90.まだまだ先は長いぜ
数日が経過した。
厳密には時間感覚がないので、多分数日くらい経過したと思う、とすべきかもしれない。
あれからキメラを狩り、素材を錬金術で弄り回し、魂をスキルレベルの上昇に費やすという作業に明け暮れていた。
錬金術は新たに〈抽出〉を取得し、スキルは【魔力の極意】を目指すべく魔力系のスキルレベル上昇に注ぎ込んでいる。
さてキメラの牙と爪を加工した刀の試作第一号が遂に完成した。
品質は低く、とても霊刀を降ろせるような出来ではないが。
とはいえ霊刀から得た日本刀についての知識と、【鍛冶】【作刀】スキルを取得したことで、なんとか形にはなったといったところか。
これは今後とも要修行だ。
闇狼族としての戦い方は、以前の人狼族のときとさほど変化はない。
ただ爪による攻撃に意外な威力があり、格闘を多用するようになったくらいだ。
その甲斐あってか、爪術〈闇裂き〉、格闘術〈練気〉を習得した。
爪術〈闇裂き〉は爪に闇属性の攻性魔力を纏わせ、相手を斬り裂く武器術だ。
闇属性は闇・精神・毒の主流な三要素があるわけだが、〈闇裂き〉は珍しいことに闇そのものを活かす属性だ。
〈闇裂き〉は攻撃力上昇に加え、相手にかかっている防御魔法の効果を低減させたり打ち破ったりする付随効果を持っている。
これがなかなか便利で、キメラの狩りの効率化に一役買っているのだ。
格闘術〈練気〉は魔力を身体能力を増幅する生命エネルギーに転換する補助的な武器術だ。
タメが必要になるのが難点だが、攻撃と攻撃の間に仕込むようにしている。
もちろん回避を優先するのだが、それでも【月の瞳】【睡眠適性】による〈スリープクラウド〉がよく決まるようになったので、キメラにできた多くの隙の中に取り入れることは難しくなかった。
身体能力を上昇させた爪による攻撃を絡めることで、キメラを仕留める時間短縮に貢献している。
キメラを倒して入手したのは魂と素材だけではない。
魂の互換性を無視して魔物のスキルを取り込んだり、新たな形質獲得にも着々と取り組んでいる。
【帯電】【凍える吐息】【砂塵の嵐】というみっつのスキルを奪い、これにより雷属性・氷属性・地属性の形質を獲得することができた。
もっともいずれも弱い形質で、そのまま使うにしても難があるスキルばかりだ。
しかしこれで新たな属性の形質を元に、クーラに渡した攻撃魔術を再度取得することができるようにはなった。
……ただそれらの攻撃魔術がレッドドラゴンに通用するかと言えば、まったくそんな光景は想像がつかない。
ひとまずキメラから奪えるだけ形質を奪って、蓄積し、高効率のスキルに変換していくという工程を経て、なんとか竜に通用するスキルを生み出すしかない。
【帯電】は刀の下に置き、刀による攻撃に電撃を付加することにした。
【凍える吐息】と【砂塵の嵐】はそのまま使うには威力が心もとないため、変換して【氷使い】と【砂使い】というスキルとなった。
これらはそれぞれの属性の強化スキルで、特に【砂使い】は地属性の中でも砂を扱う場合にのみ効果を発揮する限定的なスキルだ。
ひとまずこれらを強化すべくキメラのもつ形質を奪い、スキルの強化に当てていこうと思う。




