84.ほんと斥候だよな俺
単調な戦い方ではあったが、なんとかレベル70のキメラを倒すことができた。
しかし圧倒的に手札が足りない。
無銘の霊刀では物理的な怪我を負わせることができないため、〈魂砕き〉を打ち込んでも魔物は何事もなかったように攻撃してくるのだ。
かと言って俺の中級攻撃魔術の威力でレベル70の魔物の動きを止められ得るかと言えば、不安しかない。
行動を阻害する魔術として〈スリープ〉と〈グルー・リキッド〉が役立ったのは幸いだ。
手持ちの魔術を確認すると、〈フラッシュ〉という閃光で目を眩ませる魔術もあるので、次からこれも織り交ぜていくことにする。
また闇属性の中級毒魔術〈ペリッシュ〉は対象を衰弱させるという効果ではあるものの、相手の生命力によっては毒系の魔術は効果が薄いことが考えられる。
キメラは巨体であったし、毒霧を吐く魚の頭部を持っていたから、効果は期待できない。
そもそも俺の魔術適性は低い。
〈スリープ〉が効くのは【睡眠適性】があるからだ。
〈ストレージ〉の中にはいつぞやの小屋で奪った魔法の武器が入っているものの、無銘の霊刀に付随する【刀Lv5】がなければ戦いにならないだろう。
風神の神気によって生み出された弓もあるが、そもそもこの弓、弦がない。
風神が神気を利用して使うことを前提にしている武器なのだろう。
矢もないことだし、使うことはできそうもない。
今ある魂を俺のレベルアップやスキルレベルの上昇に費やすべきだろうか。
邪神の加護を起動してみれば、【魂喰い】で回復に消費した分を考慮しても大幅に魂が増えていた。
俺のレベルを40にしたところで、キメラの攻撃をまともに食らったらそこからの立て直しは困難だろう。
基本的に攻撃は食らったら駄目だ。
全部回避することが前提。
相手の行動を阻害するような魔術などがもっと欲しいのだが、残念ながら未習得を見渡しても使えそうなものがない。
魔力系スキルを伸ばしきって【魔力の極意】にまで合成できれば、〈マナ・ハンド〉を使って戦術の幅が広がるくらいか。
それにしたって決め手に欠ける感は否めないが……。
大人しく【軽業】や【高速機動】のスキルレベルを上昇させて、回避戦術に磨きをかけるのが正解な気がしてきた。
……迷うなあ。
取り敢えず、この階層の魔物について調査するところから始めてみよう。
匂いと音は風の支配者で遮断できるし、その上で姿は〈インビジブル〉で消せる。
【隠密】もあるし、見つかることはないはずだ。
この階層でのベストな戦い方を模索するためにも、まずは敵のことを知るのは利口なやり方じゃないだろうか。




