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ソーイングスキルで目指せ魔王様~その魔物、俺たちのハンドメイド~  作者: あーちゃんママ
第10章 アーステア大陸
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強い子と弱い人

「あ!そうだ!ディー見て見て!ビートバン改良したよ!」

隠しダンジョンを登る途中、テオドールが板を片手にはしゃいでいる。


初めて見た時の石版ではなく木の板だ。


大きさも人が寝れるサイズから片手サイズになり、曲線を描く形状はスピードが出そうだ。


「ずいぶん軽いビートバンになったな」


これなら俺でも持ち運びできそうだ。


「ん?この銀色は・・・」

中央に銀色の模様と青色の魔石が付いている。


「ミスリルだよ。エスロットがね、使えるものは使えばいいって。紙で燃えないものを作るより燃えない素材で何を作るかが大事なんだって!」


「あーなるほど」


まーた何か勘違いしてるな。

技術はちゃんと磨かないとダメだぞ。


「まぁ時間のある時に練習しないと、インテグラが泣くぞ」

「そ、も、もちろん!」


胸を張っているが、『そうなの?!』って言いかけたな。



「これ、俺も乗ってみていいか?」

「うん!この魔石に魔力を込めるんだよ」


こう!と俺の持っているビートバンに魔力を込めた。



ぶわっ!!



「・・・坊ちゃん、乗るなら広いとこに出てからにしないと危ないですぜ」

「・・・すまん。助かったよ」


テオドールが魔力を込めた瞬間、俺のビートバンが浮き上がり吹っ飛ばされた。

落下地点でエスロットに受け止めて貰わなかったら怪我をしていたな。


「ディー!大丈夫?!」

「大丈夫だ。魔力は少しずつ入れないと危ないな」


そういえば石棺・・・じゃない。箱型ビートバンも凄い勢いで飛んでいた。

あれはテオドールが魔力込めすぎたせいか・・・納得。



「そういや魔石で空が飛べるなら魔法付与とか使わなくても色々できそうだよな」

「昔はそれで色んな移動方法や道具があったんだってー。でも魔石が取れなくなったから魔法付与が主流になったんだよー」


あーそうだった。

魔石見慣れたせいで世界的に希少になってるの忘れてた。


ビートバン1つに青の魔石1つか。

お父様たちが取ってきた魔石もまだまだあるし、便利なものが増えそうだ。


「ディーも作れるようになったらいいのに!教科書貸すよ!」

「そうだな・・・気が向いたら貸してもらうかもな」

「それ読む気なさそー」

「それよりやることがなくなったからどうしようか・・・あ、ヨルヨン見に行くか。友達とちゃんと遊べてるか気になるし」

うっかり大怪我してないかも気になる。





「あ!パパさま!」

隠しダンジョンを出て、難民キャンプを少し離れた場所。

綺麗な小川が流れる原っぱにヨルヨンがいた。

ヨルヨンの他にもベクトールなど村の子が4人走り回っている。


「みんな仲良く遊んでいたか?」

「はい!ヨルね、上から落としてたの!」

「うん?」

上から落とす?


「パパさま見てて!」

ニョキっと角や羽が生えると子供を1人掴み、そのまま上空へと飛んでいった。


「きゃー!捕まったー!」

キャッキャと女の子がはしゃいでいる。


「うぇ?!ヨ、ヨルヨン?!」

何してるの?!


「行くよー!えい!」


ぱっとヨルヨンが手を離した。


「うぇぇえ!?」

女の子がはるか上空から落ちてくる。



「よっ!」



シュタッ!と女の子が地面に着地した。

「ちゃくちー!」

「ヨルちゃん!次僕もー!」


・・・これが戦闘スキル持ちの遊び・・・怖い!


「ヨルヨン、それにみんなも。この遊びは危ないからね。俺が落とされたら死んじゃうからね」

「パパさま、そうなの?」

「えー?僕のお父さん落としても生きてるよー?」


それは、どこの魔物の話かな?


「アペリティフは戦闘スキル持ちがほとんどだから接したことがないかもしれないけど、非戦闘スキルは落ちたら死ぬし、強くぶつけても死ぬ。

そうだな・・・ラースがイザベラを大事にしてるだろ?あんな感じにしないと傷付くんだ」

「んー・・・お姫様抱っこして移動するの?」


ラース・・・お前いつも何してるの?!


「そこまでしなくてもいいけど、スキルでガードできないから遊び方に気をつけてねってこと」

「遊び方ってー?」

「そうだな・・・ここなら釣りをしてもいいかもな」

釣りなら人を降らせる遊びより安全なはずだ。

釣り糸も糸作成で作れる・・・あ、針がないわ。


「えー?釣るよりスキルの方が早いよーほら」

ベクトールがクイッと手を動かすと、小川から魚が浮き上がった。



・・・ポテンシャルが違う!



持ってるものが違いすぎて常識が通じない。



「おいお前ら!」



見れば皮の鎧に身を包んだオッサンたち3人がこちらに近付いていた。

皮の鎧・・・別名作業着。

ツナギにヘルメットの服装はそれなりに高い守備力を持っているため、危険な作業をする職人たちに人気だ。


「か、勝手に魚を取るんじゃねぇ!」

「そうだ!これから冬で食べ物が減るって時に・・・」

「難民キャンプから出るな!」


どこかの作業員かと思えば、近隣の住民か。


確か井戸を使わせて貰えないって言ってたっけ。

国とか規模のでかい所と敵対になりすぎて、近隣の領民との仲が悪いの忘れてた・・・。


つーか、オッサンたち・・・目線が下向いてますよ?


勇ましい言動とは違い、手が胃のあたりを握りしめている。



「えー?何このおじさん」

「あはは!ねぇ、この人たちも上から落とそっか」

「それいいね!」


あははとオッサンたちを見る子供と、ビクッと肩を揺らすオッサンたち。


・・・もしかして、非戦闘スキルか?


「ひっ・・・アペリティフの魔物が・・・」


「ーーっ!誰が魔物です」


俺は1歩前に出た。

誰の領民が魔物だ!


「誰だお前は・・・」

「私はディートハルト・アペリティフ。我が領民を魔物という暴言は聞き捨てなりません」


俺が魔物かよ!って思う分にはいい。

でも他人が悪口として言うのは見過ごせない。



「おい、ディートハルトって・・・いなくなった領主の息子の・・・」

「ああ、マーサ様の息子のはずだ」


ん?何か目線が優しい。


「あの、なぜ我が領民を魔物だと・・・」

「あ、あぁ、すみません。この子たちに投げ飛ばされて寝たきりになった仲間がいまして・・・」


「・・・え?」


「ここにアペリティフ領民が来てから、食べ物や(まき)を奪われ・・・ジェスカ様が支援してくださるようになって被害は減りましたが、冬は厳しく・・・」


「・・・え?」


「『魔物使いのマーサ』と言われたアペリティフの聖女の息子であるディートハルト様が戻られたこと・・・心より安堵と喜びを」


スッ・・・と俺に跪き、頭を下げた。


「・・・」


この辺りに魔物は出ない・・・。

というか、お母様のスキルは魔物使いじゃない・・・。


その魔物・・・お父様たちだ!!

間違いない!!



「・・・みんな、あのおじさんたち投げたことある?」


「「「あるー!」」」


元気よく答えるのは偉いねー・・・。


「そうか・・・全員整列!ちゃんと謝りなさい!!」

「「「えーー!!」」」


えーじゃない!

なんて事してるんだ!



「それと、皆さん。寝たきりになった方に見舞いと謝罪をしたい。連れて行って頂けますか?」


オッサンたちは顔を見合わせ、ワタワタと首を振る。

「そ、そのようなこと・・・」

「もしあいつらに知れたら誘拐だと誤解されるんじゃ・・・」



「当たり前だ」

気付けば後ろにお父様や自警団が立っていた。



「ひっ!!ご、ご子息には何もしてないぞ!!」

「い、井戸だけは勘弁してくれ!水を浄化する装置もスキルも、うちにはないんだ!!」

「これ以上壊されたら冬が越せない!!」

バッと土下座で泣き事を言うオッサンたち。


「お父様・・・この人たちに何したんですか?」


「・・・・・・何も」


はい嘘ー。目を逸らさないでー。


「とにかく。被害にあった方を見舞いたいと思います。必要であればフォーリット教会へのお布施代を支払う用意もあります」


生まれてすぐにフォーリット教会に保護された回復スキル持ちは、そのままそこで教育を受けたり、職についたりする。

お布施さえ払えば誰でも回復スキルは受けられるのだ。


領民の躾は領主の責任。

領主の責任は家族である俺の責任!

ここは俺が自腹を切ろう。





オッサンたちに付いていくと、何故か館に連れて行かれた。


「ここ・・・すごく広いですね」

古いがきちんと手入れされた草木が並ぶ豪華な庭園が広がっている。


「あ、はい。ここ領主の館ですから」

「・・・うん?」

何故投げ飛ばした相手の見舞いに・・・まさか。


「まさか投げ飛ばした相手って領主様では・・・」

「い、いえ!違います!」


よかったー。

違ったか。


「投げられたのは1番上の兄で、領主は末の弟でございます」


「・・・うん?」


この人たち・・・作業員だと思ったら領主の兄弟かよ!!

しかも投げた相手は領主の兄!

マジか!!


「なぜ皆さんは作業着・・・いえ、平民の服装を?」

「その・・・こんな田舎ではありますが、貴族の端くれ。戦闘スキルが家を継ぎ、我々は領民として生きるよう定められているのです」


「そう・・・なのか」


「と言っても困ったらこうして気兼ねなく館に入れてもらえるので。他の地域では捨てられてもおかしくないことを考えれば、恵まれた方です」


生まれた地で生きられる。

それだけで恵まれている・・・か。


「優しい領主様なのでしょうね」

「ええ。自慢の弟ですから」

ニコッとオッサンが笑う。

ようやく顔を上げてくれた。




「り、領主のバーデン・ノイスタッドにございます。アペリティフ領主様並びにディートハルト様のご来訪心より・・・」

オッサン自慢の弟が、脂汗を流しながら挨拶している。


まぁ、そりゃあね。

いきなり隣の問題児が先触れもなく現れたらビビるよね。


「先触れも出さずに訪問したことをまず詫びたい。今回の訪問は、我が領民が怪我を負わせた者への見舞いと謝罪です」

「そ、そうでありますか!お手を煩わせてしまい申し訳ございません」


いや、なぜそっちが謝るし。


「つかぬ事お聞きしますが、なぜフォーリット教会に行き、回復スキルを受けないのです?」


「その・・・ご存知かと思いますが・・・戦争での避難を優先され、西側の回復スキル持ちは全て主都か国外に移動されまして・・・」


「なっ!」

なんだって!

それじゃあこの辺りに回復スキル持ちはいないのか!



「ふん。西側の怪我人より回復スキル持ちのが大事なのだろう。いっそ人の命には価値に違いがあると布教して回ればよいものを」


お父様が忌々しく吐き捨てる。


・・・いや待て、今回の怪我人、うちの領民がしでかしかことだからね。

戦争も教会も関係ないから!



「回復スキルではありませんが、回復するアイテムにツテがございます。良ければ本人の状態を見せて頂けませんか?」


「本当ですか?!助かります!ダン兄、すぐにトマ兄の所に!」

「領主様」

「あ!ごめんなさい。んん・・・ダンムント。すぐにトーマスの所に案内しなさい」

「畏まりました」

よく出来ました、と笑い合っている。



いい兄弟だ。



俺も戦闘スキルじゃないから領主にはなれないのかな・・・。


・・・こんな風に(シェリー)を支えていければいいか。




「失礼します」

ドアをノックして開けた先には、簡素なベッドが4つ並び、そのひとつにオッサンが寝ていた。


「ディートハルト様、この様な格好で申し訳・・・いっつ!」

「トマ兄、寝ててって。すみません、兄に説明したらどうしても起きると聞かなくて・・・」


「いえ、起き上がれない原因を作ってしまったのは我が領民ですから。領民に教育が行き渡らないこと、領主に代わり謝罪いたします」

「と、とんでもございません!頭を上げてください!」


起き上がれずワタワタと手を動かしている。

この領民はみんないい人ばかりだな。


「残念ながら回復スキル持ちがこの地を離れてしまったと聞きました。ですので私から回復アイテムを提供させて頂きたい」

「ほ、本当ですか?!」

「はい。効果のほどは試してみないとわかりませんが、できれば数日中にも用意できるかと」


ここでポジティブキノコ渡して、イノシシ肉おまけに付けて「美味しく炒めて食べてね!回復するよ!」でもいいが、できるだけ回復アイテムとして渡したい。


その方がカッコイイから!というのもある。


1番の理由はこの先ポジティブキノコを商品化できるか、ということだ。


できればあのポジティブモードを抑えて、戦闘中でも即座に効果を発揮するようなアイテムに加工して売りたい。


この人には申し訳ないが、薬の効果を試させてもらおう。


・・・こんないい人たちを騙すというか、状況を利用するようで少し気が引けるけどな。




薬を持って改めて訪問することを伝え、俺たちは難民キャンプに戻ってきた。


「ポジティブキノコを副作用なく、アイテムっぽい感じにしたい!」


使ったらピカーン!って光って、回復するアイテムが欲しい。


ザ・回復アイテム!



「アイテム化かー。どうやるの?」

「・・・俺にもわからないが、とりあえずオイル漬けにするか?」

「え?なんで料理するの?」


なんだその顔は。

ラースみたいに生で食べる気か?


「口に入る物だからな。不味いの嫌だろ」

「えー思ってたのと違うー!何かこう、粉々にするとか!・・・うーん、普段アイテムなんて使わないからわかんない・・・」

テオドールがキノコを片手に首を傾げている。


そりゃ魔石食べて回復するやつには不要だろう。


俺も回復アイテムなんて高級品は見たことがない。


どうやったらアイテムっぽくなるだろう。



「とりあえず粉砕させればいいんですよね?貸してください」

自警団の1人が出てきたのでキノコを渡した。


ズガッ!


柔らかなキノコから発したとは思えない音が響く。


「粉砕するだけなら簡単ですね」


さすが戦闘スキル。

まな板の上でキノコが粉々になった。


・・・このスキル、人に当てたらとんでもない事になるよな。



「ねぇディー、粉薬ってどう使うの?」

「ああ、粉薬は鼻に管をさして、一気に吸う」

こう!と鼻に麦の茎をさしてみせる。


「え?!坊ちゃん、それヤバい粉の吸い方です」

エスロットがダメ絶対!と俺から茎を取り上げた。


「え?・・・じゃあ粉末を練ってタバコに混ぜて、火を付けて吸ってみる」

タバコと一緒に煙を吸うんだ。


「坊ちゃん、それもダメ絶対!」

「ディー・・・奴隷商でどんな仕打ちを・・・」

ギュッとお父様に抱きしめられたが、なんの事だ?



「薬の吸い方なんて他にありますか?」

「ディー。薬の吸い方じゃなくて、飲み方はないのか?」


ああ、粉薬の『飲むやつ』か。


でも粉薬って飲みにくいし、戦闘中に飲んでいたら零れてしまうかもしれない。



考えていると、テオドールがぽん!と手を叩いた。


「そうだ!圧をかけて(タブレット)にしたらいいんじゃないかな!」

「タブレットか。確かに良いな。噛み砕いてもいいようにミントの粉末を混ぜても面白そうだな」


気分も息も爽やかになりそうだ。


「あー噛んだらキノコ味とか嫌なんで助かります」


自警団、好き嫌い多いんだな。



「あとキノコのピロシキ作って、時間停止のマジックアイテムに入れておけば回復にも軽食にもなるな」

「料理に使うの諦めてないのか・・・」

お父様たちが困惑した目を向けてくる。


だって見た目も味もキノコだもん。

料理しないでどうする。


「パパさま、キノコのピロシキってどうやって作るの?」

「キノコのピロシキはマヨネーズでキノコを炒めてパンタネに包んで焼くだけでできる。他にも肉を包んで焼いても美味しい」

「わー!美味しそう!」


ピロシキは油で揚げてもいい。

でもホール大陸で売っていたのはオーブンで焼くタイプだったから、今回は懐かしの味を再現したい。



「ふむ。・・・それなら買い物に行くか。色々必要なものもあるからな。ディー、ウィッグを被って行きなさい」


魔王騒動があってお尋ね者になっているだろうから変装するのは当然だろう。


・・・変装?


「つまり・・・女装ですか?」


俺にスカートを履けと?


「坊ちゃんならヅラだけでも上出来です」


それ褒めてないよね!?

あとヅラじゃない、ウィッグだ!


「テオドール様とヨルヨンは残って頂きたい。あまり大勢で行くと目立ってしまいますので」

「うー・・・わかりました」

「ヨルもわかった」

しょぼんと項垂れるヨルヨン。

お土産に子供らしいおもちゃでも買って帰るか。



「ラースはまだキノコの成分が抜けていない。一緒に行けないから護衛は・・・ソフィア。行けるか?」

お父様がソフィアを指名する。


「ソフィアはメイドの仕事があるでしょう。それに危険なことはさせられません」


「察してくだせぇ。ミハイルのやつ、マーサ様そっくりの坊ちゃんの隣に男歩かせたくないんですよ」

「エ、エスロット!余計なこと言うな!」

「へいへーい。そういう事で、ソフィアよろしくな」

「わかりました」

了解でーすと軽い返事だ。



「アメリアちゃんはどうするんだ?」

いまだにソフィアの胸に抱かれた小さな赤子がいる。


「もちろんお姉ちゃんの所に置いていくよ。あ、ラースが甘えてるから、ヤキモチ泣きするかもねー」


甘える旦那と泣く赤子を同時にみるのか。

キノコの効果時間もハッキリしないから、イザベラには申し訳ないな。


「・・・それより、ソフィア」

「なに?」


「・・・アメリア抱っこしていい?」


揺れるしっぽが俺を呼んでいる。




存分にモフりながらイザベラたちのテントに向かう。


「あぷ!」

「ふふふ。アメリアちゃんくすぐったいなー」


フワフワなうぶ毛が生え揃った猫耳。

触るとくすぐったそうにピョンと耳が動いた。


赤ちゃん特有の甘い香りもする。

どこを触っても柔らかい!


「よく泣かないねー」

「赤ちゃんなら奴隷商で何度も抱いてたからな」


イザベラの猫耳としっぽもモフりがいがありそうだが、あれはラースのだから諦めよう。




モフモフしながら少し歩くと、ソフィアたちのテントが見えてきた。


「お姉ちゃーん。入るよー。・・・入るからねー!」

「あらいいわよー・・・ふふ」


中から返事があるが、ソフィアはテントをめくろうとしない。


「どうした?」

「うー・・・ま、いっか」

ソフィアは意を決したようにテントをめくった。



「あー坊ちゃん!俺も猫ですニャー!」


「「・・・」」


テントの中でラースが膝枕されていた。


緑の猫耳付きで、だ。


思わず目を細めてしまったが、ソフィアは軽くため息をつくとアメリアを連れてテントの中に入っていった。



「町まで買い物してくるんだけど、お姉ちゃんラースの面倒とアーちゃんの面倒一緒に見れる?」

「大丈夫よ。ね、ラース。いい子にできるわね?」

「もちろんニャー!」


ニャー?!


ソフィアが自分の鞄を掴んで戻ってきた。

「じゃ、行ってくるね。ほら、ディー君行くよ」

「あ、あぁ・・・」


ニャンニャン言うラースから無理やり視線を外し、2人でテントを出た。




「あれはひどい・・・」

気分が上向くキノコだと思ったが、ハメが外れるキノコだったのだろうか。


「まぁ・・・いつもよりベタベタしてるよね」


いつもベタベタしてるのか。

どこまでがキノコの効果なのかわからん!!


「ソフィア、居づらかったら別のテント用意してもらうから言ってくれよ」

「ありがとー。まぁでもこんな状況だから贅沢言わないよ」


ソフィア、いい子だな。

俺ならすぐ別のテントに逃げるぞ。


留守番するテオドールとヨルヨンだけじゃなく、ソフィアにもご褒美に何か買ってあげよう。


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