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79.遂に神と遭遇

邪神ガイアヴルムの眷属とは魔族のことだ。

つまりナナミに俺が魔族だとバレたのか?


腰の『白牙』に手を当てながら、【霊視】と【魂視】でナナミとその周辺を視る。


ナナミは神気を纏っていた。


「……ナナミじゃないな。風神エアバーンか?」


ナナミは眉を上げ、不敵な笑みを浮かべた。


「僕の神気の前でよくそんな平気な顔ができるな。魔族のくせに」


「生憎、お前の神気は俺には通じないんだよ」


「……まんざら冗談ってわけでもなさそうだ。気に食わないな」


ナナミはおもむろに神気に手を突っ込んだ。

俺はその行動にギョっとさせられたが、今のナナミはエアバーンの神気を纏って意識を乗っ取られている。

もしかしたら神気に直接触れても問題ないのかもしれない。


ヤニック司祭の死に際の姿が脳裏に浮かぶ。

異形となってナナミが死ぬようなことになるのは、寝覚めが悪い。


俺の心配をよそに、神気は急速に物質化して弓を生み出した。

ナナミはそれを掴み、もう片方の腕も神気に突っ込む。


神気の中から矢を取り出したナナミは、弓につがえて俺に向けた。


「お前、目障りだよ。僕の手で殺してやる。光栄に思え」


「いきなりの短絡だな。まっぴら御免だ」


弓から放たれた矢は視認すらできない速さで、俺の心臓を貫いた。


という幻視を視た。


【未来視】の視せた結末に身震いしながら、俺は無銘の霊刀を抜き放ち、胸の前に構える。


ナナミの指が矢から離れた瞬間、起動句を叫ぶ。


「〈断神剣〉!」


ガツン、と霊刀を握る手に衝撃を感じたときには、矢は消え去っていた。


この結果にナナミは驚愕に目を見開き、あからさまにうろたえた。


「な、何をした!? 僕が矢を放って死なないなんて、お前は一体、何者だ!?」


「ただの魔族、と言いたいところだが。邪神の加護をもって生まれた少しばかり特殊な出自なんだよ」


「……ガイアヴルムの加護? アイツ、まだそんなことできるような力が残っていたのかよ」


ナナミは悔しそうに唇を噛む。


やけに子供っぽい仕草と口調だ。

エアバーンは少年神なのだろうか。


「俺は確かに魔族で邪神の加護を受けている。だが別に、お前と事を構えるために生まれたわけじゃない。お前にとっては、むしろ俺は利用価値があると思うぞ」


「なにを言っている。魔族のお前が、神である僕に何の価値を示せると言うんだ」


「俺なら7柱目の裏切り者を斬ることができるかもしれないぞ」


「お前、ヴィータボロスのことまで知っているのか!?」


7柱目の神の名はヴィータボロスというのか。

神話にも出てこないから、それは知らなかった。


「邪神は7つの封印のひとつを解かせたいだけのようだが……そちらとしてはどうなんだ。神話に名前を残さなかった裏切り者だ、殺せるなら殺したいんじゃないのか?」


6大神が裏切りの神ヴィータボロスをどう思っているのかは知らない。

だが神話に登場すらさせなかったのだ。

恨みがあっても不思議はない。


「僕の矢を一度防いだだけで、大きく出るものだな。神ならぬ身で、一体なにができる」


「見ろよ、俺はまだ11歳だ。これから強くなる」


「91歳の間違いだろ。……でもまあいい、面白い命乞いだったよ」


……駄目か?


今の俺では神に勝てる見込みはない。

先程の一撃を防いだのだって運が良かっただけだ。

【未来視】で視た結末を、たまたま【直感】で回避する手段を知ったに過ぎない。

風神エアバーンがその気になれば、俺を殺す方法などいくらでもあるだろう。


「少しだけ猶予をやるよ。僕の方で勝手に処理して他の連中に文句を言われるのは嫌だしね」


「猶予?」


「結論は……この僕の眷属を村に送り届けてからだ。その後、お前に処遇を言い渡す」


ナナミはそう言い終えた途端に、その場に崩れ落ちた。


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