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41. 調査(2)

草原を馬で駆け抜けると前方に緑豊かな森が広がる。遠めで見ても木々の樹齢は相当なものであることがわかる。


「あれが光の森だよ。」

ルークは静かに森の奥を見据える。


森に到着すると歴史ある木々の貫禄に感嘆する。

班長は軍から選抜され、各班は東西南北に別れて森の中心に向かって調査を行う。光の森は方角で季節が異なり、東は春、南は夏、西は秋、北は冬の季節を持つ。エレンが属するアルバート・スコットが率いる1班は東側の春の森から進む。


「エレノア様、ルーカス殿下がいらっしゃいますので問題ないかと思いますが、もしものときは全力でお守りいたします。」


アルバートはエドによると、とにかくまじめな男で、お調子者のエドとはとことん気が合わないらしいが、頭の回転の速さはピカ一(ぴかいち)とのことだ。


「ありがとう。でも心配しないで、自分の身は自分で守れるわ。」

そうエレンが言うと、アルバートは眉をしかめて、エレンをまじまじと見る。もちろんエレンには彼をからかったつもりはなく、言葉の通り自分で何とかするつもりだが、アルバートにはか弱い令嬢が冗談を言っているように映ったらしい。そんなアルバートの様子をルークはくすくすと笑う。


「アル、大丈夫だよ。アストレイ家の令嬢だからね。」


中に踏み入れると爽やかな風が吹き込み、花びらを舞い散らす。あまりの艶やかさにエレンは息を呑む。


「美しいでしょ?東側は春の森だからね。別名”不死鳥の森”と呼ばれているんだ。南側は”黒狼(こくろう)の森”、西側は”朱鷲(あかわし)の森”、北側は”銀狐(ぎんこ)の森”と言うんだよ。」


確かに不死鳥が出てきそうな神秘的な森である。調査でなければピクニックでもしたいところだ。


「エレン、何か感じる?」


「いえ・・・森からすごいパワーは感じるのですが、それ以外には特に。」


それほど大きな森でもないので、くまなく調査しても2時間ほどで森の中心に到着した。まだ他の班は到着していないようだ。そこには湖があり、その中心に大樹が根を張り、枝を四方八方に生き生きと伸ばし、強いエネルギーを感じた。


「この湖に星が来るんだ。この森のパワーの源だよ。」


「皮膚がびりびりするくらいすごいパワーですね。この木の樹齢はどのくらいなのでしょう。」


「少なくとも建国時には"全智の木"と呼ばれる巨樹だったらしいから樹齢千年を軽く越えるだろうね。」


2班、3班は到着したが、エドが隊長を務める4班はまだ来ていない。


「4班はまだ来ませんね。何かあったんでしょうか。」


「4班が調査しているのは冬の森だからね。天候が荒れているのかもしれないけど、それにしても遅いな。一応精鋭を集めたんだけど。」


「ル、ルーク・・・」

後ろの茂みから髪は真っ白、鼻水を凍らせてエドが登場した。


「やだ、エド兄様大丈夫?」


「・・・大丈夫に見えるか?」


「ひどい格好だな。どうだった?」


「あぁ・・・最悪だよ。猛吹雪に見舞われて何も見えなくて、沢に滑落しかけるし・・・全員ここにたどり着けたのが奇跡だよ。悪いけど調査どころじゃなかった。」


「皆無事でよかったよ。冬の森は後日改めて調査しよう。ん?」


突然大樹が眩く光り出した。目を開けられぬほどの光が収まると大樹の前に人影が現れた。その人影はすぅーと湖の上を滑るように進み、エレンたちのほうへ向かってくる。ルークとアルはエレンの前に立ち、剣に手を伸ばす。


「えっ?ルーク、待ってください!」


「久しぶりね。」


「シャロン様!?」


ルークは剣から手を離したが、他の団員は剣を振り上げ殺気に満ち、シャロンに向かってじりじりと距離を詰める。


「剣を置いてください!危険ではありません!」

そうエレンが叫ぶが団員達は止まる気配がない。


「剣を置け!」

ルークが一喝すると、団員達はぴたりと止まり、剣を納めた。


「この方は大地の精霊であるシャロン様です!」

一瞬の沈黙の後、戸惑いの声が漏れる。


「シャロン様、ご無礼をお許しください。」

ルークが深々と頭を下げると皆慌てて後に続く。


「いいのよ。会えてうれしいわ。・・・今日は星の件でここに来たのかしら?」


「えぇ、その件で調査に参りました。冬の森は悪天候の為、調査が出来ておりませんが、春・夏・秋の森では特段おかしな点は見られませんでした。近頃何か変わったことがありましたら教えていただきたいのですが。」


「やはりそうだったのね。生憎、ルークたちが探している者は既にここにはいないわ。」


”既にここにはいない”その言葉を聞き、背中にぞくぞくと鳥肌が立つ。ルークを見ると冷静ながらも、その強い視線にはわずかな動揺が見え隠れする。


「・・・と言いますと、その者がここに来たことがあると言うことでしょうか。それはいつ頃で何のために来たのかご存知でしょうか?」


「目的は大流星群の力を得るためでしょうね。その者は来たのではないわ。元々ここにいたのよ。」


シャロンはそう言って、大きく目を見開くエレンを優しく見つめる。

「混乱するわよね。遥か昔からわずかな鼓動を感じていたの。その鼓動が年々強くなっていた。そして今から2ヶ月ほど前、丁度大流星群の少し前かしら、呼吸を始め、星を奪った。これが私の知っていることよ。その者の目的はわからないわ。」


「あのっ・・・その者とは何者なのでしょうか。」


シャロンは悲しげな顔をしてエレンに背を向け湖を見つめる。深いため息をつき、振り返りエレンを見つめる。

「・・・その者の名はアレキサンドラ。初代王妃エルザの双子の姉よ。」

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