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スキルツリーをぶっ壊すチートな邪神の御子さまは、いずれ最強になられるお方です。  作者: イ尹口欠
少年時代は自由にやるんでお構いなく

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82.なにコイツTUEEEEE

ひんやりとした冷たい空気を感じた。


目が覚めると、俺は暗い洞窟の中にいた。

地面に横たわっており、すぐに立ち上がることができないほど平衡感覚が麻痺している。


どうにか上体だけ起こして、周囲に知覚を振り分ける。

【嗅覚】【聴覚】【気配察知】【夜目】。


そうしているうちに気を失う前の出来事を思い出し、俺は目の前の巨大な赤黒い岩が生き物だと気がついた。


――目の前に、竜がいる。


風の支配者は俺の周囲の空気を遮断していた。

その外側は熱風が渦巻く灼熱地獄。

竜は半眼で俺を見下ろしながら、眠たそうにしている。


生存本能が危険を告げている。

ここにこのまま座っていたら、死ぬ。


慌てて強引に立ち上がり、腰の『白牙』に手をやった。


「お目覚めか、おい。風神がさっき挨拶に来たぜ。お前、オレを殺すんだって?」


意外とフランクな喋り方だな、と思いながらも俺は周囲の地形の把握を急ぐ。

空間は広い。

竜の発する体温が高すぎるため、洞窟の岩肌は触れれば火傷するほどに熱されている。


なるほど、確かにここにクーラとタマは連れてこれない。


俺にしたって無意識下で風の支配者が仕事をしていなければ、熱射病どころかこんがり焼かれて死んでいただろう。


「久方ぶりの客だ。もてなしたいところなんだが、オレも動くのが久しぶり過ぎて力が入らない。まあ、結果的に手加減になるから丁度いいかもしれないが、まずは挨拶しとこうか」


「挨拶?」


嫌な予感が背筋を粟立たせる。


竜は首を持ち上げ、地面に埋まっていた右腕を持ち上げる。

ボロボロと土が落ち、砂埃が舞う。


右腕には3本の指があり、その先端には鋭い鉤爪があった。

竜は巨大で、ちょうど鉤爪ひとつが俺と同じくらいの大きさだ。


竜の右手が、ゆっくりとグー、パー、を繰り返す。


「じゃあ一発な。これは挨拶だから、死なないように、ちゃんとなんとかしろよ?」


軽く振りかぶったと思ったら、次の瞬間には振り抜かれていた。

俺はミンチになって死んだ。


という幻視を【未来視】に視せられて、慌てて『白牙』を抜く。


「〈鉄身〉!」


振るわれた鉤爪に合わせたが、吹き飛ばされて壁に叩きつけられた。

ミンチは免れたものの、背中はジュウジュウと焼けて香ばしい匂いをさせている。

『白牙』は見事に折れて、刀身の半分から先がなくなっていた。


なぜ『白牙』で受けた?

こんなもん、ただの刀でなんとかなるわけねえだろ、バカか俺は。

唯一の刀を失ってしまったじゃないか。


半ばから折れた『白牙』を捨てて無銘の霊刀を抜き、背中の激痛を無視して走る。


久しぶりに人目がない。

【人化】を解き、【獣化】しながら【並列思考】で魔術を準備する。


「〈ヒーリング・ライト〉〈インビジブル〉」


背中の傷はまだ痛むが、向上した身体能力の妨げにならない程度に回復させておかなければ、些細な動きの鈍りが死に直結する。

引き続き〈ヒーリング・ライト〉を準備させながら俺は、右腕を振り抜いたまま硬直している竜に向けて手加減なしの一撃を放った。


「〈魂砕き〉!」


放たれた一撃は、しかし竜の鱗に阻まれたうえに、弾かれた。

アンデッド以外には物理的な干渉を受けない霊刀が、だ。


「姿を消したのはなんでだ? そんなに空気を動かしていたら、位置がバレバレだろ。あとなんだそのひ弱な武器術は。もっと威力あるのはねぇのかよ」


そうは言うが、風の支配者で周囲の空気を遮断しなければ、熱風による呼吸困難で動けなくなる。


「お前がオレを殺すだって? はは、無理そうだなこの様子じゃ。まあ期限は切られてないし、気長に努力してりゃいつかは傷のひとつくらいは付けられるようになるのかねえ?」


スゥ、と竜は息を吸った。


「今日はここまでにしとこうぜ。挨拶はしたんだしよ。名乗る必要はお互い、ないだろ?」


名前は【魂視】で視えている。

多分、向こうもこっちの名前は視えているのだろう。


《名前 ランドルフ

 種族 レッドドラゴン レベル 99

 【灼熱の吐息Lv10】》


年齢と性別のないステータス表記は魔物のものだ。

少なすぎるスキルは偽装されていて俺には視えていないのだろうか。

それにレベルは99が上限なのか?


俺は浮かんでくる疑問を放り捨てて、全力で走る。

レッドドラゴン・ランドルフがステータスに唯一表示しているスキルは警告だろう。

優しさに甘えて、上に登る階段に目掛けて一直線に駆けた。


「じゃあ、またな」


竜の口から灼熱の劫火が放たれ、空間は真っ白に塗りつぶされた。


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