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44. 調査(5)

「えぇっと・・・あー・・・気づいてた?えー・・・いつから?」

焦った様子のイヴァがチラッとエレンを見る。


「最初からよ。皆も気がついてなかったみたいだけど。同姓が見たらすぐにわかると思うわ。それで、何で男のフリをさせてたの?」


「んー・・・まぁカヤを保護してくれるって約束してもらったしな・・・カヤはカソーディアの族長なんだ。カソーディアの能力は母親から遺伝するんだ。つまり、男の俺はカソーディアの子孫を残せない。カソーディアを引き継ぐことが出来るのはカヤだけになるわけ。俺たちの能力をほしがる奴らは五万といるから、そんなやつらからカヤを守るために男のフリをさせていた。」


「そうだったの。ねぇ、カヤは何歳?」


「・・・11。」


「段々男のフリをし続けるのが難しくなってくるわね。ねぇイヴァ、カヤの保護は約束されているんだから、もう女の子として生活させてあげたらどう?」


「でも、それは調査が終わるまでだろ?その後のことを考えると、男のフリができるうちはそうしたほうがいいと思うんだ。」


「ルーク、調査が終わってもカヤがリュミエラクォーツにいる限り保護することは出来ませんか?」


「エレンが望むなら構わないよ。」


「ありがとうございます。これならいいでしょ?」


「本当にいいのか?・・・恩に着る。」


「ルーク、この国で一番安全なのはこの城だと思うのです。私がここで暮らすようになったら、カヤを侍女として迎えたいのですが、よろしいでしょうか?目の届くところに置いておきたいのです。そのほうがイヴァも安心出来ると思いますし。」


「もちろんだよ。・・・早くエレンが城に来てほしいよ。」

エレンを見つめるルークは本当に幸せそうだ。


「あー・・・俺たちのこと忘れてない?」


「そうだ。カヤ、女の子として暮らすようになったら何がしたい?」


エレンがにっこりと笑いかけると、カヤは少し戸惑ったような顔をしたが。顔を赤らめて小さな声で話し始めた。

「・・・髪を伸ばしたい。キルラ姉ちゃんみたいに。」


「そうか。カヤはキルラのこと大好きだったもんな。キルラは俺の一つ下の妹、生きていれば18歳だった。キルラは人身売買組織に捕らわれて自ら命を絶ったんだ。カソーディアの血を守るために。・・・カヤのこと本当に感謝する。お前たちは信用できそうだし、礼の代わりに足りないがカソーディアについて話そう。」


カソーディアはその昔、”血の魔術師”と呼ばれた諜報部族であった。そう呼ばれる所以はカソーディアの血液には魔力を高める効果があるからだ。権力者たちは高い身体能力と明晰な頭脳、強力な魔力を持つ彼らを非常に重宝し、カソーディアは長らく暗部のトップに君臨していた。

さかのぼること200年前、世界大戦が勃発した。各国はより優位な立場に立つため、こぞってカソーディアと契約を結び、その中で対立する主に付いたカソーディア同士で争いが起き、一族で多数の死者が出たと言われる。また、カソーディアの血液は呪詛に用いるとより強力な作用があることや、飲むと一時的ではあるが魔力が増大するため、人身売買組織に狙われ、カソーディアは滅んだと思われていた。しかし、ほんの少数のカソーディアが生き残り、姿を隠して細々と暮らしていたが、またもや人身売買組織に狙われることになった。キルラも人身売買組織に捕らえられたが、自身の血液が利用されること、また商品のカソーディアを増やすために強制的に子孫を残させられることを危惧し、自らに火を放って血液一滴も残さずこの世を去った。


苦しそうな表情でイヴァはそう語った。


「本当にひどい話・・・絶対に守るわ。」


「旦那、お姫さんありがとう。カヤのことよろしく頼む。それじゃあ、この結界を解いてもらえるか?」


ルークは右手を大きく掲げると、光がはじけたように輝き結界が解かれた。


「じゃ、お仕事行ってきまーす!」

にかっと笑ってイヴァは姿を消した。


「あいつ城の中で空間移動を使えるのか・・・カソーディアは恐ろしいな。イヴァが戻ったら城の結界について相談しなくては。」


王城は結界で守られ、特別な許可を受け手続きを行わないと空間移動は出来ないのだが、イヴァにはこの程度の結界など何も問題がないようだ。


エレンは帰宅し、カヤは警備が万全な王城へ留まることになった。また、エレンが城で暮らすまでの間、礼儀作法・侍女として働けるよう準備をする。


「じゃあね、カヤ。色々大変だと思うけど、がんばってね。」


「ありがとうございます。・・・お姫様。」


「ふふ、エレンと呼んで頂戴。」


「エレン様、あの・・・本当にありがとうございます。がんばります。」

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