首狩りの剣
ミハイル視点
「おー光った光った・・・これ俺のー!」
光るミスリルの剣を片手に武器屋から駆け出す。
スキルを使えば俺に追いつく奴なんていない。
「おぉぉら待てガキィィ!!」
「え?うわぁぁぁ!!」
俺の後ろをマッチョなじじいが追いかけてきた。
普通に追いかけてきたわけじゃない。
大人の身長ほどある大剣を振り回しながらだ。
「ミハイルー!逃げ切れー!」
「ミハイルがんばれー!」
防具屋や食堂でバイトしている仲間たちが応援してくれている。
俺は町の屋根を飛び抜けていった。
俺は盗みをしている訳じゃない。
追ってきている髭のじじいが「持ち出せたらくれてやる」って言ったんだ。
誰が大剣片手に追いかけてくると思うんだよ。
「ぬん!!」
「あっぶね!!」
俺の首目掛けて大剣が通り過ぎた。
おいおい、まじかよ。
「話が違ぇ!返す!返すよ!!」
「なんでぇ、男なら最後までやり遂げろ!」
「ふざけんな!!」
ミスリルの剣を投げ付けるが、じじいは片手で受け止めやがった。
「せっかくかっこいい剣が手に入ると思ったのに、最悪」
「おーおー口の減らねぇガキだな。こんな上等な剣より鉄の剣で十分だろ」
「どうせ振り回すならミスリルの方がよく切れて面白いだろ。それに鉄の剣重てぇんだよ」
「ひ弱なガキだな」
「うぜー!」
これでも毎日鍛えてるんだよ!
俺はミハイル。
今年で10歳になる。
親は死んだ。
父が所属していた部隊の偉いやつが母の父親だったが、父はそいつに見捨てられた。
「父さんのいる部隊を置き去りにして逃げやがったんだ。だからこの剣でそいつの首を跳ねてやるんだ」
「おめー毎回その話ばっかだな。他に死んだかーちゃんから教わってねーのか」
「知らね」
母はこの話をした後自殺した。
話の真偽なんて知らないが、母がそうだと言ったんだ。
なら、俺はその無能な男の首を取るまでだ。
「武器屋は武器を売るのが仕事だ。誰の首取ってこようが関係ねぇが、とりあえず働きやがれ」
「へーへー」
俺は今戦争孤児として奴隷商にいる。
毎日の飯には困らないが退屈だ。
戦闘スキル持ちだからすぐ買い取られると思ってた。
なのに誰も俺を買い取らねぇ。
武器屋でバイトしながら、武器を買いに来たやつに「ついでに俺も買っていけ!」と売り込んでいる。
毎回じじいに殴られて買い手が付かねーけどな。
営業妨害しやがって。
バキッ!ゴキッ!
通りで音がする。
喧嘩だろうか。
「おい!何してる!?」
通りかかった男たちが子供を押さえ込んでいる。
「なにすんだよ!はなせ!」
「大人しくしろ!」
「ダメだ、こいつ死んでるぞ・・・」
どうやら喧嘩相手は死んでいるらしい。
「なんてことしやがるんだ・・・ミハイル、お前はあんなことすんなよ」
ポンっと頭を撫でられる。
は?何言ってるんだ?
「やるに決まってるだろ。相手殺さずに自分が守れるかよ」
じじいの撫でる手を振り払うと、仲間たちの元に走り寄った。
人集りをかきわけて覗き込んでみれば、ラースが足の先から薄緑色の髪まで赤く染めていた。
「そいつが食い物寄越さないからだろ!ぶっころしてやる!」
「ラース、そいつもう死んでるって」
「あはは、だよな。見たらわかるだろ」
奴隷仲間のエスロットとパルムも呆れた様子で見ている。
食い物くらい奴隷商に行けばあるだろうに。
またこの町の肉屋が1軒消えたか。
「またこの世代の犯罪だぞ・・・今月何件目だ」
「惨いことしやがる。見ろよ、あいつら笑ってやがる」
ヒソヒソと町の人間が俺たちに内緒話をしている。
身体強化すれば聞き取れるのに、よく目の前で喋るよな。
こいつらを祖父を殺す練習台にしてやるんだ。
早く俺だけの剣が手に入らないかな・・・。
「ここにいましたか」
影の塊が空から降りそそぐ。
影が四散すると、軍服に身を包んだ男たちが立っていた。
「・・・父さん?」
「君がミハイル、あちらがラース、エスロット、パルムだね。我々はカタラーゼ国公安省の者だ。一緒に来てもらうよ」
そいつは父の顔で、紳士のように笑った。
・・・目が笑ってねぇ。
スキルは父さんのものだが、こいつは誰だ?
「触んな!」
バシュッとラースが消える。
・・・が、影が網のように絡みつく。
「ぐぇっ」
「無駄ですよ。・・・これ以上手間をかけさせるな」
先程の笑顔はなく、鋭い眼光がラースを捉えている。
紳士っぽいのは装っているだけか。
「ミハイル・・・」
ラース、情けない声出すな。
見ればエスロットとパルムも俺の指示を待っている。
スキルが俺たちと相性が悪い。
と言うか、単純に強いし場馴れしてやがる。
「抵抗すんな。怪我させられるだけだぞ」
ここは無難にやり過ごした方がいい。
「話が早くて助かるよ。さぁ、みんな行きますよ」
俺たちは大人しくそいつらについて行った。
俺たちが連れていかれたのは変な施設だった。
鉄格子に、白い壁。
青い空が見えない分厚いガラス窓。
首には隷属の首輪。
しかも旧式のヤバいやつだ。
外せないし、命令違反で体に痛みが走る。
でも何かされるわけじゃない。
何人かのグループに分けられ、毎日授業を受けるだけだ。
教科書も普通だ。
【よくわかるダンジョン解説!誰でもなれる冒険者の進め上巻】
まぁタイトルは普通じゃないな。
勉強させて、俺たちを冒険者にでもするつもりなのか?
毎日勉強して、マラソンして。
あと自分たちで食べる野菜を育てる畑を耕した。
言うことを聞いていれば監視されるだけ。
そのまま1ヶ月が過ぎようとしていた。
「・・・退屈」
父っぽい奴にもあの日以来、会えなかった。
あいつは誰なんだろう・・・。
いつものように食堂に向かった時だった。
「なぁ!あいつ昨日から戻ってないんだ!」
「チッ・・・うるせぇな、首輪発動させるぞ!」
「うっ・・・でも・・・」
隣部屋の連中が見張りの男に詰め寄っていた。
数日前から何人か姿が見えない。
仲の良かった連中が騒いでいるが、首輪の痛みが怖くて気が引けている。
ま、俺には関係ない。
俺の仲間は消されるようなヘマはしない。
・・・はずだ。
「誰も消えるなよ」
振り返ってエスロットたちの顔を見る。
「当たり前だ」
「俺たち強いし、大丈夫っしょ」
「それな!」
俺たち4人なら大丈夫か。
どこでだって、なんだってできるだろ。
3ヶ月が過ぎる頃、パルムが消えた。
俺の命令でラースとエスロットが各部屋の鍵を壊して回る。
各部屋から出てきた連中が俺の前に並んだ。
ここに来た時の半分くらいになっていた。
今思えば、もっと早くやれば良かったか。
泣き腫らした目をした子も何人かいる。
「お前らついてこい」
「・・・言われなくても」
「よし。エスロット、お前今から隊長な。何人か連れて見張り連れてこい」
「おっけー。身体強化持ち3人と、ラース、ついてこい」
「「「「はーい!」」」」
残った連中と武器を調達してきたが、農具しかない。
鉈や鉞は数が少ないから、みんな鍬を装備している。
この3ヶ月使ってきたし、扱いやすいから装備しとくか。
「はぁ・・・こいつで相手の腹でも耕せってのかね」
「あははっ!ミハイル面白すぎ!」
くすくすと農具を持ってみんな笑っている。
エスロットたち、早く耕す相手連れてこないかな。
「3人もいらないな。1人耕せ」
「ひっ!ま、待って・・・あぐっ!」
エスロットたちが連れてきた見張り3人のうち、若いやつをみんなで耕した。
隷属の首輪は命令しないと痛みを与えられない。
命令する間も与えず、残りの2人は顔が腫れ上がるまで殴った。
「さて、解放してやるから答えろ。俺たちの仲間が戻らない。何があった?」
「し、知らない・・・頼む、殴らないで・・・」
「こいつは知らないそうだ。なぁ、お前は答えるよな?」
「ひっ!待ってくれ!俺はただ、実験体が逃げないように見張るだけで・・・」
「バカ!言うんじゃ「黙れ」
スキルで強化し、ぐしゃりと頭を潰した。
「さぁ、答えろ。実験体?ここはなんの施設だ?」
ガタガタと震えるそいつの前に立つ。
みんなも興味あるのか、見張りを耕すのをやめて静かに見ている。
「こ、ここは【フェンターク】。戦争中に使った強化薬の副作用で産まれた子の実験施設だ」
「強化薬?」
「ああ、あの薬を使うと一時的に魔力が上がってスキルが強くなるんだ。し、しかも産まれた子供も強いスキルを持って産まれる確率が高いとか、頭がおかしい奴が産まれるとか、色々・・・」
「そうか」
俺はそいつの頭を踏み潰した。
実験体、実験施設・・・。
そうか・・・パルムは戻らないのか。
それだけ聞ければもう用はないな。
「さて、みんな聞いたな。俺たちも、すぐここを出よう」
「ここを出て、どうするの?」
「そうだな・・・アーステア大陸に行こう。あの田舎、戦争中らしいし、もしかしたら貴族になれるかもしれないぞ」
「ねーミハイル、貴族ってなに?」
ラースが首を傾げている。
お前はここで何を勉強したんだよ。
「貴族ってのはな、偉くて・・・名前が増えるんだ。ミハイル・フェンタークみたいに」
とっさにさっき聞いた名前を付けたが、意外に合っているな。
「いいなー!エスロットもエスロット・フェンタークになるの?」
「ぶふっ・・・なんでみんな同じ名前なんだよ」
「まぁみんなで名乗ってもいいかもな。俺たち兄弟みたいなものだし」
「ねぇ私たちもフェンタークでいいの?」
「いいんじゃね?俺はラース・フェンタークだ!」
「なら私はベネッサ・フェンタークよ」
わいわいとはしゃぎ出す。
ここにいる42人全員が今日から俺の家族か。
「ったく、派手にやってるな」
「げっ!武器屋のじじい!」
いつの間にか大剣を持ったじじいが見張りの死体の隣に立っていた。
「なんでてめぇがここにいる」
「はぁー・・・いーから、さっさと移動するぞ。・・・あいつが戻ってくる前に」
シュッと大剣を振ると、隷属の首輪が音を立てて壊れた。
なんだこの剣技。
剣先が全く見えなかった。
大剣でこんな芸当ありかよ。
・・・いや待て、こんな強いのにいつも俺の首目掛けて大剣振ってたのか。
危ねぇな!
「さっさと荷物まとめてこい」
投げ寄越されたのは100kg収納の鞄だ。
俺たちは部屋に戻って荷物を引っ張り出した。
【農業の基本!種まきの時期から連作障害予防まで!別録、農具の使い方から保管方法!】
【商業のいろは!誰でもできる経済学!毎日のお買い物から始める貯蓄術!幸運のお財布付き!】
ずらりと並んだスキルアップの書。
冒険から農業、商業と様々だ。
まだ読んでいない本棚もある。
農業系の本には種が付録になっているのもあるし、スキルアップの書は全部持っていこう。
「集まったな、行くぞ」
夜に紛れて俺たちは施設を脱出した。
見張りはあの3人だけだったようだ。
普段いた見張りはどこに行ったんだろ?
町の屋根を飛び抜けていく。
身体強化できないスキル持ちはエスロットやラースたちが運んでいる。
「・・・なぁ、ここに連れてこられた時に俺の父さんに似てる奴がいたんだ。軍人として戦場にいる事が多かったから、あまり覚えてないけど・・・」
「・・・影使いのエルメルドだ。あいつは・・・あいつには二度と関わるな。絶対だ。いいな」
じじいの速度が上がる。
「あ、おい待てよ。お前らいそげ!」
見失うんじゃないかという速度で走り去るじじいを必死で追いかけていった。
船着き場に行くと若い船長が出発の支度をしているところだった。
「ほれ、これも持っていけ」
じじいはミスリルの剣と鞄を投げ寄こした。
随分使い込んだ、古い鞄だな。
「鞄の中に金と食料が入ってる。しばらくひもじいだろうが人を襲って奪うなよ。働け。大事な人を見つけろ。いいな」
「なんだよ、じじいも来たらいいだろ」
「・・・俺は一緒に行かねぇ。詳しい事は全部その鞄の中に記してある」
ポンポンと俺の頭を撫でると・・・背中の大剣を構えた。
「・・・名乗っていなかったな、ミハイル。俺が、お前の父を死に追いやった上司だ」
「・・・は?」
「俺が首狩りのアイザックだ。・・・構えろ、バカ孫。いいものをくれてやるわ!」
ぐわっと殺気が膨れ上がる。
「おおぉぉおお!!」
「くっ・・・この!」
俺はミスリルの剣を思い切り振り抜いた。
ドサッ・・・。
首を飛ばされたじじいの体が床に倒れ込む。
じじいは俺を切る気はなかったのか、大剣はその手から滑り落ちていた。
「なんで・・・」
ドクン・・・。
「ひゅっ・・・」
「どうしたミハイル?」
「・・・何でもない。息が上がっただけだ」
「そっか。なぁ、大剣貰っていいかな」
「・・・いいんじゃないか。もう使わないだろ」
エスロットが大剣を拾い上げた。
まだ伸びきっていない子供の背丈には大きすぎる大剣だが、そのうちちゃんと装備できるようになるだろ。
いつも大剣を背負っていたじじいの背中を思い出す・・・。
俺が・・・斬ったのか・・・。
・・・ドクン。
「なんか・・・気分わりぃ」
変な鼓動が混じるせいで指先が冷たくてじんじん痛む。
何がしたかったんだ、クソじじい・・・。
「・・・こうするしかなかったのかねぇ」
「誰だ!」
気付けばじじいの死体の傍にフードを被った男たちが立っていた。
1人がフードを取ってこちらに近づいてきた。
緑色のスカーフを巻いた白髪混じりのじじいだ。
「お前ら、さっさと船に乗りやがれ。カタラーゼ国で指名手配になるんだ。二度と戻るなよ」
スカーフのじじいの後ろで男たちが殺気だっている。
さっさと船に乗った方がいいだろう。
「みんな、行くぞ」
俺たちはじじいの用意した船に乗り込んだ。
朝日が差し込む船内。
俺は鞄から紙を引っ張り出した。
首を飛ばした時の感覚が手から消えなくて眠れなかった。
こんな感覚は初めてだ。
ぴらっと紙を捲る。
『復讐成功おめでとう。気分はどうだ?』
・・・最悪な書き始めだな。
自分から殺されに来るやつが、このテンションで書き始めるか?普通?!
・・・ほんとに、あのバカな行動の意味くらいは書いてあるのか?
俺は先を読み進めた。
『お前は先の戦争で使用された強化薬の副作用を持って生まれた。グレンデル症の子供だ。
感情の欠落、自身の保身と肉親への過剰な依存性、凶暴性が高く、スキルも魔力も戦闘向きで産まれてくる』
そんな事は聞いてない。
ページを捲る手に力が篭もる。
『強化薬に使われたのはマダラ草だ。ダンジョンに生えてる。使うな。
副作用だけじゃない。あれは心身に負担が大きすぎる』
そんな事も知りたいんじゃない・・・。
読み飛ばしたいが、あのくそじじいの言葉だ。
そう、最期の言葉・・・。
「なんだ・・・目が・・・」
目が熱い。
・・・夜中寝れなかったせいだ。
さっさと読んで二度寝しよう。
『お前の親父は生きている。
だが、強化薬を使いすぎて心は戦場から戻れなくなった。
記憶も曖昧になっていたからな。
だから死んだことにした。
そのせいで、娘が死ぬとは思ってもみなかった。
どんな化け物になっても、俺の娘が惚れた馬鹿野郎だ。
あいつの首をくれてやる気は無い。
俺の死後は、俺の仲間があいつを守ってくれる。
で、お前だ。ミハイル。
俺やお前の両親が強化薬を使ったせいで、お前をまともに産んでやれなかった。
だが後天的に感情を足すことができる。
心が通い合う身内の死だけが、お前の心を揺さぶってくれる。
俺は強化薬をこの国に広めた責任がある。
強化薬のせいでお前くらいの子はみんなグレンデル症を持って産まれてしまった。
お前らの人生ぶっ壊しておいて、のうのうと生きる気はねぇ。
それにまともになったお前に会う気はない。
俺の今までしてきたこと全て。
感情が揃ったお前に断罪されるのが怖い。
いつか、お前は俺を憐れむだろうか。
ま、死ぬ人間にはどうでもいい事だ。
俺の仲間が墓くらい作ってくれるだろ。
いつか家族ができたら見せにこい。
追伸
お前のいた施設【フェンターク】での実験の内容は、魔石持ちの人間を作ることだ。
詳しい事は【じじいの遺書Part2】に記した。
もし読みたければホール大陸のダンカンってドワーフを訪ねろ。
勇者パーティーだったなんて寝言いってるが、腕は確かだ。
最後に
お前は愛される人間だ。
人として生きろ
愛している アイザック・カルシファ』
「なんだよ・・・遺書ぱーと2って・・・ははっ・・・」
ドクンッ・・・。
「え・・・あれ、息が・・・できな・・・」
何だこれ、目が熱い。
鼻が溺れた時みたいに痛い。
「なに・・・なんだ・・・」
じじいを斬った時から続いていた不調が一気に溢れ出した。
「なんで・・・なんで」
胸が締め付けられて息ができない。
今まで起きたことがフラッシュバックする。
『なぁ!あいつ昨日から戻ってないんだ!』
パルムが消えて、俺もあいつらと同じ感情がわかった。
これが・・・恐怖?
ガタガタと体が震えて、冷たい指先が痛い。
俺たちが殺した見張りも・・・こんな気分だったのか・・・?
『なんてことしやがるんだ・・・ミハイル、お前はあんなことすんなよ』
撫でる手が温かい。
それなのに・・・俺は振り払った。
温かい瞳が信じられない物を見る目に変わる。
・・・やめろ!
そんな目で・・・俺を見るな!!
「おいミハイル!大丈夫か?!」
気付いたら船の中に戻されていた。
隣にはエスロットとラースが半泣きで俺にしがみついている。
「ミハイル死んじゃうの?・・・やだ」
「・・・死なねぇよ。じじいの遺書読んでたんだ。・・・あいつ、俺の・・・家族だった」
「そうか・・・ん?家族だからどうしたんだ?」
ラースとエスロットが顔を見合わせている。
「あーそっか、家族って殺すと『くる』よねー」
「うん、僕もお父さん殺した時泣いちゃったよー」
どうやら経験済みの子供もいるようだ。
その中に隣部屋にいた子供もいた。
「あの施設にいたみんな・・・家族だったんだ。・・・なんであの時、お前らの家族を探しに行かなかったんだろ・・・ごめん」
「やめてよミハイル・・・あーもう!こっちまで痛くなるよ・・・」
お互いボロボロと涙が出る。
「うっわ!泣くなよミハイル・・・うぇ?!痛い!」
ラースも涙が溢れていた。
気付けば周りのみんなも痛い苦しいと泣いている。
「ねー俺こんなに辛いなら家族いらない・・・」
ラースが泣きながら俺のシャツで涙を拭っている。
「まぁ、俺たちみたいなの家族にしてくれる人なんていないだろ」
エスロットも俺にしがみついて顔を上げようとしない。
いい人見つけろだと?
やだね。
これ以上、こんな呪いみたいな感情いらない。
遺書Part2だと?
まずはこいつらと生きることが先だ。
「アーステア大陸に着いたら・・・みんなで解呪の指輪作るか・・・」
「賛成、みんなでお揃いにしよう・・・」
この呪いみたいな感情が少しでも消えるといいな。
船は静かにアーステア大陸を目指していった。




