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39. 王妃と農園(2)

二人で歓談していると侍女が新しいお茶を運んできた。エレンは一口飲むと驚いて顔を上げる。


「これは何のお茶ですか?先ほどのカモミールティも美味しかったのですが、これは・・・今まで飲んだものの中で一番です!」


「気に入ってもらえてうれしいわ。これはセレンハーパー王室に代々伝わる秘伝のお茶よ。一般には流通していないから、リュミエラクォーツではここでしか飲めないわ。」

王妃はにっこりと微笑む。


王妃はセレンハーパーの王女で、両国のより強固な関係を築くためにリュミエラクォーツに嫁いできたのだ。現在は彼女の兄が国王の即位している。もともと友好国であったが、この結婚によって特に貿易面での交流が非常に強くなった。とりわけセレンハーパー特産のお茶はリュミエラクォーツで人気が高く、貴族だけでなく平民の間でも浸透している。


「とても貴重なお茶をありがとうございます。セレンハーパーのお茶はすばらしいですね。我が家でもよく飲みます。セレンハーパーではお茶は輝く星の下で摘む茶葉が艶やかに輝くことから"玲瓏(れいろう)"茶とも呼ばれるそうですね。」


「えぇ。茶摘の時期になると、茶畑は蛍の大群がいるように見えるわ。」


セレンハーパーのお茶は日光に当てず、月と星の光で育てられる。摘み頃になると茶葉自ら光を放つのだ。


「それはとても幻想的な光景ですわね。そう言えば、近隣諸国で星の力が弱まっていると聞きましたが、セレンハーパーではどのような様子なのでしょうか。」


先ほどまでにこやかだった王妃の顔が曇る。

「そうなの。セレンハーパーでも同様に力が弱まっているらしいの。残念だけど今年の新茶は期待できないわ。」


そう言うとエレンを真剣な顔で見つめ、話を続ける。


「他国では星の光が弱まっているのに、リュミエラクォーツでは先日の大流星群でしょ?リュミエラクォーツが星を奪っているなんて言われているらしいわよ。」


「星を奪う?そんなこと可能なのでしょうか?」


「タングソニアの言うことだから真に受けてはいけないけれど、近隣で星の力が弱まっているのにリュミエラクォーツだけ大流星群が来たなんてなんだかおかしいと思わない?」


「そうですね、何か・・・重大なことが起こっていると思わざるをえませんわ。それに、そのような噂が立つこと自体も避けたいですね。最近、タングソニアも国境付近で動きが活発になっていると聞きますし。タングソニアが我が国へ攻め入る口実になりかねませんし、周辺諸国と不協和音を生みかねませんわ。」


タングソニアとは軍需産業が盛んな大国であるが、建国以来敵対しており、小規模な戦闘など日常茶飯事であるのだ。


「本当にその通りだわ。来週の調査で何か手がかりを掴めればよいのだけど。調査にはエレンも同行するのよね。気をつけてね。」


「ありがとうございます。お役に立てるよう努力いたします。」


「あまり気負いすぎないようにね。あらっ、もうこんな時間。初日からこんなに付き合せてごめんなさいね。明日も大丈夫かしら?」


「いえ、とても楽しい時間でした。明日もよろしくお願いいたします。」


和やかな雰囲気でお妃教育初日は終了した。帰宅すると、待ち構えていたレオナルドに今日の様子を伝えると、鳩が豆鉄砲食らったような顔をして去っていった。翌日からも学園が終わるとお妃教育を受けたが、農園や庭園だけでなく時には食料庫で王妃と過ごしたりもした。レオナルドはは何も言わないが、どうも納得のいかないような顔をしていた。

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