これはセ界を救う話
野球小説を書こう!だけだったのだが
どうしてこうなった。
ちなみに主人公の設定に、よく似ている選手の事は好きでも嫌いでもありません。
当然馬鹿にもしていません。
俺は「藤村七五三一」プロ野球のピッチャーだ。
大阪の名門、難波東洋高校で高1からエースになり、高3の年まで5大会連続で甲子園で優勝して、当然の様に全球団からドラフト1位され、大阪スパイスに入団した。
プロ入りしてからも活躍して、1年目からローテーション入りして10勝し、新人王を獲った。
2年目も15勝、3年目には20勝をあげ、チーム優勝に導き、MVPを獲得し、メジャーに最も近い日本人だと言われていた。
まさにこの世は俺の物って感じだった。
いろいろおかしくなったのは、4年目、チームが前年優勝したのに監督を交代した事が始まりだった。
前年に引退した人気選手が、コーチや解説者を経ないで監督になった。
スパイスというチームは結構こういう人事がある。
金を稼げるんだったら、チーム編成とかどうでもイイって言うか、弱くなってもイイって言うか。
自分は試合で活躍してるとは言っても、まだ21歳。
当然チーム人事までは口出し出来ないかった。
前年まで「ミスタースパイス」「兄貴」と慕われていた人が監督になる事は文句を言えなかった。
でも、キャンプでいきなり「フォームを変更しろ」という指示には逆らった。
確かに自分は球は速いが、コントロールがいい方じゃない、だから今年はもっと走り込みをするべきと考えていた。
でも走り込みは必要無いから、もっとスピードが出るフォームで投げろ、っていうのはおかしいと思う。
それを忠実に守ったら、俺は今以上のフォアボールとデッドボールが増えてしまう。
「何で外野手だったアンタにそんな事言われなきゃいけないんだ」は今考えたら監督に直接言うのは、言い過ぎたっだかもしれない。
でもまさか懲罰人事で速攻2軍行きが決まるとは思ってなかった。
シーズンが開幕しても俺は1軍に呼ばれなかった。
監督の息がかかった2軍監督から、監督に言われたフォームに変更しろと言われ続けて、それに逆らうとブルペンにも入れない日々が続いた。
そうしているうちに、俺は所謂「イップス」と呼ばれる状態になった。
フォームを無理に変更したせいで、球が前よりすっぽ抜ける様になり、特に酷い時は右バッターの頭の方に向かって行く事が多くなった。
俺の直球の最速は160㎞、これが頭に当たると下手すりゃ死んでしまう。
それを気にしてますますイップスが酷くなっていく、悪循環に陥ってしまった。
そうして2軍でくすぶっていた俺に、広島ノーモアズのエース「城田博樹」さんが会いに来た。
この城田という人は、昨年メジャーから20億円のオファーがあったのに、それを蹴飛ばし元所属チームの広島に戻って来た「漢気」がある人で。
広島ファンから神扱いされている人だった。
ちなみに前年の試合中、俺のボールが2球連続すっぽ抜けて、城田さんにぶつけそうになって詰め寄られた事もあった。
まあぶつけては無いからその場では一応頭を下げただけで、別にそれ以上揉める事が無かった。
俺と城田さんは同じ大阪出身だから俺がプロ入りしてから良くして貰っているし、試合が終わった後電話して謝ったけど、その時には「気にするな」と言ってくれていた。
何でだからますます、このタイミングで、城田さんが俺に会いに来る理由が分からなかった。
「藤村久しぶりだな!元気にしてるか」
「城田さんお久しぶりです。俺はぼちぼちですよ。むしろ城田さんがシーズン中、他チームの2軍の試合を見に来る方が珍しくないですか?」
「カネにお前と話してくれって、頼まれたんだよ」
ちなみにカネって言うのはうちの監督「兼本浩二」の事、監督も元々広島の選手だったので、城田選手がメジャー移籍する前に、チームメイトだったので仲がいいんだろう。
「お前はカネがフォームを変えると言ったのに、納得してないらしいな」
「そらそうでしょう。城田さんだってコーチじゃない、そもそも現役時代ピッチャーじゃない人から、急にフォームを変えろと言われても納得出来ないでしょう」
「その気持ちは分かるよ。分かった上で今から俺のする話を聞いてくれ。ちなみにオフレコな」
「この世界は異世界人に狙われている」
ファ、この人は急に何を言い出すんだ?
「敵の事は我々がヤキウ人と呼んでいる。
世界にはプロ野球団体が国が結構あるよね。
今ある全てのプロ野球団体と言う物は、実は世界をヤキウ人から守る為にあるんだよ」
ΩΩΩ<な、なんだってー!?
「城田さん何を言いだすんですか?」
「俺は正気だよ。ちなみにこの事を知ってるのは政府の人間とかを除くと、一部の球団のトップとか一部の選手だけだから。
アメリカのメジャーリーグが、何でチームがあるんだと言うと、世界でヤキウ人が一番多く攻めて来るからだ。
割とあっさり俺やジローとかゴリラ松阪とかがメジャーに行ったのは、給料に惹かれてとか憧れとかと思われているがも知れないけど。
アメリカだけじゃなく、世界を守る為に戦うためにメジャーに参戦してたんだよ。
で、お前が今回カネからフォームを変えろと言われた理由は、俺がそう勧めたからだ。
お前去年俺にボールをぶつけようとしただろ、いやその事を怒っている訳じゃ無い。
あの時俺が激高した時怯えていたよな。
あそこでお前が俺に向かってくる様なタイプだったら、俺はお前をメジャーに推薦してるよ。
一応言っておくけど、どっちがいい悪いじゃなくて向き不向きの話だからな。
お前の性格は日本でヤキウ人と戦うのに向いていると思うよ
しかもお前本人は気付いてないだろうけど、もう何人もヤキウ人を倒しているんだよ」
「そうなんですか?」
「この眼鏡をかけてこの動画を見てみろ」
城田さんが見せた動画はインターネットの動画サイトにアップされている「藤原死球集」って動画だった。
正直あんまり見たくない。
しかし城田さんは「ここを観ていろ」と動画をある部分を指さした。
そしたら急に 彡(゜)(゜) こんな顔をした、河童みたいな何か訳の分からない生き物(俺にはそうとしか表現出来ない)。
それがバッターボックスのバッターの身体の方に近づいた。
でも、俺のボールがそいつに当たって河童の化け物が消えて言った。
「ヤキウ人が見えてない時に、たまたま倒せるボールを投げれるピッチャーはお前位だよ。
しかもその動画を全部見ると分かるんだけど、お前は無意識にヤキウ人を高確率で倒している。
お前のコントロールの悪さ、お前は悪い癖なんで修正するべきって思ってるみたいだけど、これは凄い才能だよ。
ちなみに俺にビーンボールを投げた時もヤキウ人を倒しているからな。
だたプロ野球選手と言う意味では、お前の評価は下がるだけになる。
ヤキウ人が見えない野球を見てるファンからしてみたら、お前はコントロールの悪さを治せない、ダメピッチャーとしか見えないからな。
それでもいいか?」
「はい」
俺は即答した。
「この世界がこんな風になってるのを初めて知りましたが。
俺の能力でこの世界が救えるなら、自分の評価なんてどうでもいいです。
野球を楽しく観賞しているだけの人も、楽しませるエンターテイナーを目指しますよ」
「藤村、俺はお前を尊敬するわ。
今までの価値観だと試合で活躍だけして、金を多く貰う事だけ考えてメジャーを目指す選手も最近は多い。
誠意は言葉ではなく金額っていう奴もいる。
けど大阪にいる選手では兼本とお前は違う。
ホントは俺は今年引退するつもりだったけど、もう少しだけ頑張ってみるわ。
出来る範囲でお前たちを助けていくわ」
城田さんとの話が終わり、その足で兼本監督に会いに行き、自分が考え違いしていた事を謝って、それで俺がこれからヤキウ人を倒していく事を誓った。
ちなみに監督が肩を痛めてまで現役に拘り、連続試合フルイニング出場数、連続イニング出場数の世界記録保持者作ったのもヤキウ人を倒すためだった、と聞いて驚いた。
ヤキウ人は原理は分からないが、中途半端なプレイをしている選手がいるチームとか、言い方が悪いが金満な選手、チーム、さらに今は国内には無いけど八百長をしているチームの選手に集まる傾向がある。
はっきり言って我が大阪スパイスも結構該当するとも言える。
兼本監督が最初に俺を2軍に落とした理由、はチーム内の選手に付いているヤキウ人を倒して欲しい、って考えがあってそれを知って俺はどんどん2軍でボールをぶつける事にしてた。
俺が絶好調になったのを監督が知って、むしろその状態になるのを待っていたように、俺を一軍に上げ、先発をさせた。
この日俺はピッチャーになって初めてという酷い内容で、ストライクが入らない状態で8回まで投げさせられた。
その間に8失点した。
でも監督は交代させずに俺に161球を投げさせた。
この日俺は一流プロ野球投手としては完全に壊れた。
その後は予告先発で俺の名前が載るとネットでは
「明日の試合18時に、藤村源五郎を先発させる」
「藤村は爆破予告扱いか!」
「通報した」
と言われる様になった。
俺の4年目は3年目までとは違い成績としてはボロボロだけど、日本にいるヤキウ人を片っ端から倒しまくっていた。
こうして予定通り、イップスになった状態で終わった。
スパイスは高卒で入団した選手は、通常は5年以上寮生活を送るルールになっている。
とにかく寮を出たいって話をして、オーナーに年俸が下がってもいいので退寮させてくれと頼んで、1年早く退寮する事が出来た。
新居は監督から紹介されて選んだんだけど、まさか引っ越し先のマンションが別世界に繋がっているとは思って無かった。
その世界ではこっちの世界以上に、俺のイップスが大活躍する事になるとはもっと思って無かった。