表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソーイングスキルで目指せ魔王様~その魔物、俺たちのハンドメイド~  作者: あーちゃんママ
第1章 プロローグ
4/101

剣となり盾となる

「―――なぜこんな急に!!」

玄関で発せられたその声は、屋敷中に響いた。

「わかりません!ですが、何より・・・」

「あぁ・・・わかっている。戦える者を集めよ。マーサ、子供たちを・・・」

お父様の堅い声が発せられると、お屋敷の使用人たちが走り出し何か準備している。



「アペリティフ領を含む国境領地がベラルーラからの侵攻を受けた」

僕らはお父様の執務室に呼ばれた。お母様は口を手で覆い青ざめていたが、シェリーは何のことかわからないようだ。

【ベラルーラ国】は【イルミティア連合国】の隣の国だ。


「イルミティアに生きるものとして、そしてアペリティフの領主として、この地を守る剣となり盾となる。戦闘に参加することは誉れであり、貴族としての義務である」

貴族である以上は戦闘に参加しなければならない、ということか。

それはきっと僕も同じことが求められるだろう。


この2年間の集大成だ。戦闘スキルがなくても―――――。


「・・・ディートハルト、お前は先発の荷物輸送の護衛を頼む」

お父様の言葉に、お母様が一瞬息を飲んだ。


(先発隊?もしかして最前線に行くのか?僕は・・・盾として役に立てるのかな・・・)


戦闘スキルでは無いとはいえ、国のために盾となることを求められたのだろう。

僕は震える手を握り締めた。

「先発隊は最前線で戦闘を行うのでしょうか?」


「・・・先発の荷物輸送だ。行先は、主都避難区域」


主都?避難区域?

「お父様、主都は前線とは逆で――――」

「今から行けば山越えも難しくはないだろう」

お父様は背を向け――――僕を見ていない。

「お父さ・・・」

「すでに荷物は積みこまれている。急いで向かいなさい」

「おと・・・」

「あぁ自分の荷物を忘れていたな。必要なものだけ持っていきなさい。もうここへは――――」



「お父様、僕に逃げろとおっしゃるのですね・・・」

まっすぐにお父様を見るが、僕には背中しか見えない。

「・・・そうだ。戦闘スキルのないお前はいても邪魔になる」

「・・・わかりました。ではシェリーも――――」

「シェリーは我々と行動を共にする」


信じられない言葉だった。

「なぜです?シェリーはまだ9歳です。戦闘なんてできるわけが・・・」

「【索敵】スキルがある。戦闘を優位に進めるために、我々には必要なんだ」



それ以上は言葉が出なかった。「必要」と言われる妹、「邪魔」な僕。



「・・・わかりました。すぐに向かいます」

一礼する廊下に飛び出した。

廊下を走っても今日は誰にも怒られない。

そのまま庭に見えた馬車への乗り込んだ。




――――俺はもっと考えるべきだった。両親への言葉を、妹にかける言葉を。

なぜ当然のようにまた会えると思ってしまったのだろう・・・。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ