俺たちの目標
馬車に揺られ段々と街の風景が遠のき、周りが木々だらけになる。
「ここから少し離れたところに初級ダンジョン【スタータの洞窟】がある、まずはそこでやってみよう」
テオドールは世界地図を見ながらウキウキしている。
「それは構わないが…戦闘スキルなしでホントに魔物を狩れるのか?」
勢い任せに来てしまったがいくら初級ダンジョンとはいえ最悪命が尽きるかもしれない。
腰に下げたゴブリンキラーだけでは心細くなる。
「うーん、無理なら人を呼び込んで倒してもらおう。倒さないと魔素を消化できないからね」
倒されてしまったら魔石を入手できない。それでは金が手に入らないではないか。
「何とか頑張って倒す方法を考えるか」
「前向きだねー」
「当たり前だ。俺には目標がある」
ふふん、と俺はテオドールに向き直った。
「魔石を手に入れれば大金持ちになれる。そうすれば自分だけじゃなくみんなも養っていける」
「おぉー」
「金だけじゃない。魔物を発生させれば人間同士の争いをしてる場合じゃない!と戦争が収まるかもしれない」
「すごいね!」
ぱちぱちと手を叩いてうなずいている。
「それに・・・俺の故郷に行って・・・家族探したり、もしできたら土地を買い取ったり・・・できるのかな、他国になっちゃったけど・・・」
ぶつぶつと呟くが、俺は故郷のことしか知らない。
お父様が15歳の頃に隣国との戦争があって勝ち取ったのがあの土地で、今回は取り返された形だ。アペリティフの歴史書なんて数ページ。
要約すれば「隣国の愚か者から豊かな土地を守るため戦った。でもあいつらすぐにちょっかいかけてきてうぜぇ」としか書いてない。
「ディートハルトは故郷を取り戻したいの?」
「まぁ・・・そうだな。でもまずは生きないとな。俺は金持ち・・・じゃなくて、魔王になる!」
大人の男なら夢と目標は大きく掲げないと。
「魔王!すごいね!魔王ディートハルト!」
「あ、でも俺一人だと魔物できないし魔王になれないな。よし、2人で魔王1人分だな。名前は二人のをとって・・・ドールハルト・・・いや、
ーーーー魔王【ドゥールバルド】だ!」
俺たちは馬車の中で目標を掲げた。
いずれ世界に名前を轟かせてやる!
魔王ドゥールバルドを乗せた馬車は初級ダンジョンへと近づいていた。