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48. 弓術大会(1)

いよいよ大会当日を迎えた。


場所はアルティトゥクル南東に位置する関所フォーザーのすぐそばにある国立公園で行う。この公園は市民が集うい憩いの場である。


「うわぁーすごい人ねぇ。」


「皆お前を見に来たんだろ。」

エドが群衆を見てそう言う。


今回の大会は市民にも解放され、エレンが大会に出場すると新聞に大々的に掲載されたこともあり、開場時間前にもかかわらず多くの人が押し寄せているのだ。


「エレンの集客力はすごいな。エドはまだしも、武術でエレンにも敵わないなんて、アストレイ家の長男として情けないけど、大衆の面前で醜態を晒さないためにも、全力をつくさないとな。」


長男ウィルは次男エドには幼いことから武術で勝ったことがない。武術大会で総合6位入賞の実力者であるが、天賦の才を持つ弟を持つとどうも霞んでしまう。しかしながら、ウィルの評価の高さは武術よりも聡明な頭脳にある。戦術・とっさの判断力には父レオナルドも舌を巻く程であり、将来的に参謀総長を務める器だと囁かれている。


「エレン、調子はどう?」


「ルーク!よい仕上がりかと思いますわ。」


背後から現れたルークにエレンは笑顔がこぼれる。挨拶だけしてウィルはエドを促しその場を後にする。


「父上もエレンの活躍を楽しみにしていらっしゃったよ。今日はエレンを驚かそうと思って特別なゲストを連れてきたよ。」


ルークの後ろから金髪の少女がひょっこり顔を覗かせた。


「・・・カヤ?」

腰まで伸びた金色の髪であるものの、特徴的な黄色の瞳はカヤのものである。


「すごいね。私は最初気付けなかったよ。」


「エレン様、ご武運お祈り申し上げます。」

はにかむ様子は諜報部族の族長とは思えない。


「雰囲気がずいぶん変わったわね。これは・・・地毛?」


腰まで伸びたウェーブのきいた髪を指差す。


「はい。髪の長さや色は自在に変えることができます。まだ私は修行中なので、長期間は変えることができないのですが、兄は数ヵ月そのままでいられます。」


「イヴァからは相変わらず連絡はないんだけど、まぁ上手くやっているだろう。カヤは城に来てから侍女になるための勉強中を始めたんだけど、本当に飲み込みが早くて驚くよ。礼儀作法も完璧だよ。」


見た目が変わったのはもちろんだが、カヤと出会ったのはほんの数日前のことであるが、当時の粗野な雰囲気は微塵も感じさせず、品のよいお嬢さんに仕上がっている。


「カヤが侍女になってくれるのが楽しみだわ。っと・・・こちらクレア。私の侍女よ。幼いときからずっと一緒にいる信頼のできる優秀な侍女よ。結婚後も侍女として連れていくつもりだからよろしくね。クレア、こちらはカヤ。諸事情があって今城で暮らしているのだけど、後々侍女を務めてもらうつもりよ。結婚後はカヤの教育係を頼むわね。クレア以上に私のこと理解している人はいないからよろしくね。」


カヤが新しい侍女になると聞いて最初警戒していた様子であったが、エレンの言葉を聞いて安心したようだ。


「さぁ、そろそろ公式練習が始まるから行こうか。」


開場へ足を踏み入れると、エレンとルークのツーショットを待ちわびてきた観客たちの歓声に迎えられた。

エレンは馬で軽く慣らすだけにして、あとは念入りにストレッチを行う。十分に体がほぐれた頃、スタッフから整列を促され選手たちが規則正しく並ぶと、ファンファーレが鳴り響き、国王が入場する。


「急に開催が決まったが、これ程多くの観衆が来てくれるとは思わなかったな。弓術競技はあまり馴染みのない者が多いかと思うが、多くの市民が関心を寄せてくれたことを嬉しく思う。我が国の精鋭たちの勇姿に声援を送ってくれ。そして特別ゲストのアストレイ家のエレノア嬢の活躍を楽しみにしてくれ。」


国王は楽しげに観衆に語りかけ、開会を宣言した。


「期待にお答えできるか心配になってきたわ。」


「そんなに気負わないで。でも、私も楽しみにしているよ。」


「もう、ルークったら。更にプレッシャー与えないでくださらない?」


困った顔で軽く睨むエレンをルークは愛おしそうな目で見つめる。そんなルークを見るとつい笑みがこぼれてしまう。甘く幸せな気分に浸りかけたとき、背中にピリッととした視線を感じ、勢いよく振り向く。


この間の練習場と同じだわ・・・何かしら。


「エレン、どうかした?」


「いいえ・・・さ、出番まで随分ありますし、ストレッチでもしようかしら。」


今回の大会の参加者は先日の武術大会の弓術部門の上位30名とエレン、それから軍務大臣であるレオナルドの推薦を受けた者(と言ってもエドが選抜したのだが)である。推薦選抜者から競技を始め、後半になるほど上級者になり、エレンはなんと最終出走を務める。競技は2回行い、点数のよかった方が有効となる。


「一番最後なんておこがましいわ。でも最初で最後の大会かもしれないからベストを尽くさなくちゃ・・・」


エレンがぶつぶつ呟いていると、競技が始まった。推薦選抜者は幹部養成学校の学生から選ばれ、最初にスタートしたのはこの春入学したばかりの一回生で、初めての大会と言うこともあり震え上がっている。養成学校は10歳で入学して6年間教育を受け、その後大半は軍に所属する。養成学校は入学試験も難関であるが、大変厳しいことで有名で、ストレートで卒業できるのは入学者の半分に満たないと言われている。入学したばかりの一回生といっても、推薦を受けられるほどの優秀な人材であるため、なかなかの腕前である。緊張しながら競技に挑む少年たちを心の中で応援し、一喜一憂しているとエドに背中を小突かれた。


「おい、そろそろ行くぞ。」


「えぇーもう行くの?もう少し見ていたかったのに。」


そう不満を言ってはいるが、ルークに肩を抱かれ促されるとご機嫌に待機エリアへ向かう。

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