脱獄
「・・・おい」
誰だよ・・・牢獄は音が響くんだ、静かにしろよ・・・。
「おい」
しかも解剖されるかもしれないだと・・・ふて寝だふて寝。
「起きろと言っている」
「はぇ?」
鉄格子の前に誰か立っている。
すっぽりと顔を隠すほどのマントを着た渋い声の男。
「・・・やっと起きたか」
そういうと男は鉄格子の扉を開け、
・・・中に入って鍵を閉めた。
出してくれるの?という淡い期待は裏切られた。何で入ってくるの?
「え?なんですか?え?」
「鉄格子を掴め」
だから、ぜんっぜんわかんないんだってば!
サイコ騎士といい、こいつといい、コミュニケーション取る気がない奴が多すぎるだろ。
「―――さっさとしろ」
「はい・・・」
凄むなよまったく。怖いだろうが。
「よし、どけ」
鉄格子を掴めと言われて掴んだら、今度は離せと。
全くわからん!と頭を抱えていたら、男は俺の手の位置にあった鉄格子を掴むと横に開いた。
グインと一瞬音が鳴ったが、すぐに静寂が戻ってくる。
男は壊した鉄格子から外に出ると、向かいのテオドールがいる檻に向かった。
俺の鉄格子が曲がった位置と同じ位置まで屈み、鉄格子を横に開いた。
「・・・お前の連れていた奴隷がこの檻を開けた。俺は見ていない。・・・外に馬がある。さっさと行け」
男は地上への階段を音もなく上がっていった。
「・・・何あれ?説明聞いてもいい?」
「あーオルソンだよ。いつも助けてくれるの。今回の言い訳はディーが檻をこじ開けた!だって」
あの強面のおっさんか。なるほどわからん。
「詳しくは後で話すよ。さあ行こう」
地下牢獄を出るとすっかり夜だった。見張りはどこにもいない。
門をこっそりと抜けた先には馬が二頭、隠れるように木に括りつけられていた。
「・・・俺馬に乗ったことないよ」
「偶然だね、僕もだよ」
何とか馬によじ登るが、座る前に馬が歩き出してしまう。
「あ、ちょっと待って、まだ座ってない」
「ディー助けて、うわっっ」
テオドールは座れたものの、馬が立ち上がり落とされていた。
乗馬の訓練をしておけばよかった・・・。
何とか座り直すと、ゆっくりと歩き出す。
「それで、どこに行くんだ?」
「うーん・・・知り合いのドアーフのところに隠れさせてもらおうかな。あそこならダンジョンも近いし。【バルバラ】って町のはずれにあるんだ」
「じゃぁ【バルバラ】に向かうか。行け!」
綱を持ち、軽く馬の腹を蹴ると、徐々に走り出した。
「うわぁ!すげぇ!俺風になってる!」
ガクガク揺れるが、明るくなり始めたおかげで遠くまで見渡せる。
「僕も初めて乗ったよ、すごい!速いね!」
テオドールと二人、【バルバラ】を目指した。




