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43. 調査(4)

今度は全員で春の森を抜けてアルティトゥルクへ戻る。


「おいおいおい、なんだこの陽気な気候は!俺たちは死に掛けてたってのに、お前はエレンと楽しくデートしてたのかよ!」

そう不満を漏らすエドは鎖でぐるぐる巻きのイヴァの脱走防止のため、手錠で繋がれ一緒に荷車に載せられている。


お嬢様がお遊びで野外調査に参加して足手まといになると思われていた出発時とは異なり、団員達はエレンを尊敬の眼差しで見る。イヴァが姿を現すとともに弓矢を構え、あのランダムで俊敏な動きを一撃で仕留めたからだ。あのようなことをやってのける者は軍にもいないだろう。


「エレノア様、凄かったよな・・・」


「あぁ、さすが軍務大臣のご令嬢だよな。ファンになっちゃったよ。」


そんな声が漏れ聞こえるとデイヴは自分のことのように嬉しく、つい笑みがこぼれてしまうが、先頭を歩くルークとエレンの姿を見るとまた暗い気持ちが押し寄せるのであった。


森を抜け、馬を走らせると無事ノーランに到着した。

出発した早朝は人気がなかったが、丁度正午を回った現在は首都らしい賑わいを見せている。


「ルーカス殿下だ!ん?女性がいるぞ。あの美しい女性(ひと)は?」


「お、おい!アストレイ家のご令嬢じゃないか!?」


「何!エレノア様か!?」


人々はエレンの姿を確認すると歓喜に沸く。なにしろルークとエレンが二人揃って公の場に現れたのは初めてのことだ。ルークとエレンの姿を一目見ようと群衆が押し寄せた。


「ルーカス殿下!エレノア様!ご婚約おめでとうございます!」


ルークはエレンの肩を寄せ、国民に微笑み掛けると地鳴りのように人々は熱狂する。


調査団はノーランで解散となったが、エレンは契約に同席するためルークと共に城へ向かった。


「大丈夫?疲れただろう。」


「いいえ、大丈夫です。色々と驚くことはありましたが・・・」


「私もだよ・・・じゃあ契約の前に軽く食事を取ろう。エド、こいつを地下牢へ連れて行ってくれ。食事は運ばせる。」


「連れて行くって・・・俺も地下牢に入れってことだろ?」

そう言って、これ見よがしにイヴァと繋がれた手錠をかちゃかちゃと不満気に鳴らす。


「カヤ、申し訳ないが、契約まで我慢してくれるか。」

ルークはエドを無視してカヤの目線と同じ位置にかがみ、カヤに問いかけると、カヤは黙ってうなずいた。ルークは自分の手錠を外し、アルバートとカヤと手錠でつないだ。


「ちょ、旦那、痛いって!」

エドは恨めしそうに乱暴にイヴァを引っ張って行く。


「今日は天気がよいから、テラスで食事をしようか。」

二人きりになると愛おしそうにエレンを見つめ、手を引く。照り付ける日差しは強いが、木陰のテラスには心地よい風がそよぎ、夏の暑さを忘れるほどだ。


「エレン!」

突然呼ばれて振り返ると微笑む王妃の姿があった。


「おかえりなさい。調査はどうだった?あら、今から食事?私もご一緒してよいかしら。」


「母上、調査の件は後で報告いたしますので。母上が同席するとエレンも緊張してしまうでしょう?」

二人きりの時間を邪魔されたくないという意図があったが、王妃にはまったく伝わっていないようだ。


「そんなことないわよね?エレンとはずいぶん仲良くなったのよ。」

王妃は椅子にどかっと座り込むと、ルークは不満げな顔をしていたが気づいていない。


食事の後、ルークの執務室へ移動すると、既にエド達は到着していた。


「エド、アル、ありがとう。もう下がってくれ。」


ルークが静かに手を合わせると白い光が手からこぼれる。手を広げるとルーク・エレン・イヴァ・カヤを半円の光が包む。


「念のため、結界を張らせてもらった。」


「この結界はさすがに無効化できないな。」

イヴァは感心したように結界をこんこんと拳で叩く。


ルークは聖杯と聖水そして銀の万年筆をテーブルに置く。

「では契約を交わそう。」


ルークは銀の万年筆を手に取ると、宙にさらさらと契約内容を書き出す。主な契約内容は、星の不可解な事象に関する情報収集の対価として不法侵入・密売未遂の罪の免除、カヤの保護、報酬を与えるというものだ。もちろん、本件に関する事項は口外無用である。


「金ももらえるのか!?」


「?この金額では不満か?」


「い、いや、俺・・・がんばりますね!」


裕福な商人の年収ほどの報酬にやる気を出したイヴァは踊りだしそうな勢いだ。


4人は誓いを交わし、聖水を一飲みすると光に包まれる。


「これで無事契約したということで、旦那、この拘束を解いていただけますよね?」


ルークがしぶしぶ拘束を解くと、イヴァは満足そうににやっと笑う。


「では、本題に移るが、お前は今回の一件について何を知っている?」


「残念ながら、俺が知っているのはさっき森で聞いた話だけだ。」


「なんだ・・・本当にカソーディアなのか?」

期待はずれだと言わんばかりにルークはイヴァに冷たい視線を送る。


「まぁ、待ってくださいよ。星に関しては本当に知らない。ただ、タングソニアについての情報は、どうだ?」


「タングソニアの?」

ルークの表情が厳しくなる。


「タングソニアも旦那と同じように調べてるぜ。まだ何も掴んでないみたいだがな。でも星を奪ったやつに接触したいと思っている。もし接触したら大変なことになると思うぜ。」


タングソニアは軍需産業が盛んだが、星の力を用いれば、より強力な兵器が作れるのだ。リュミエラクォーツはタングソニアと対立しているが、二国の兵力が拮抗しているからこそ世界の均衡が保たれているのだ、タングソニアが強力な兵器を手に入れたのなら世界を巻き込む大戦に発展する可能性もあるのだ。


「なるほどな・・・手を組めてよかった。」


「そうでしょう?現状、まだこの程度の情報しかないいけど、これから仕入れてくるので期待して!」


「私からもよいかしら?」


「お、姫様何か?」


「なんでカヤは男のふりしてるの?」


「「えっ?」」


思わず声が揃ったルークとイヴァは顔を見合わせる。

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