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ソーイングスキルで目指せ魔王様~その魔物、俺たちのハンドメイド~  作者: あーちゃんママ
第6章 出会いと船旅
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帰省の知らせ

「今日はでかい船が来ているんだな」

船着き場に4階建ての建物のような船が止まっている。


「あぁ、【ウォルトア】大陸の船だな。上級ダンジョンの噂を聞きつけて調査に来たんだそうだ」

俺たちの仕事が海を渡って評価されている。

ちょっとにやけてしまう。


「それは凄いな」

「ま、あまりよろしくはないな。自分とこの魔石と比べて品質が良ければ、下手すりゃ戦争だ」

「・・・そうか」

あーやだやだとシーフードを詰めてくれる日焼けの男。



魔物を出現させれば、戦争が止むと思ったのに・・・。

俺は自分の頬を両手でパンっと叩く。

またネガティブになっていた。


戦争なんて持ち込ませない。

俺はそんなことさせないんだ。


まったく・・・朝からやな事考えたなー。

忘れよ。



今日も大量の布と食料を買い込んでいく。

この1か月で魔石の取れる街、魔王の復活した町として賑わいを見せている。

「魔王も大好き主食パン」の店は「魔物も大好きおかずパン」と商魂逞しく種類を増やしていた。



「あ、ディーお帰り、手紙がきたよー」

「は?俺宛か?」

「ううん、僕宛てだよー」

テオドールの手には1輪の花がある。


「俺には花にしか見えないんだが?」

「これはノームの末裔が使う連絡手段だよー」

こうするの!と顔を近づけているが、どう見ても花の匂いを嗅いでいる貴族にしか見えない。


「まぁいいや。で、なんて書いてあったんだ?」

「お父様がここでの活躍を聞きつけたみたい。ディーのこと紹介したいから少し出掛けようかな。場所は【ウォルトア】大陸の【ライト山脈】だよ」

大陸に行くために海を越えていく必要がある。

そんな大掛かりな旅を「少しお出かけ」って・・・。



「また急な話だな。それにダンジョンはどうするんだ」

保護団体がいるとはいえ、ほぼ毎日冒険者が狩りに来ている。

「うーん、それなんだよね。僕習得してないスキルがまだまだあってね。ダンジョンをずっと見てなくていいスキルもあるんだ」

つまり自動湧きか。それは便利だな。


「僕早く旅に出たくてね、お父様に無理を言って修行を途中で投げ出してるんだ」

修行を途中で投げ出したから魔物が作れないんじゃないのか?と疑問に思ったが口には出さない。


こいつはこいつなりに理由があって動いているのだろう。

・・・常識はないけどな。


「往復3ヶ月くらいだと思う。小部屋に魔物ため込んで、時間差で壁が壊れるようにすればいいかなー?」

せっかく魔物が出るようになったと喜んでいるのに枯渇してしまっては悲しまれるだろう。

「準備はするけど、足りなければダンカンに頼めばいいだろ。冒険者が死なない程度の魔物作ってくれって」


「えーせっかくできるようになったのに。また頼るのー?」

「別にできるからって全部自分でやる必要ないだろ。ほら、準備するぞ」

いつもと同じように俺は針仕事を始めた。

そういうものなのー?と首を傾げているが、テオドールもすぐに準備に取り掛かった。





準備に2日ほどかかったが、小部屋に詰め込んだ魔物がウゾウゾともがいている。

あとは壁が壊れて自分たちで出てくる寸法だ。


ダンカンに頼んだらウォルトアの地酒とつまみで手を打ってくれた。

いい酒を土産にできるよう現地で確かめて買わないとな。





「船でかーい」

2日前に港で見た大きな船。あれに乗るらしい。

食事も船が出してくれる。

チケットは1人片道金貨3枚だった。


銅貨10枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚になる。

テオドールに言ったら「そーなのー?なんでー?」と驚いていた。


「庶民には銅貨と銀貨しかほとんど出回っていない。どれだけ持っててもスキルが付与された硬貨は重さゼロだからな」

「そうなんだ!」

普段は金貨で買い物をしていたらしい。

どおりでチップに金貨を渡すわけだ。





あとは出発まで時間を潰すだけだ。

何があるかわからないから、船着き場で携帯食料を1週間分買う。


「ねぇあんたたち、ウォルトア大陸まで行くのか?」


振り向くと褐色の美人が立っていた。

「船旅とはいえ用心棒は必要だろう?戦闘スキル持ちなんだ。雇ってくれないか?」

俺はテオドールと顔を見合わせる。


戦闘スキルのない俺。

テオドールも船旅ではノームの土属性魔法がどこまで行えるかわからない。


「・・・報酬は?」

「ウォルトア大陸までの運賃と食事代、それに銀貨70枚でいいよ」

でいいよと言うが、1週間の長旅だ。

全部で金貨4枚にはなるだろう。


しかし、いかにも貴族風な男が2人で護衛もなく歩いていたら格好の餌食になるかもしれない。

ここは安全に行くべきだろう。

テオドールにチラッと目線を送ると、黙って頷いた。

「契約成立だな」

「オッケー、じゃ仲間呼んでくるよ」



・・・は?この女一人じゃないのか?



俺は「社会の厳しさ」を教わる授業料が高額になるのを予感した。




「よろしくお願いします」

出てきたのは優しそうな雰囲気の眼鏡の男だった。

いかつい男がぞろぞろ出てくることも覚悟したが、これなら、まぁ許そう。




魔王は護衛を連れて【ウォルトア大陸】に向かって旅立った。

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