表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/52

4.始まりの夜(4)

ロナルドの後ろにソフィーと並んで着いていく。

長い廊下には、こんなときでなければじっくり見学したいほど、見事な装飾が施されている。


さっきまでの和やかな時間が幻だったかのようにエレンとソフィーは緊張感で溢れている。


突き当たりの扉の前に鎧を来た兵士が佇む。恐らくあの部屋に国王陛下がいらっしゃるのだろう。

扉の前に着くとロナルドがふたりに声をかける。


「この部屋に国王陛下がいらっしゃる。」

ソフィーと二人で小さくうなずき、跪くと、一呼吸置いて重厚な音をたてて扉が開く。


「二人とも顔をあげなさい。」


ゆっくり顔をあげる。

冷静で普段通りの凛とした令嬢に見えるが、緊張で押し潰されそうなのを必死に堪えている。鼓動が早く、血液が体内を踊るように巡るが手足は氷のように冷たい。

顔をあげると国王がこちらをじっと見つめる。あまりの威厳に顔を背けそうになるが、じっと見つめ返す。こんなに近い距離で国王に対面するなんてそうそうないことだ。ソファーにゆったりと腰かける国王は銀髪にアメジスト色の瞳を持ち、柔和な顔立ちだが厳しさも見え隠れする。


「宴の最中に申し訳ないな。まずは部屋に入っておくれ。」


一礼して部屋に入る。

ここは王家の応接室なのだろうか、豪華な調度品で溢れている。

テーブルを囲むようにソファーが並べられており、正面のメインソファーの中心にアーサー国王、左側にオードリー王妃、右側に第一王子ルーカスが座っている。向かって左側のソファーにはソフィアの父であるオースティン・ケヴィン・ラッセル、右側にはエレンの父であるレオナルド・エイダン・アストレイが掛けている。


「ここに座りなさい」

国王は二人に正面のソファーに座るよう促す。

二人は再び一礼して腰かけた。


国王が扉に向かって手をかざすと、ゴトンと重たい音がした。振り返ると扉に仰々しい程重厚な鍵がかけられた。


「突然の呼び出しで困惑させてしまったな。さてどこから話そうか。」

国王はエレンとソフィーを気遣いつつ、ゆっくりと話し出す。


「ソフィア嬢とエレノア嬢は16年前の今日生まれたのだな。」


二人は少し驚きお互いを見る。同じ誕生日だなんて初めて知ったのだ。

直ぐに向き直し小さくうなずく。


「その時にオースティンとレオナルドには概要だけ伝えさせてもらった。ソフィア嬢とエレノア嬢が16歳の誕生日を迎えたときにどちらかをルーカスの婚約者として迎えたいと。」


思わずルーカス殿下に目をやると、ルーカス殿下も驚いているようだ。当事者三人はいままで何も知らされていなかったということらしい。


国王はルーカスを見つめる。

「ルーク、突然のことで驚いていると思うが、この国の最重要秘密だったのだ。黙っていて悪かったな。」

そう言ってまた話を続ける。


「16年前、オースティンとレオナルドにこの話しをしたとき、16年後の輝星祭までこの婚約に関する情報が表に出ぬよう聖杯の誓いを交わしたのだ。だから当事者であるルーク、ソフィア嬢、エレノア嬢が何も知らぬまま今日を迎えたのだ。そして、今回もここにいる皆で盃を交わさせてほしい。今から話すことはそれ程重大なことだと理解してもらいたいのだ。聖杯の誓いについては知っているか?」

そう言ってソフィーとエレンを見る。二人が小さくうなずくのを確認して、ロナルドに指示を出す。


「ハミルトン副宰相、盃を。」


ロナルドはクリスタルでできた水差し、8つの盃、銀の万年筆を持ってくる。

その場にいるのは、アーサー、オードリー、ルーカス、オースティン、ロナルド、レオナルド、ソフィー、エレンの8人だ。

全員に盃を渡し、最後に水差しと万年筆ををアーサーに手渡した。


「これから起こる出来事を口外しないことを誓ってもらう。この水差しには城の地下から湧く聖水が入っている。私が誓いを立て、皆に署名をしてもらう。そして聖水を盃に注ぎ、皆で飲み干すと誓いが結ばれる。」

そう国王が言うと万年筆を手に取り、宙に向かってさらさらと文字を書き始める。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

我、此処に誓う

これから起こる出来事について生涯において口外せぬこと

秘密の除外項目はルーカス第一王子の婚約について

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


宙に銀色の文字がキラキラと輝く。


「婚約については公表しなくてはならないからな。それ以外の内容は口外せぬよう誓ってもらいたい。」

そう言って国王は署名し、万年筆をオードリーに渡す。


通常、魔力を用いた誓いは国家間の重要な取り決めや契約などの際に用いられる儀式だ。強力な魔力が掛けられた盃で交わした誓いは絶対に破ることはできないのだ。エレンのような令嬢では一生経験しないものである。


いよいよ、エレンが署名する番だ。この先に何が起こるのであろうか。不安と好奇心が交錯する。

《エレノア・グレース・アストレイ》


「さぁ、全員の署名が完了したな。」


国王が誓いに署名に向かって円を描くように手をかざすと、文字が集まり、キラキラ光る塊が右手に乗った。その光る塊を水差しに入れると、まばゆく光る。

そして国王が水差しをテーブルに置き、手をかざすと水差しの中から聖水が宙に浮かび水晶玉のように球体になった。かざした手をさらに上に掲げると、輝く球体が8つの球体に分かれ、各々の盃に向かった動き出した。

国王が自分の盃をかざすとそれに合わせて皆盃をかざす。盃にぽちゃんと聖水が入ると更に輝きを増した。


「我、此処に誓う。」

国王に続き全員で復唱する。

『我、此処に誓う。』

そう言って聖水を飲むと辺りはまばゆい光に包まれた。


光が収まると国王は皆を見渡した。

「無事誓いは立てられた。」


国王は再びソフィーとエレンを見つめる。

「では続きを話そうか。この話の始まりは、そなた達が生まれる更に16年前に遡る。大魔法使いスカーレットを知っているかな。」

国王はソフィーを見る。


「はい。予言者として名高い伝説の魔法使いのことでしょうか?」

「その通りだ。スカーレットの予言によって国の危機を何度も救われた。そして、この話もスカーレットの予言から始まったのだ。32年前の今日、当時16歳だった私は先代の王である父と共にスカーレットに呼ばれ、彼女のもとを訪れたところ、こう告げられたのだ。『16年後の大流星群の夜、精霊の加護を受ける姫が生まれる。その姫はこの国の救世主となるだろう。アーサー、お前は後に婚約者のオードリーとの間に二人の王子をもうける。その姫を一番目の王子の妻にするべきだ。』 突然そう言われて驚いた。」


スカーレットの予言?エレンがソフィアどちらかが生まれることは決まっていた?生まれる16年も前に?

突然出た予言の話にエレンは困惑する。


「当時の私と同じ年、しかも当事者であれば動揺すると思う。何か聞きたいことがあればわかる範囲で答えよう。」


聞きたいことはあるのだが、何から聞いたらよいのかわからず悩んでしまう。


「父上、スカーレットの予言はどのくらいの精度なのでしょうか。」

今まで黙っていたルーカスが口を開く。


「未来の見え方には色々あるらしいが、はっきり見える未来、ぼんやりとしか見えない未来があると言っていた。ぼんやりとした未来は過程次第では未来が変わることもあるらしい。また遠い未来になるほどぼんやりと見えるそうだ。数ヶ月先位の未来はほぼ見えていたようで、近い未来の予言は確実であったな。しかし、後に救世主となる姫が16年後に生まれるというのははっきり見えてると言っていた。ただ、いつ頃この国をどんな災難が襲うのかといったことまでは見えなかったらしい。」


救世主となる姫が生まれることは決まっていた…でもどちらがその救世主なのだろう…


「国王陛下。私からもよろしいでしょうか。」

「うむ。エレノア嬢、何が聞きたいのだ。」


一礼して話し始める。

「救世主となる姫が生まれることは決まっていたとのことですが、その姫は一人なのでしょうか?」

「そうなのだ。スカーレットによると姫は1人ということなのだが、予言に該当する“精霊の加護を受ける姫”はソフィア嬢、エレノア嬢の二人だ。大国と言われる我が国でも、フェアルが生まれるのは数年に一度だ。同じ日に二人も生まれるとは思わなかった。スカーレットにもわからなかったのか、わざと言わなかったのか。…スカーレットのことだ、恐らく後者だろうな。」

国王は苦笑する

「ただしその姫のことを水晶に愛される光の姫と言っていた。ここからは私の仮定だが、水晶に愛されているのなら、水晶に聞いてたらわかるのではないかと思ったのだ。」


・・・水晶に?どういうことだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ