83.真ん中が魚って珍しい絵面だな
階段の下は今頃、地獄だろう。
どういうわけか階段を越えて火は届かないらしい。
【獣化】を解かずに霊刀もそのまま手にしながら、周辺の警戒にあたる。
先程から【気配察知】が魔物の存在を知らせてくる。
どうもここは安全な階層ではないようだ。
最下層の手前、ということはさぞ高レベルな魔物が徘徊していることだろう。
〈瞑想〉しながら〈ヒーリング・ライト〉で背中を癒やす。
せめて中級の治癒魔術があれば良かったのだが……地道に治していくしかない。
おっと、早速だが俺の匂いに釣られてヤバそうなのが来たぞ。
【気配察知】によればかなり大きな個体だ。
匂いは嗅いだことがないので分からないが、ズリズリと這うような音から察するに蛇体か芋虫など足のないタイプだ。
しかし速い。
治療する暇はないと判断して、戦闘準備に入る。
視界に入ってきたのは、みっつの頭部を持った蛇だった。
頭はそれぞれ、虎と魚と猛禽だ。
キメラ、レベルは70か。
スキルは多すぎて確認し辛いが、どうせ格上だ。
先制攻撃から一気に攻め立てなければ殺されるだろう。
戦術的には相手に何もさせないことが理想的だ。
どんどん詰まる距離を自ら縮める。
「〈スリープ〉!」
虎の頭部が昏倒した。
格上に効くかは賭けだったが、どうやら耐性はなかったらしく、〈スリープ〉無双は有効らしい。
続けて魔術を連打する。
「〈グルー・リキッド/速乾〉!」
猛禽の頭部に瞬間接着剤が命中した。
咄嗟に目を閉じた猛禽は視界を閉ざされ、ついでに鼻とくちばしも接着剤で覆われて呼吸を阻害する。
中央の魚は黒い霧状の毒を吐いてきたが、風の支配者で散らす。
「〈魂砕き〉!」
無銘の霊刀がキメラの蛇体をすり抜ける。
【魂喰い】によって背中の傷が癒え、魔力が回復した。
どうやら竜とは違って〈魂砕き〉は有効なようだ。
ならば霊刀無双で一気に片付ける。
しかし猛禽の顔を覆っていた接着剤がバリバリと崩れ落ち、虎もアクビをしながらの戦線復帰。
どうやらそう簡単に楽はさせてくれないらしい。
【気配察知】が遠方からこちらに近づいてくる2体の魔物の気配を感知した。
どうやら戦いの音を聞きつけたらしい。
大きさは目の前のキメラと同じくらいだ。
これを2体以上、同時に相手取るのは無理がある。
速攻でケリをつけて移動しなければ死ぬ。
俺は〈スリープ〉と〈グルー・リキッド〉で相手の行動を阻害しながら、〈魂砕き〉を打ち込み続ける。
霊刀で幾ら斬りつけても相手はひるむことはない。
そのため一撃入れたら離脱するというヒットアンドアウェイ戦法にならざるを得ないのだが、どうにも時間を無駄にしている気がしてならない。
近づいてくる2体の気配にプレッシャーを感じながら、なんとかキメラを打倒した。
俺は風の支配者で匂いと音を遮断して、この場をすぐに離脱した。




