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42. 調査(3)

アレキサンドラ?エルザの双子の姉?そんなことありえない。1000年以上前の話よ。


「信じられないのも無理はないわ。でもそれが真実。」


すると突然、背後から大きな何かの鳴き声が響き渡る。


「ちっ!眠ったと思ったのに!くそっ!」

草陰から人影が飛び出した。攻撃を避ける為だろうか、俊敏な動きでランダムに方向を次々変えて走りだした。


「待て!」


エドが追跡を試みようと駆け出したが、その逃亡者はものの数秒で100mほどの距離を取ると、こちらを見てにやりと笑い、手から赤い光を放ち始める。空間移動の為の魔法陣を発動しようとしているようだ。


赤い光?見たことないわ。こいつは何者なの?


「エド兄様、どいて!!」

エレンはそう言って弓矢を放つ。


「いってー!!!」

逃亡者はその場に横たわり、その隙にエドは魔法を無力化するルーメナイトという鉱物を含んだ対魔法鎖で拘束した。


「おい!乱暴にするな、矢が刺さってんだよ!早く抜いて手当てしろ!」


「言われなくてもそうするわ。」

そう言ってエレンは逃亡者の肩に刺さった矢を乱暴に引き抜く。


「ぅいってーな!!!」


「貴重な矢尻なのよ、返して頂戴。」

エレンが引き抜いた矢の矢尻もルーメナイトで作られている大変貴重な品だ。


「お前は何者だ。ここで何をしている。」


ルークは男と鼻同士が付きそうなところまで顔を近づけ低い声で問う。


「おい、近いぞ。兄ちゃん色男だが、俺は男には興味ないんだ。あっちの姉ちゃんのが好みだな。」

怖がる様子も悪びれる様子もなく男はけけっと笑う。


「貴様!第一王子になんて口の聞き方を!あちらのご令嬢は殿下のご婚約者であられる!口を慎め!」

アルバートが一喝するが、男は反省する様子などない。


「へぇ!あんたがルーカス王子か。噂には聞いてるよ。あんたが相手じゃおとなしく従うしかないな。俺はイヴァ。あっちに隠れてるのは弟のカヤ。」


茂みから警戒した様子で10歳くらいの子供が姿を現す。イヴァと同様に焦げ茶色の髪に深紅の瞳で二人ともよく似ている。


「もう一度聞く。お前達は何者だ?何しにここへ来た?」


「まぁまぁ、そんなに焦るなって。順を追って話すよ。まず、俺たちはカソーディアの生き残り。これを狩りに来た。」

そう言って布袋を放り投げる。


「不死鳥!?」


「姉ちゃん・・・いや、姫様?そう思うだろ?よく見てみな。」


黄金色に輝くその鳥は、男を警戒したように甲高く鳴き、翼を大きく広げる。


「金色の孔雀・・・」


「その通り!この森の主だ。大昔、誰かが不死鳥に見間違えてこの森を"不死鳥の森”なんて呼んだらしいけど、正体は金色の孔雀って訳。」


ルークはエレンとイヴァの間に割って入り睨みをきかす。

「カソーディアは滅んだはずだ。それにお前たちどうやって結界で囲まれているこの森に入った?」


「滅びかけたんだけどね、細々と続いていたのよ。まぁ、残りは俺とカヤの二人だけになっちゃたけどな。カソーディアならあの位の結界なんて問題ないさ。ここにいることが俺たちがカソーディアだってことの証明にならないか?」


カソーディアとは特殊な魔力を持ち、古くから暗殺や諜報活動で暗躍していた一族である。母国を持たず、様々な国を渡り歩き依頼を請けて生計を立てていたが、100年ほど前に起きた世界大戦で滅びたと言われていた。


「その孔雀も貴重で闇市で高値で取引されるだろう。だが、お前たちがカソーディアであるのなら、それよりも情報が大切なはずだ。先ほどの話を聞いていたな。・・・誰に依頼されてここへ来た。」


イヴァは先ほどまでとは打って変わって、神妙な面持ちで静かに話し出した。

「言っただろう、カソーディアは俺たち二人しか生き残れなかった。・・・もう時代が違うんだ。カソーディアのプライドなんて捨てなけれゃ生き延びることはできないんだ。」


カソーディアは暗部で活躍した一族で、世界中どこを探してもカソーディアに勝る諜報部隊はいないと言われていた。カソーディア自身もそれを自負しており、契約の主の下で暗躍し、自らが表舞台に立たない、つまりは諜報活動以外で生計を立てないという信条があった。


イヴァは一瞬沈黙した後、またにかっと笑う。

「まぁ・・・偶然とは言え、さっきの情報はかなりおいしいかなぁと思った。星が消えた情報をタングソニアがほしがっているって聞いたから、タングソニアに情報を売ろうかなと思ったのは事実だ。」


「タングソニアが?」

ルークは険しい表情を浮かべる。


「星を独り占めしたいんだろ。まっ、ここで会ったのも何かの縁だ。不法侵入と密売のことを水に流してくれたら、リュミエラクォーツ側に付くぜ。」


「信用ならないな。こちら側の情報を全て奪った上で、タングソニアに寝返るんじゃないか?」


カソーディアは母国を持たず様々な国を渡り歩き、決まった主を持たない。契約ごとに主が変わるのだ。


「旦那ぁ、馬鹿言っちゃいけないぜ。カソーディアの掟に誓うさ。あ、密売してる時点で掟を破ってるか。ははっ。でもカソーディアは一度結んだ契約に関わる情報は他には絶対に漏らさない。死んでもね。俺たちの仲間は、情報を聞き出すために拷問され殺されたんだ。死んで情報を守ったんだ。」

イヴァはそう言って目を伏せた。


「わかった。しかし、念のため聖杯の誓いを交わさせてもらう。」


「問題ないぜ!これで無罪放免ってことだな。おっと、あと一つ重要な条件があったんだ。」


「まだあるのか。盗人の癖に欲張りなやつだ。何だ、言ってみろ。」


「・・・カヤをリュミエラクォーツで保護してほしい。カソーディアを狙うやつらは多い。」


「兄ちゃん!俺は兄ちゃんと一緒にいる!」


「半人前は足手まといだからな、一人前になったら調査に連れて行ってやるから。」

イヴァはカヤの頭をぽんぽんと優しくなでた。


「では、契約は城に戻ってからだ。この者を厳重に拘束せよ。」


「えっ!これ以上拘束されるの?ちょっ、噂どおりの鬼畜だな!」


イヴァは散々文句を言っていたが、ルークには気にも留めない。


「カヤ、君もルーメナイトの手錠にで拘束させてもらうよ。」

そう言ってルークは自分とカヤを手錠で繋いだ。


「あれっ、シャロン様は!?」

エレンは辺りを見回したがシャロンの姿は見えない。この騒ぎでいつの間にか姿を消したらしい。


「きっとまた会えるさ。エレンが助けを必要なときにね。」

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