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ソーイングスキルで目指せ魔王様~その魔物、俺たちのハンドメイド~  作者: あーちゃんママ
第10章 アーステア大陸
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隠しダンジョンの魔物退治

ジェスカが帰った翌日。

俺たちは魔物を倒すため隠しダンジョン最下層に向かっていた。



「ちゃんと魔石できてるかなー?」

「さぁな。できてなかったらまた作って、今度は3日待てばいい」



まだエレベータが完成していないから、みんなで階段を下る。

住宅街となった3層を過ぎると畑の広がる4層、5層と緑豊かになっていく。

6層を過ぎるとまだ整備がされていないから薄暗くなっていった。


7層までくると、足がフラフラする。

「坊ちゃん、担ぎますか?」

「・・・大丈夫だ」

帰りはお願いするけどな。



昨夜は『魔王降臨!マーサ再来!』と祭りになった。

俺は飲みすぎでフラフラしているんじゃない。

女装させられてあっちこっちに引っ張られたせいで疲れたんだ。

主に精神的に。


そして女の敵になったせいだろうか。

解呪の指輪がずっとピコピコいってて眠れなかった。


疲労と寝不足・・・俺が何をしたって言うんだ。

魔物の収穫が終わったら二度寝しよう。




「さて着いたな。・・・魔物はあれか」

薄暗いダンジョン最下層の8層。

入口でお父様たちが剣や農具を取り出した。


俺には薄暗くてぼんやりとしか見えない。

みんな身体強化のスキルで目や耳を強化したのだろう。


「俺も確認します」

俺も見たい。

倒される前にこだわり抜いたあみぐるみたちに一目会いたいんだ。


自警団たちの脇をぬけて前に出て、薄暗がりの部屋に目を凝らす。



ぴょんぴょん跳ねる影が見えた。

あれはきっとウサギ・・・ん?


あみぐるみの丸っこさを残しつつ、人の子供くらいの大きさのウサギだ。

多分銀色鉱石をたくさん使ったせいだろう。


そんなことより額の真ん中。

ウサギに角が生えている。


白くてまっすぐ伸びた角は陶器のような輝きを見せながら鋭く尖っている。


なんで生えたんだろ・・・。

・・・うーん。可愛いからいっか。



次に見えてきたのはクマだ。

ウサギと同じくらいの大きさで、逆に可愛い。


・・・が、鎌のような鉛色の爪が3本ずつ生えている。

しかも爪が重たいのか、引きずるように二足歩行をしている。


動きがヨタヨタとしていて、今にも転びそうだ。


なんで生えたかはわからないが、こちらも可愛いから問題ない。



さすが俺のこだわり達。



あ!奥に何かふわふわした物が浮いている。

きっとタヌキだ。


ここまで変わり者ばかりなんだ。

浮いてるくらいで驚かない・・・え・・・。



・・・・・・タヌキ・・・お前は何があった。



身長が5頭身くらいに伸びている。

あみぐるみとしての原型はなく、ふわりとした服を身にまとい顔つきも人の子供のようだ。


柔らかそうだが引き締まった腰、そしてカボチャパンツを履いた丸いお尻。

黒い二の腕まである手袋と黒いソックスを履いている。



靴下には色んな種類がある。

『ニー』とは膝だ。

膝を中心に夢と種類が広がっている『ニーソックス』略して『ニーソ』。

その中でもスカートとの絶対領域(すきま)を出現させる『ニーハイソックス』略して『ニーハイ』がある。


膝を隠さない『ハイソックス』

膝を隠す『ニーソックス』

絶対領域を出現させる『オーバーニーソックス』や『サイハイソックス』がある。

タヌキの履いているニーハイはオーバーニーだな。

この違いはセンチで定められている。

絶対領域が広めなのが特徴だ。



ずり落ちやすいオーバーニーを履きこなすとはな。

あれはストレッチ素材を使うかリボンで止めないといけないが、タヌキの細く健康的な足からずり落ちる様子は見られない。


そしてしっぽはあのこだわりのまま、ふんわり膨らんで重力を感じさせない。

ふよふよと誘うように揺れている。



手足の黒いコーディネートとふわふわなしっぽ・・・タヌキ、可愛すぎだろ。




「いつもと違うねー人の子みたいなのもいるー」

「あれはタヌキだ。・・・もしかしてすごく強いとかないよな?」

「んーどうだろ?僕も始めて見るタイプだからなー」

テオドールも見たことないのか。

いや、そもそもこいつはどのくらい魔物について知ってるんだ?


「あ!タヌキが地面触ってるよ!」

「え?どこだ!」


タヌキがペタンと床に座り・・・。

床をなでなで・・・。


ぴょこ!


なでた床からキノコが生えた。

タヌキがニコニコとキノコを見つめている。


うむ。可愛いな。


「何でキノコ生えたんだろー?」

「確かタヌキって尻尾を振って空を飛んで、キノコが大好きな生き物なんだよな」

「え?そんなの初めて聞いたよ?」

「マリネシスターズ3を知らないのか。悪魔クックをしっぽアタックで倒すんだ」

普通の料理本だが内容が面白く、シリーズ化した名作だ。

ホール大陸の奴隷商では全巻揃っていた。


「へー初耳ー!キノコ食べるとどうなるの?」

「マリネが食べると身体強化が得られていたが・・・あのキノコはどうなるんだろうな」

効果もそうだが、味が気になる。





「ふむ。とりあえず全部倒して確認するとしよう。ディーはここにいなさい」

お父様たちが部屋へと進んでいく。



そうだった。

これ全部倒すんだよね・・・ちょっと悲しいけどお別れだ。




スっとお父様が片手を上げると、自警団たちが左右に散らばる。


「陣形を乱すな・・・ゆくぞ」


お父様が剣を持って飛び出していく。

気付いたウサギがぴょんぴょんとお父様に向かっていった。



前方しか見ていないウサギに、左右にいた自警団がまかさり)を振り下ろした。


「ぎゅい!!」


苦し紛れに首を左右に振って角を振り回すが、リーチの長い自警団には届かない。


ウサギの前にお父様が立ちはだかる。


次の瞬間、ウサギの首が飛んだ。


「おぅ・・・」


うん、変な声が出たけど俺は大丈夫。

素晴らしい連携だったな。うん。



クマはその爪の重さを利用して飛び上がるとラースを捕らえようとした。


しかし、その姿は残影をのこしてその場から消える。


「がぅ!!」


着地したクマの背後には(なた)を持った自警団が飛びかかっていた。


ズガッ・・・ドガッ・・・。


滅多打ちにされ、クマが地面に倒れ込んだ。


「はぅ・・・」


おっと、また変な声が出てしまったが俺は大丈夫だ。

ラースたちの戦いに見とれていただけだ。

絶対にそうだ。



タヌキはふふっと妖艶に笑うと驚くような跳躍によりエスロットの目の前まで飛び、距離を詰めた。


「キャゥ!」


タヌキは黒いオーラのような気体を拳にまとうと隊長めがけて突き出し・・・カウンターで吹っ飛んでいった。



「くふぅ・・・」


こだわり抜いたタヌキのしっぽが、吹き飛ばされながら揺れている。

俺は思わず手で顔を覆った。

お前・・・そのしっぽで攻撃するんじゃないのかよ。




「ふぅー討伐完了っすね。坊ちゃんが変な声だすからビビったっすよ」

「・・・あぁ、すまない」


わかってはいたが、俺のこだわりが詰まった魔物が倒されるのは悲しい。

想像していたより精神的ダメージを食らってしまったようだ。

多分寝不足とか色々重なったせいだろう。


魔物は倒される宿命なんだ。

ウサギ、クマ、タヌキ・・・君たちのことは忘れないよ。





タヌキたちが倒れた先で黒い靄が晴れると、銀色のあみぐるみと魔石が落ちていた。


「銀色のあみぐるみ・・・おお!魔力通すと光る!」

「じゃあこれ全部ミスリルになったんだね!」

「・・・あ!やっぱり中身の綿は消えてる。何でなんだろ?」


まぁいいか。

ちゃんとミスリルが手に入ったんだし。

糸作成スキルで毛糸玉にしてしまえば元が何であったかバレる心配もないだろう。



「ん?これ緑っぽい!」

タヌキの魔石を拾ってテオドールが驚いている。

「珍しいのか?」

「青は普通。黄色のが強い。緑だからその途中かなー」

魔石にそんなランクがあったのか。



「青い魔石が2つに緑の魔石が1つ。ミスリルが毛糸3玉か」

「緑の魔石やミスリルって、なんで作れたんだろ?お父様もたまにできるって言ってたけど・・・何か変わったことしたかな?あみぐるみも姿が変わってたし」

テオドールがうーんと首を傾げている。


「ミルドレウスに聞いてみたらいいんじゃないか?」

「えー・・・だって何でもすぐ聞くのって変かなーって・・・」

遠慮というより、手を借りずに1人前になりたいのだろうか。

テオドールなりの意地とか見栄でもあるんだろ。



「まぁ緊急性もないし、困ったら聞けばいいんじゃないか?とりあえずキノコも採取するか、美味しそうだし」

よく見れば奥の床一面にキノコが生えている。

薄暗いからよく見えないが、茶色の笠に白い茎。

美味しそうな見た目だ。



「パパさま、食べるの?」

「せっかく毒無効の指輪もあるからな」

ぷちっと収穫すればキノコの香りがふわりとしてきた。




俺たちはキノコを収穫し、ダンジョンを出て調理場に来た。

「ディー、それどうやって食べる?生?」

「火は通したいな・・・マリネにするか」

マリネシスターズに出てきたキノコもマリネされていたんだ。


「マリネってレモンとかかけるんだっけ?」

「それでもいいが、キノコの味がわからないからオリーブオイルとハーブを絡めるだけにするか」

つみたてのハーブと香草を準備し、鞄から胡椒と塩、オリーブオイルを取り出した。



キノコをざっくり切ってフライパンに敷き詰める。

「先に焼いてから油を入れると、キノコが必要以上に油を吸わないから美味しくできるんだ」

熱したキノコから水分が出るタイミングでオリーブオイルを入れ、ハーブと香草、塩胡椒で味付けをする。



「できた。キノコのマリネだ」



あの本にでてきた料理を食べれる・・・ちょっとテンション上がるな。



皿にそれぞれ1本分のキノコのマリネを盛り付けた。

「パパさま、ヨルも食べる!」

「わかってるよ。一緒に食べよう」


後ろから孫になんてモノ食べさせるんだ!と視線を感じるが、ここで仲間外れにはできない。



「「「いただきます!」」」



お祈りを済ませ、フォークで口に運ぶ。


「・・・おいしいです!」

ヨルヨンがむぐむぐとキノコを頬張っている。


マリネは温かくても美味しいし、冷ましても味が染みてて美味しいんだ。


「美味いが・・・特に変わった様子は無いな」

強いていえば少し疲れが取れた気がする。

「誰も怪我してないから回復するかもわからないねー」

怪我が治るのなら、恐ろしく高価なキノコになるな。




「・・・んー、これお父様に何なのか聞いてみよっか」

それ、やれるなら食べる前に提案してくれ。

「なんでさっき聞かなかったんだよ。まぁいいか。俺もあみぐるみ作ってこよう」

「ヨルね、ヨルね、みんなと遊んできたい!」

「いいんじゃない?遊んでおいでー」

「うん!」

お片付けを済ませて走り出して行った。


今までテオドールにくっ付いていたが、色々我慢させてしまっていたのだろうか?

ま、子供らしくていいな!


「テオ、銀色鉱石くれるか?」

「いいよー!えい!」

ぽん!と銀色鉱石が作り出される。


「あれ?いつもよりツヤツヤしてないか?これそのまま魔物になりそうだぞ」

「え?!そう!?嬉しいな!」

「喜んでるところ悪いが、俺の手の上でなったら困るぞ。とりあえずダンジョン戻るか」

「うん!僕もエレベータ完成させてくる!」

「あはは、その前に最下層の整備と小部屋作ってくれ」

「そうだった!ははっ」

あははと笑いながらダンジョンに向かっていく。



何だか口が軽い。

いや、体が軽いのか?

これがキノコの効果だろうか?




最下層の小部屋。

俺はぬいぐるみを作っていた。

あみぐるみばっかりだとバリエーションがないからな!


そろそろ本格的な冬になる。

ぬいぐるみに雪の結晶を刺繍したり、花の刺繍を入れたり。

温かな春が待ち遠しいな!


こうして魔物を作って、こっそり稼いでみんなと暮らして・・・あ、シェリーも隠れてるんだった。

シェリーも隠れたりしないでここに住めるようにしよう!


たくさん話したいことがあるんだ。


前に言いたいことは言葉にした方がいいとテオドールに言われたが、全くもってその通りだ。



何だか気分がいい。

こんなに穏やかな気持ちで魔物作り・・・いや、ぬいぐるみたちを送り出せるなんて。

俺は幸せ者だ。





「・・・ディートハルト。またやってくれたそうだな・・・」


何故威圧。

ラースが呼びに来て小部屋から出てみれば、魔力垂れ流すミルドレウスが立っていた。


「テオから連絡が来た・・・まさか得体の知れないキノコを食べるとは・・・」

「美味しそうだったのでつい。それに毒無効の指輪もあるので!」

「はぁ・・・よいか、これは【カタルシスの粉】と同じ成分が含まれているようだ。人が口にしていい食べ物ではない」


まるで教師が教え子を叱るように難しい言い回しをするんだな。

先生、知らない単語が出てきたよ!


「カタルシスって何ですか?」

「浄化のことだ。精神異常を治す薬と思えばいい。そんな物を食用にするなど・・・」

「おー!それは凄い!薬になったんだ!」


難しいことはわからないが、売ったらお金になりそうだ!

お金貯まったら領土(アペリティフ)買い取ったりできるんじゃないか?


「よいか、そのー」

「お父様!エレベータ作れたんです!見てください!」

きゃっふー!と浮かれたテオドールと、エレベータを持ち上げてソフィアが現れた。


「テオ様、ここに置きますよ」

「うん!ありがとう!お父様、どうですか!」

「これは・・・ミスリルを使ったのか」

「はい!魔石の接続が上手くいかなかったのでミスリルでくっ付けました!」


高級素材でくっ付けちゃった!

技術がないから素材で補ったか!

俺もオーガンジー刺繍でビーズを縫えなくて、ノリでくっ付けたから人のこと言えないな!


「でもできたならいっか。おめでとうテオ!」

「ありがとうディー!」


いぇーいとタッチする俺たちを、みんなため息混じりに見ている。

そんなことよりお祝いしようぜ!




「ミルドレウスさま。息子たちはどうしたのでしょう?」

「ふむ・・・カタルシスの粉には抑圧していた感情を表に出しやすくする効果がある。

精神異常をきたしていない者が使っても泣き喚いた後リラックスするだけだと聞いていたが・・・」


「そうなんだ!」

「俺たち、かなり、楽しいよ!」

泣く要素が見つからない!



「パパさまー!おとうさまー!」

タタタッとヨルヨンが走ってきた。

「ヨルね!お友達できたの!遊んできたよ!」

「友達か!よかったな!」

「うん!」

笑顔が眩しいぜ!



「・・・キノコの成分にはカタルシスの粉の他、軽度の身体回復も備わっているようだ。少なくとも食用ではー」


「マジか!身体回復まで付いてるのか!」

「ディー!凄いね!」

「回復しながらポジティブになれる素敵なドーピングアイテムだ!」

うぇーい!と3人で輪になってクルクル回る。

何これ楽しいな!


「だから、食用ではないと・・・」

「名前付けないとだね!」

「パパさま!名前!」



「そうだな・・・よし、『上向きキノコ』だ!」



「「「「ぶふぅ!!!」」」」


お父様たちが吹き出した。

エスロットに至っては仰け反るように倒れている。


「えー?どうしたの?」

「どうしたのー?」

テオドールたちはキョトンとみんなを見ている。

わからないけど、みんなも楽しそうだ!



「キノコに上向きは反則っす・・・」

ラースがフルフルと震えている。

「・・・ミルドレウスさま、効果が切れるのはどのくらいかかりますか・・・」

「・・・3時間ももたないと思うが・・・」

お父様たちも顔を押さえてプルプルしている。

いつの間に仲良くなったんだろ!



「今度は豚肉と炒めた料理にしよう!」

「そんな名前のキノコ食べないから!坊ちゃん!落ち着いて!」


結局震えるみんなの総意でキノコの名前は『ポジティブキノコ』になった。


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