89.遂に生産ライフが始まります
武器戦闘における武器術、魔術戦闘における魔術、そして生産活動における錬金術。
遂に俺はみっつめの術に手を付けることになった。
風神の障壁のおかげで迷宮の脱出はレッドドラゴンを倒さなければならないから、装備を整えるために自前で生産系スキルを取得しなければならない。
錬金術は生産系スキルの中で万能の存在であり、また基本でもある。
ただ俺の闇狼族の種族適性に生産系はかすりもしないため、相性はあまり良くない。
それでも便利だし、なにしろ素材だけは無尽蔵に集まるのだ。
しかも高品質のキメラ素材をいくらでも使えるのだから、練習し放題だ。
適性の低さは数で補うこととして早速、錬金術を取得する。
錬金術は魔術と同様に精神ツリーの中に新たに生まれた。
まず〈変形〉〈接合〉〈融合〉〈分離〉を取得する。
これだけ揃っていれば、後は術者の腕次第だ。
使い方は魔術と同じような要領でいいから、悩むことはない。
手持ちにある牙や爪を〈融合〉と〈変形〉を駆使して、まずは刀を作ろう。
……はい、そんなに簡単じゃありませんでした。
まだらに〈融合〉された牙や爪が歪んだ棒きれになるまで、あっという間のことであった。
しかも高品質の素材を加工するとあって、魔力の消費がかなり激しい。
初心者錬金術師がいきなり挑む課題ではなかったようだ。
とはいえこの階層で入手できる素材はいずれも高品質なものばかりで、どうしても加工の難易度は高くなる。
迷宮の土ですら魔力による操作に抵抗があり、泥人形を作るのも難しいくらいなのだ。
こればかりは数をこなして錬金術を使いこなせるようにするしかないだろう。
錬金術はスキルではないため、魂を注ぎ込んでのレベルアップはできない。
とはいえ直接のレベルアップこそできないものの、生産系スキルを取得することで技術をかさ増しすることは可能だ。
錬金術も魔力を使うから【魔力操作】などで強化されるし、【鍛冶】や【作刀】などのスキルを取得することで成果物の品質を上げることもできるだろう。
というか、その辺をすっ飛ばしていきなり錬金術だけで刀を作ろうとした俺が浅はかだっただけだな。
とりあえず魂と素材が必要なので、またしばらくキメラ狩りと行こう。