37. 帰国(2)
光の森とは首都アルティトゥルクから馬で小一時間ほどに場所に位置する原生林で、その森を中心に流星群が訪れるためそう呼ばれている。首都から程近い場所にあるとは思えぬ程の深い森が広がり、開発はおろか一般人の出入さえも禁じられており、王族や限られた身分の者しか立ち入ることが出来ない。
「まぁ、光の森へ?大変神々しいところだと父から聞きました。私も一度足を運んでたいものですわ。」
「一緒に行くかい?森は険しいけれど危険な場所ではないし。エレンさえよければ。」
「しかし、私のような一般人が立ち入ってもよろしいでしょうか?」
「エレンは直に王族になるのだから問題ないよ。それに調査団の団長は私だから。エドが副団長だから色々聞いておくとよいよ。」
「うれしいです。ルークとの初めての外出が光の森だなんて。」
二人は見つめあい、顔を近づけたそのとき突然ノックが響く。
ため息をつきながらルークが返事をする。
「ルーカス殿下。大変申し訳ございませんが、次の予定が迫っております・・・」
「まったく帰国してゆっくりする暇もない・・・ごめんね、エレン。ゆっくり時間をとれなくて。また連絡するよ。」
「本当にお忙しいのですね。お体にはお気をつけくださいね。」
ルークを見送るためにエレンもホールへ向かうが、二人が手を取り微笑み合う姿に使用人たちはついつい目を細める。クレアにいたっては涙ぐんでいる。
ルークは本当に名残惜しそうな様子では合ったが、部下にせっつかれ馬車で後にした。
ルークを乗せた馬車が見えなくなるまで見送ると、父の方にくるりと振り返る。
「お父様。今度ルーカス殿下に同行して光の森の調査へ行って参ります。」
「お前が?・・・そうか。概要は殿下から伺っているだろうが、何かお役に立てるよう尽力しなさい。それから来週から王城でお妃教育が始まるそうだ。学園の授業が終わってからで構わないとのことだ。・・・王妃陛下直々にご指導いただけるそうだ。くれぐれも・・・くれぐれも失礼のないように!化けの皮がはがれぬ様、縫い付けてしまいたいぐらいだ。こんな破天荒な娘を持つと悩みの種がつきない。」
「ご期待くださいませ。では失礼致します。」
レオナルドの説教モードを感じとり足早に立ち去ろうとしたところ、ちょうどエドが帰宅した。
「あら。エド兄様、お帰りなさいませ。もう少し早かったらルークにお会いできたのに。」
「あぁ、今日帰ってきたのか。しばらくあいつと会ってなかったから会いたかったけど、今度調査で一緒になるしな。」
「そのことなのだけど、私も同行しても構わないと仰ってくださったから私も行くので、よろしくお願いいたします。」
「え!?エレンが!?・・・やめとけ、やめとけ。面白いことなんてないぞ。足元も悪いし。」
「一度行ってみたかったの。楽しみだわ。」
そう言って機嫌よく立ち去るエレンの背後から、まだエドが何やら言っている。
「虫が出るぞ、虫が!」
エドもは髪をくしゃっと掴み空を仰ぐ。
「・・・はぁー、まいったな。調査団にデイヴを選抜しちゃったんだよ・・・はぁ・・・」
国王の命でルークを団長に調査団が結成され、多角的な視点から調査を進めるため、団員は様々な分野から集められた。その団員の選抜を任されたのがエドだったのである。何事も起きないようにとただただ祈るだけだ。




