ろ。」


エドはエレンの愛馬についている(あぶみ)を手に取る。


「え・・・割れている。」


金属製の鐙が真っ二つに割れているのだ。


「これ・・・自然に割れたものじゃない。人為的に割られている・・・というより切断されている。」

エドが綺麗に真っ二つになった断面を見せるとエレンは言葉を失う。


「恐らくエレンが感じたという光りが生じた時に切断したのだろう。しかし、魔力の痕跡がない・・・痕跡を消し去れるなど、相当な腕の持ち主だ・・・」

ルークは冷静に分析するが、その瞳には怒りが満ち溢れている。


「気紋の復元すれば手がかりが掴めるか?」


「いや、無理だ。魔法自体の痕跡が残っていないから、気紋を追うことはできない。」


魔法を使うと魔法の痕跡が残り、その痕跡には呪術者特有の気紋と呼ばれるオーラのようなものが残される。気紋は一人一人異なっており、魔法犯罪が起こった際には気紋を手がかりに操作を行うのだ。気紋を消すのは高度な技術がいるが、リュミエレクォーツでは長年の研究の結果、消された気紋を復元できるようになった。しかし、今回は魔法自体の痕跡が消えているため、気紋を調査することは不可能であった。


『これより、閉会式を行います。選手の方は整列してください。』


「この件はとりあえず後で考えよう。私はエレンを全力で守るが、エドも周囲に警戒してくれ。」


8位入賞者から順位呼ばれるが、エレンは上の空である。


「第三位。エレノア・グレース・アストレイ。」


「・・・おいっ!」

エドがエレンを小突きながら小声で教える。


エレンは我に返って急ぎ足で表彰台へ登る。微笑みを浮かべ観客に手を振るが、心ここにあらずだ。


閉会式が終わると三人は足早に控え室に戻る。


「気になることは山ほどあるが、エレンを狙う者がいることは事実だ。とりあえずしばらくの間エレンを城で預かるがよいか?」


「あぁ、よろしく頼む。父上に伝えてから俺も城へ向かう。」


「ではエレン、空間移動で城へ向かうよ。」


「よろしくお願いいたします。クレアも連れていってもよろしいですか?」


「構わない。しかし、必要なものもあるだろうから、クレアは一度屋敷へ戻った方がよいだろう。クレアにも警備をつけるから安心してくれ。」


ルークはアルバート呼び、クレアを警備するチームを編成させると、エレンと共に城へ移動した。

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