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45. 代償

翌日、朝食を食べているとクレアが慌てた様子でやってきた。


「クレア、どうしたの?」


「お嬢様・・・これを・・・」


息切れしながら、クレアが見せたのは今日の朝刊だ。

お茶をすすりながら新聞を受け取る。


朝刊の一面にはルークがエレンの肩を抱き微笑む写真がでかでかと掲載されている。

”美しき戦士 エレノア・グレース・アストレイ”という見出しだ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ルーカス王子殿下のご婚約者であられるアストレイ家のエレノア様が野外調査へ同行された。今回の調査では星を巡る不可解な出来事を解明する糸口を探るものだ。


エレノア様は美しく輝く長い髪を一つに束ね、団員達と同じ制服姿に身を包み調査へ挑まれた。調査場所の光の森へは馬に乗り向かったが、侯爵令嬢とは思えぬほど見事に馬を乗りこなしておられたという。調査の途中、不審人物が現れ逃走を図ろうとしたが、エレノア様が放った矢が見事その不審人物を捉え確保することができ、この調査で一番の貢献を果たしたと団員達は口を揃えた。


光の森からアルティトゥルクへ戻るとルーカス殿下と仲むつまじい様子が拝見された。その様子に国民たちは熱狂し、二人の婚約を祝福した。


この美しき戦士が早く王族の一員に加わることを国民は心より待ち望んでいる。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


エレンはお茶を思い切りむせこむ。


「な、何よこの記事は!」


「エレンお嬢様のご婚約を国民が喜んでいるようですわ。」

クレアはにこにことうれしそうだ。


「それはありがたいんだけど、そうじゃなくって・・・はぁ、お父様がいなくてよかったわ。」


レオナルドは朝から会議があるとのことで、通常よりも早く家を出ていたのだ。


「この新聞はお父様の目の届かないように処分して頂戴。」


「かしこまりました。しかし、新聞の一面になるようなニュースですから、旦那様の耳にもすぐに入るのではないのでしょうか?」


「そうね、本当に頭が痛い・・・」


エドにはイヴァを仕留めたことは口止めしていたのに、まさか新聞に掲載されるとは思いもされなかった。エレンは学園に向かう馬車の中でどのように言い訳をしようか必死に考えるが、答えは導き出せないうちに学園に到着した。ため息をつきながら馬車を降りると、急に光を当てられ驚いて顔を上げると、大勢の記者がカメラを向けていた。


「エレノア様、おはようございます!調査のご感想をいただけますか?」

「不審者を弓矢で仕留めたとのことですが、弓矢の手ほどきはどなたから受けたのですか?やはりお父上の軍務大臣でしょうか?」

「婚約の儀の準備は順調でしょうか?」

矢継ぎ早に記者たちから質問を投げかけられる。


しばしあっけに取られていたが、我に返る。

「私のことでお騒がせして申し訳ございません。学園の生徒たちに迷惑をかけてしまいますので、失礼いたしますね。」

と微笑を浮かべ足早に門へ急ぐ。


門をくぐってからも生徒や教師から声をかけられなかなか進めず、教室にたどり着くと同時にチャイムが鳴り響いた。


「おっ、"美しき戦士”が来たわよ。」


「やめてよ、リーナ・・・」


「朝から大変だったわね。それにしてもすごい騒ぎ。正門前は大渋滞だったわ。明日は落ち着くとよいわね。」

ヴィオラは気の毒そうにエレンを見る。


「切に願うわ・・・」


一日中質問攻めに合い、げっそりしながら帰宅すると、玄関ホールで父が待ち構えていた。


「エレン・・・私の部屋に来なさい。」


憂鬱な気分で父の書斎へ入るとエドがソファーに座っていた。その顔には疲労の色が感じられ、既に父からこってり絞られたようだ。


「なんでここに呼ばれたのかわかっているな?」

そう言って新聞をテーブルの上に置く。


今回の件で、エレンが弓矢の使い手であることが国中に知られてしまったこと。自分がエレンに武術を指導したとは思えない口ぶりで、令嬢たるもの武術など以ての外であると延々とお説教された。


「でも私が仕留めていなかったらイヴァは逃げてしまいましたわ。重要な情報をタングソニアに売りつけていたかもしれません。イヴァとは友好的な関係を結べましたし、リュミエラクォーツにとってはよい結果になったと思いますわ。」


エレンが反論すると、エドはやめろと言わんばかりに首を振ったが、既に遅く、父の怒りに油を注いだだけであった。


「はぁ・・・お陰で明日国王陛下からお呼びがかかってしまったではないか。お前は謹慎だ。しばらく騒ぎが収まらないだろうから学園も休むように。」


「えっ、いつまでですか。お妃教育には行ってもよろしいんですよね?」


「謹慎期間は未定!お妃教育もしばらく休むように。国王陛下に明日お伝えする。どうせ王妃様とお茶を飲むだけなんだから問題なかろう。」


「そんなぁ・・・」


「話は以上だ。もう食事だろう、先に食堂へ行っていなさい。」


失意の下、エレンは部屋を後にする。


「お前のせいで俺まで巻き込まれたじゃねーか。」


「私のせいにしないで下さる?エド兄様がイヴァをすぐに捕まえていればこんなことにはならなかったのよ!それに誰よ、記者のインタビューに答えたのは。機密保持違反よ!団員を選抜したのはエド兄様なんでしょ?任命責任よ!」


その日の夕食は険悪な雰囲気だったことは言うまでもない。

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